21話 おねだり
魔道具屋には親切な店員がいます。
今回もお世話になりましょう。
「すみません、錬金釜の値段が知りたいのですが」
「どの錬金釜ですか?」
「上級者用です」
「金貨120枚ですね」
買えません。
金貨120枚か。
私の手持ちでは無理。
確か金貨50枚ぐらいはあったと思うのですが、金貨120枚にはほど遠いです。
残念。
購入を断念します。
「よろしかったら、今なら売り出し中のマジックバックならお安くできますが」
なんとも残念そうな表情をしていた私に同情し、そんなご提案があります。
なんでも王都に腕のいい時空魔法使いが新たに現れて、ただのバックにガンガン付与を施しているとのこと。さすがにただには出来ないけど、元の価格よりはずっとお値打ちになったそうだ。
「へぇ、これで金貨50枚ですか」
「はい、馬車二台分の大きさで、なかなかの容量ですよ。しかも時間停止機能付きなのです、元々これと同じ大きさのものは金貨200枚していたのですが……」
腰に付けられるポーチだ。
女性用なのか、茶色の柔らかそうな革に小さな花柄の刺繍が施されている。
可愛い。
刺繍が細かくて精巧だ。
思わず欲しくなる。
もっとお金を稼いでいたら迷わず買っただろう。
ま、今の私にはアイテムボックスがあるから買わないけど。もし、アイテムボックスがなかったら買っていた。
「とりあえず今はいいです。また今度何かいいものがあったら教えてください」
丁寧にお断りする。
「残念です」
本当にいいものだったらしく、私が買わないことを勿体なさそうな顔をしている。
店を出て、街を出る。
さて、スライム狩りだ。
平野につくとお昼だったのでレジャーシートを敷き、ごはんを食べることにした。
何にしよう。
お寿司かな?
太巻き寿司にした。
330円、なかなかお値打ち。
サーモンが入っていて、とてもおいしい。
かんぴょうと卵の甘さがちょうどいい。
スーパーで買ったペットボトルのお茶を飲みながらまったりする。
デザートも食べちゃおうかな。
デパートでフィナンシェを購入。
ふー、おいしかった、満足、満足。
ピカピカと周囲が光る。
女神様だ。
「うーん、困った、困った」
なんだろう、女神様が困ったと言っている。
しかし、わざとらしい。
突っ込まないといけないのだろうか。
「突っ込んでよー、待ってるんだから」
突っ込み待ちでしたか。
なら、嫌な予感がしますので突っ込みません。
「あのさぁ、お寿司とかタコからってのが大人気でさぁ、また、なにかもらってこいって言われたのよ。パシリじゃないのにー」
なるほど、お寿司とタコからが大人気。喜んでもらえて良かったです。
「じゃあ、またお寿司を持っていきますか?オープン!」
女神様に、鮮魚センターの映像をみせます。
おお、女神様が嬉しそうです。
「これとこれ」
女神が指さしをするのは、タコのマリネとホタテの照り焼きですね。
おいしいヤツです。
タコのマリネはタコがやわらかくさっぱりしていて、オニオンスライスと水菜がしゃきしゃきしていておいしいですし、ホタテの照り焼きはホタテが大きくて冷めていてもおいしいんですよね。
お寿司は前回と同じでしょうか?
「お寿司は今さっき食べてた太巻きがいいな」
おお、太巻きですか、太巻きには上にイクラの載った贅沢なヤツがありましたね、あれにしましょうか。
「これー?」
おお、それです。って言葉に出していませんでしたね。会話になっていたので忘れていましたよ。
「ええっと、太巻きはいくつぐらい必要でしょうか?」
「20個ぐらい必要かな」
「大人数ですね」
「いや、この間と同じ10人の集まりなんだけど、前回10個だけしかお寿司持っていかなかったから、もんの凄い怒られて、私文句言われ放題だったんだから、今回余ってもいいから少し多めに持っていくことに決めたの」
「そうですか、それは大変でしたね」
多分幹事的ななにかだったのでしょう。
食べ物の恨みは恐ろしいです。
「前回タコからが人気だったのなら今回も持っていったほうが安全ですね。タコからに合うレモンも購入しましょうか?」
さりげなくタコからも勧めます。
あると嬉しいんですよね、タコから。
レモンはくし切りでもスライスでもいいですし、味に変化がついておいしいです。
「そのタコからとレモンもちょうだい」
女神様が嬉しそうです。
 




