1話 チートスキルは早い者勝ち
高梨 由紀 16才。
高校生活に慣れ、もうじき夏が来るなー、と思った6月にクラスメイトと担任とで異世界転移をした。
総勢、31名。
多いのか少ないのかも分からない。
説明不足だと思うけど、朝、登校して朝礼を受けて、さてこれから、担任が担当の国語の授業を受けるんだと思ったら、教室ではない白い空間にその場にいた全員と見知らぬ美女が一緒にいた。
美女曰く、「貴方たちにはこれから異世界に行って貰います。つきましては3つのスキルを選択し、職業も選択して、異世界に行って貰いたい。元の世界には元々存在しなかったこととなっているから、元の世界に戻ろうとしても無理だ」とのこと。
異世界転移もののラノベを読み腐っていた私には『なにこれテンプレ!』だったが、クラスメイトのなかには、美女に対して怒ったり、無理な要求をしている者たちもいた。
さて、3つのスキルどれを取ろうかなと、考えたらズラズラッと文字が頭に浮かび、目の前に透明なボードが現れ、そこには頭に浮かんだ文字が書かれていた。
白い文字もあるが、黒い文字もある。
白い文字を触れば説明が出たが、黒い文字では説明が出てこない。
相変わらず美女に怒鳴り散らしているクラスメイトたちもいれば、ニヤニヤ笑いをしているクラスメイトもいる。
白い文字はまだ選択されていないスキル、黒い文字は選択がされ、もう他の人が選択出来ないスキルだと理解した。
黒い文字のものはどれも魅力的なスキルが多い気がする。
私はすぐさま、早い者勝ちだと理解して、よさそうなスキルを白い文字の中からササッと選ぶ。
そして、聖魔法、重力魔法、錬金術を選択した。
聖魔法の中には治癒と結界、浄化の魔法が含まれていてお得だったし、重力魔法は生き物、もしくは物質の重さの軽減、過重が出来るとのことであり、戦う場面での足止めが可能なことと、錬金術はポーションの作成から魔道具の開発まで出来、お金になりそうだったからだ。
さて、次は職業だ。
なににするかな? と考えると、やはり透明なボードが出てきた。
文字は……。
聖女
村人
戦士
魔道具士
薬師
合計5種類だ。
聖女はこきつかわれそうだから止めておくこととして、村人も適したスキルは取っていないし、戦士も恐いから止めて、魔道具士も難しそう、結局、残りの薬師を選択した。
「さてみなさん、スキルと職業選択は終わりましたか?」
いつの間にかほとんど全員が決めていたらしい。慌てているのが、美女に怒鳴り散らしていたクラスメイトたちで、私もスキルのボードを見るとろくでもないスキルばかりが残っていることを知った。
小指が器用に動かせるなんてスキルはどうしたらいいのだろうか。
意味が分からない。
「選んでいない皆さんには、ランダムに残りのスキルと職業を与えますね」
「ちょっと待て……」
「はい、終りました」
そう、美女は言うと、パンと手を叩いた。
「では、皆様ごきげんよう」
その言葉を最後にして、視界が暗くなり、目を開けるとなにか大きな建物の前にいた。