3話 お肉
この国では女性が働くことは珍しくない。
当然、私も働くつもりだ。
「下級ポーションの講義を受けたいのですが」
「銀貨2枚になります」
はやく仕事がしたいので、下級ポーションの講義をうける。
下級ポーションを作る方法は二つあり、一つは普通の薬師が、薬草をすりつぶし、ビーカーのようなものやフラスコを使うやり方。もう一つは錬金術師が錬金釜を使うやり方だ。
私は後者に該当する。
錬金釜に薬草と水を入れ錬金術を使う。
ただそれだけだ。
ただし、効能は錬金術をかけた術者の能力によって上下し、使う薬草や水によってもかわる。
もちろん、魔道具である錬金釜の品質によってもかわる。
ちなみに錬金釜の金額はピンキリで、安いものは金貨7枚から、もちろん中古であればもっと安く、だいたい金貨5枚になるそうだがそうしたものはなかなか出回らなく、通常は師匠から弟子へのプレゼントになるらしい。
私はポーション作りにおいて錬金術の師匠がいないが大丈夫かと聞いたら、女神様からいただいたスキルなら師匠がいなくても大丈夫とのことでそのまま誰にも師事されないまま錬金術師となることにした。
下級ポーションに使う薬草は街近くでもとれるとのこと、明日になったら取りに行こうと思う。
この世界の金銭の単位と価値観は概ねこんな感じだ。
鉄貨 十円
銅貨 百円
銀貨 千円
金貨 一万円
大金貨 十万円
白金貨 百万円
十鉄貨で一銅貨、十銅貨で一銀貨といったように十上がるごとに貨幣の単位があがるとのことであった。
借りたお金はなるべくはやく返そうと思う。
お金も手に入り、ポーションの作り方を理解したので、まずは、服屋に行く。
あまりにも服装が違いすぎて目立つからだ。
モブには目立つ行為そのものが精神的負担になる。
はやくごく一般的な平凡な人間にならなくてはならない。
目立つことは私のような小心者にはつらいからだ。
服屋には新品ではないものの質のいい厚みがある布地で作られた布の服があったのでそれにした。
冒険者用なのだろう、簡単なつくりのズボンと上着だったが、着心地良く長持ちしそうなので2着購入し、新品の下着もいくつか購入することに決めた。
全部で金貨1枚にまけてもらったがこの世界の服は高い。
まだ、紡績の技術が発達していないのだろうか。
中古品だが、しっかりしたつくりなので文句は言えないが、お金を稼いだら新品を買おうと思った。
次の買い物には、薬草採取用にナイフをと思い、武器屋に向かったが、途中いくつもの屋台が目についた。
串焼きの肉、何かの煮物、温かそうなスープ。
それらを見るとお腹が自然とクゥと鳴った。
考えてみれば朝食を元の世界で食べたきり、昼は何も食べていない。
まだ、夕方にはなっていないが、昼はとうに過ぎているだろう。
大ぶりの串焼きの肉を一つ買い食べることにした。
少しパサついた肉に塩が振ってあるだけである。
肉に臭みはないがレバーのようなクセが少しだけあった。
あまり美味しくはない。
ホーンラビットというウサギの肉だと言うことだが、肉の焼けるいい臭いを嗅いでいただけに期待が大きく、食べた時少しがっかりした。
胡椒があればもう少し違ったかも知れないが、この世界で胡椒はテンプレ通り貴重なものかもしれないと考えた。
大きな肉だったので一本でお腹いっぱいになったが、もし自分が男性なら二本は食べないとお腹いっぱいにはならないだろうと感じた。
一本銅貨5枚、五百円ぐらいだ。
日本の物価とおなじぐらいだと感じた。




