2話 薬師ギルド
『薬師ギルド』
木の看板に書いてある文字が読めた。
文字は日本語ではない。
異世界言語スキルも付けてくれたんだ。
美女に感謝して、薬師ギルドへと一歩踏み出した。
ピロリン。
音がした。
『貴方は私を美女と褒め、感謝をしていただきましたからプレゼントをします。これはサービスですよ』と頭の中で声がして、鑑定のスキルと体育館4個分の大きさのアイテムボックスをもらったことを理解した。
「やったぁ、嬉しい」
思わず声を出して薬師ギルドの前ではしゃぐと、ちょうどギルドから出てきた人と目が合い怪訝な顔をされる。
まぁ、いい。
異世界テンプレのチートスキルが手に入ったのだ。
冷静になれず、はしゃいだとしても当たり前だ。
これで異世界無双も夢ではない。
ウキウキ気分で薬師ギルドに入る。
木目が美しい落ち着いた色合いの受付。
いくつかの個別の窓口がそこにはあった。
対して自分の格好は学校のブレザーの制服のままである。
少し、場違いかと思いながら空いている窓口に行く。
「すみません、薬師になりたいのですが」
綺麗な受付のお姉さんに言う。
海外の映画に出てきそうな美女だ。
これがこの世界の標準だとすると、元の世界でモブだった私はキングオブモブとしてジョブチェンジが出来そうだ。
いや、それとも私は女性だから、クイーンオブモブか。
「何か薬師に向くスキルなどありますか?」
受付のお姉さんが問う。
「錬金術があります」
「そうですか、下級ポーションと上級ポーション、特級ポーション製作の講義が受けられます。下級ポーションは銀貨2枚、上級ポーションは銀貨5枚、特級ポーションは金貨5枚です。どうしますか?」
お金がかかるなんて思っていなかった。
どうしよう、聞いてみないと。
「すみません。お金がかかるなんて思っていなくて……お金がないのですが」
「もしかして、その格好は異世界からこられた方ですか?でしたら、特別に異世界から来られた方々の為の無料の講義と、貸付金が各ギルドで受けられます。この薬師ギルドでも特別講義が可能ですが、いかがですか?」
「お願いします」
結局講義でこの世界の常識を学ぶことになった。
わかったことは、毎年何人かは異世界から召喚されていて女神(あの美女は女神だった)からスキルをもらって転移しているとのことだった。
なので、女神の意思として親切に異世界人を扱うことが通例であり、もし、発見したら奴隷や搾取などせず、保護を目的としたプロセスとなっているらしい。
今回の講義もその一つで、親切に教科書を渡され、簡単な地理をはじめ、簡単な世界史をも教えられた。
ちなみに、奴隷についても説明がされ、いることはいるが、奴隷とすること自体が違法であり、もしいたとしても犯罪奴隷といった特殊な奴隷しかいないこと。また、普通の人には買えないことも教えてもらった。
魔法についても、一部のスキル、例えば四大魔法(火、水、風、土) などといった魔法では、スキルの書というものがあり、それを利用して魔法を覚えることも可能であり、ダンジョンの下層にいけば宝箱に入っていることもあるとのことで、まれに、王都のオークションに出品されるとのことだった。
さまざまなことを教えて貰い、最後に貸付金を金貨10枚借りて講義は終わりとなった。(だいたいそのぐらいが平均的に借りられているとのこと)
もちろん金貨を借りるときには、証書を交わした。
まずは、安い宿をと思っていたら、田舎から出てきた人の為の見習い薬師の部屋(たいへん狭い)があるとのこと、食事もパンとスープといった簡単なものが3食つき、期間も無料で3ヶ月借りることができるらしく、さっそくお願いした。
ちなみに、この街はリルセンの街といい、それほど大きくはなく、このスカイダンツという国の王都から西に来た国境沿いにあるということであった。