いらっしゃい
学園祭名物、暗幕を使って本を展示するアホ共ことオカルト研究会の展示にようこそ。
うちの伝統でね。来場客は部長がこれを言わなきゃならないことになってるんだ。
……ずいぶん熱心に読んでいるね。読みにくいならカーテンを開けようか。どうせ大して人も来ないからね。
そのレポート、なかなか不気味だろう? うちの後輩が書いてきたんだが、残念ながらその子はここのところうちには来ていなくてね。私でよければ解説するよ。
……書かれてることが本当かって? 野暮なことを聞くね。いいかい、オカルトというのはね、真偽がわからないからこそオカルトなんだ。もしこれが事実であったのなら、これはオカルト研究会ではなく、もっとふさわしい場所で、ふさわしい設備をもって検証されるべきだろう。もしそのレポートに書かれた内容が嘘だったとして、君に何か不都合が起きるかい?
……なるほど、作者と幼なじみで、最近連絡がつかなくなったと。たしかにそれなら心配にもなるか。
彼女、最近は部室に顔を出さないけれど、講義は真面目に出席しているようだよ。同じ講義を受けている他の後輩が言っていた。学内で見かけたという部員もいるしね。
……実はね、このレポートは未完成らしいんだ。
『ひとりかくれんぼ』をするときに呪物としてぬいぐるみに爪を入れるだろう? その時、爪の代わりに髪や血を入れると、さらに危険度が増すと言われている。もしかすると、彼女はそれを試して……
いやなに、ただの妄想だよ。本当にこんなことが起きたなんて思っちゃいない。
……噂をすれば。窓の外を見てごらんよ。ほら、向かいの棟の1階の……ああ、もう行ってしまったか。
……おや、珍しく立て続けに人が来たね。学園祭名物、暗幕を使って本を展示するアホことオカルト研究会へようこそ。ああ、暗幕が空いているのは気にしなくていいよ。まだ暗ければ電気もつけよう。