13話 ピンチ
私は今、冒険者ギルドに来ている。
フォレストキャタピラーやスライム以外に安全にレベル上げができる魔物を求めているからだ。
ちょうどいい魔物がいないか、受付のお姉さんに聞いてみよう。
しかし、前に来たときも思ったが、美男美女が多い。
「あの……」
男性から、声をかけられる。
そして、逃げられないように、なぜか、手を掴まれる。
うわ、ものすごい美青年。
あ、前に一度見たなこの人。
漆黒の黒髪に金の瞳。
うん、イケメンすぎて長時間見ていると、目が潰れるやつだ、コレ。
さっさと逃げたい。
うう、手を離して欲しい。
「あの、貴方とパーティーが組みたいのですが」
何故? フォレストキャタピラーとスライムしか倒していない女にパーティーの申し込み?
ないな。
「すみません、私一人がいいんです。まだ弱いですし」
察してくれ。
私はモブでゲームだったら序盤で倒される雑魚だ。
貴方のようなキラキライケメンには相応しくない。
「私が守りますから、どうか私とパーティーを」
うん、守るからと言われても、あきらかにレベルが違うでしょ?
部分的な防護をしているしっかりとした装備の革鎧に、柄に綺麗な装飾が施された長い剣。
私のは単なる布の服。
装備は、大きいナイフでひのきの棒ではないけれど絶対に同じパーティーにはなれない条件。
「おう、高梨じゃねぇか」
後ろから声をかけられる。
「なんだ、クリスさんに無理を言っているのか?」
あ、同じクラスの人だ。
確か、佐藤 考太君。
クラスメイトの中でも格好いい部類に含まれていた陽キャだ。
うん?このクリスさんという方に掴まれた手を見てる。
うんうん、佐藤君が掴んでいるクリスさんの手を掴み、私の手を掴んで、離す。
グッジョブ。
イケメンから離れた。
これで緊張しない。
「高梨……いくらクリスさんが優しいからと言って、あんまり馴れ馴れしいのはよくないぞ。クリスさんはS級冒険者でお忙しいんだから……」
濡れ衣。
っていうか、掴んでいたのはクリスさんですよね。
私、掴んでいませんでしたよ。
そして、S級冒険者?
どうして、私にパーティー申請をするのだ?
テンプレ的には冒険者ギルドで絡まれるのは当然だとしても、絡まれ方がおかしい。
「いや。私の方からお願いしてたんだ、一緒にパーティーを組んで欲しいと」
なぜか、頬を赤く染めてクリスさんが言う。
そして、ためらいがちに私の腰に手を回してくるクリスさん。
やめて、私が死んじゃうから。
モブにイケメンが触っちゃ駄目。
溶けて死んじゃうでしょ。
「どういうことですか、こいつ、俺と同じでこの間転移したばかりですよ?」
佐藤君、気がついて、私の腰にクリスさんの手が回っているよ。
助けて。
涙目でアイコンタクト。
「いや、彼女に運命を感じた」
クリスさん、それ、答えになってませんよね。
ああっ、腰に回された手が。
やめて、腰を抱き寄せないで。
「コータ、友達か?」
新たなイケオジたちが登場。
なに?
アイコンタクトで佐藤君に問いかける。
あ、わかった?
「あー、こちらBランクのパーティー、『暁の翼』の皆さんだ。俺、バトルに強いスキルを選択したから、職業が剣士になって冒険者ギルド所属になったんだ。今はチュートリアルの最中で3ヶ月間ベテランパーティーと一緒に行動して勉強しているんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「で、高梨はここで何してるんだ?」
「私はレベル上げしようと思って、弱い魔物のリサーチ」
「クリスさんと?」
「いや、一人で」
佐藤君が不思議そうな顔をする。
「コータ、じゃあ俺たちは先に受付に行くぞ」
「あ、待ってください。高梨悪いな、俺も忙しいんだわ。また今度な!」
慌てたように、イケオジたちにくっついて佐藤君が去る。
私は、佐藤君に逃げられた。
 




