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第3話 初陣

第3話 《悪魔》



「そして最後に一つ、出翼した君達ならこれがもう見えるんじゃないのかい?」


というとダモクレスは指先と指先を合わせて、なにかぶつぶつ言った後、そのまま手のひらをパンッと合わせた。


差し込んでいた日の光が消えて部屋の中が薄暗くなったかと思うと、壁やドアから何百もの《目》が浮き上がってきて、ギョロギョロと目を動かしている。

天井を見上げると、大きな目がこちらを見下ろしていた。


「ッ…」


俺とカノンは言葉にならない悲鳴をあげて、とっさにダモクレスの後ろへと隠れた。


「これはかなり上位の悪魔が開溝した空郷だな。」


そう言うとダモクレス一同は廊下に出て玄関へと向かった。

居間同様に廊下でも無数の目がギョロギョロと辺りを見回していた。

そして玄関の引き戸に手をかけると引き戸についている無数の目は一斉にダモクレスの方に

視線を向けた。

ダモクレスは気付いていないのかそのまま引き戸を開け外に出てこう言った。


「これはちょーっとまずいかな〜。」


ダモクレスの後に続き外に出てみると、真っ赤な空は見渡す限り《目》で埋め尽くされており瞬きしている。

カノンは驚き、玄関の中に隠れるように戻ったが、引き戸の無数の目にまた驚き俺らの方に戻ってきた。


「もう気付いたのか。気づかなければもう少し生きれたものを」


声のした方へ顔を向けると少し遠くで中を浮いてランドセルを背負っている小学生がいた。


「君か〜、2人を監視していたのは。」


「そうだよ。もう少しで出翼しそうだったから、早めに殺しておこうと思ってたのにどうしてラッパ吹きがこんなところにいるのさ。」


「悪魔のお前には…」


と言うとダモクレスはまた目の前から消えて、さっきまで彼のいたところには無数の羽が風に揺られながら

地面へと落ち光が弾けた。


「…関係ないだろ?」


ダモクレスはそう言いながら悪魔の肩を叩いきニヤリと笑った。

悪魔は驚き目を見開くと素早く振り向きながら大きくかかとを上げ、ダモクレスに向けて振り下ろした。

ダモクレスは笑顔のまま目にも止まらぬスピードで地面へと叩きつけられ、

轟音と共にダモクレスを中心に道路のコンクリートが隆起した。


「痛いな〜」


そういうと何も無かったかのようにムクリと立ち上がり、肩のホコリをはらった。


「こんなもんなら大丈夫だろ。よし、2人もチュートリアルってことであの悪魔を倒してみろ!」


「…は?ちょっと待てよ。俺らがあんなのと戦えるわけないじゃん!」


ダモクレスは困惑している俺たちをそっちのけで説明を始めた。


「まず己の武器をイメージしろ!何で闘うのか。どうやって闘うのか。」


ダモクレスはとても真面目な顔をしていた。

するとすぐ隣からカノンの声が聞こえてきた。


「ショウ、私はもういける!」


そう言うカノンは自分の身長ほどある太刀を手にし、

軽く膝をまげ何が起きても反応できる体勢を取っていた。

さっきまでの弱々しいカノンの目は鋭い目付きへと変わっていった。


そうか…。俺はこれから悪魔を相手にするんだ…。

やらなければこっちがやられる。武器だ。悪魔を倒す武器!!!


するといつの間にか俺は大きな槍を握っていた。

不思議と槍は重くなかった。むしろ羽のように軽い。


これからあの悪魔と闘うのかと思うと、自分の鼓動が胸を突き抜けてうるさいほどに聞こえてきた。

まずどう出れば良いのかわからない。

悪魔は相変わらずニヤニヤしているのに一切の隙がない。


真っ向に挑んでも多分無理だ。

なら、仲間とのコンボが必須。


「カノン俺の攻撃に合わせてくれ!」


俺はそう言うと片手にもうひとつ槍を出した。

そしてその2本の槍を肩に担ぐように持つと、体を後ろに反らせ

前に戻した時の力を利用し、おもいきり槍を投げた。

槍はとても早いスピードで悪魔めがけて飛んでいくが、簡単に弾かれてしまう。

その槍を死角にカノンが腹に切りにかかるが、ほんの数センチ空を切る。


とっさに俺もカノンのところに向かい2人で連撃を繰り出すが全て避けられてしまう。

そして突きの一発を放つが尽くそれも避けられ、「ダメだ。」そんな思いが心をよぎった時

槍を掴まれた。


そのまま俺の身体は大きく槍と共に引っ張られ、カノン目掛け投げられそのままカノンと

激しく衝突し体勢を崩してしまう。


そのまま悪魔はカノンの目の前に瞬時に回り込むと、両手を振り上げ渾身の力を込めて振り下ろした。

カノンは地面に叩きつけられ、バウンドすると悪魔は回し蹴りを入れた。

カノンはいくつもの家屋を突き抜けて、やがて静かになった。


「一人目ダウン!」


ただのゲームでもやっているかのような発言、奥で静かになったカノン。

俺は今までにない苛立ちを覚えた。

腕がプルプルと震える。

やけに背中が熱い。


「何?ビビちゃったの〜?安心して〜!すぐにカノンちゃんのとこに行かせてあげる。」


「…な」


身体中に電気が走る。

決して比喩とかではなく、身体の至る所で青白い電気がはじけ、その電気はやがて線になり所々に現れては消えた。


「…するな」


身体が痺れて痛い。帯電しているのがハッキリと伝わってくる。

青白い電気が弾ける音はやがて、けたたましい騒音に変わった。


「悪魔風情がカノンの名前を口にするなぁぁぁぁあ!!!」


バチンと音が鳴った。

俺は怒りに身を任せ力いっぱいに空を蹴り、瞬きをするよりも早く間合いをつめた。

槍を振りかぶると隙が生まれるため、その場で一回転しその勢いのまま悪魔に向かって槍を振り落とした。

悪魔は勢いよく地面に叩きつけられた。


コンクリートが砕け、土が宙を舞う。

俺は片手に槍をだし、悪魔の胸をめがけ渾身の一撃を投げた。

その槍は腹を貫き、悪魔は血反吐を吐いた。


「まだ戦える。こんな槍一本受けたくらいで…。」


悪魔は槍を両手で掴みとり、手を上方にあげ抜き取ろうとしていた。

そして俺はふと頭に浮かんだ術を唱える。

自分でも驚くほど冷静な声色だった。


「神術 避雷針」


どんよりと淀んでいた空雲は渦を巻き、その渦の中心からいくつもの雷が悪魔めがけ落ち続ける。

静かな街の中には落雷の轟音だけが響き渡たった。

そして、落雷も収まり静かになった頃、ゆっくりと下に降り、黒い灰と混じる悪魔を見つめると、まだ微動していた。


「神器で心臓を貫けば悪魔は死ぬよ。」


ふと後ろで声がして振り向くとそこにはダモクレスが気絶したカノンを抱えていた。

俺はこくりと頷くと右手に神器を出し悪魔の心臓をひと突きした。

悪魔は聞くにも絶えぬ悲鳴をあげた後、動かなくなった。


ダモクレスはどこからかラッパを出し、一吹きすると曇天の空に大きな円形の青空が広がった。

するとその青空から一際目立った天使とそれを挟むように、数人の天使が舞い降りた。

すると一際目立った天使は指揮棒を出し一振りすると、周りの天使達は格楽器を弾き始めると、

街全体に音楽が響き渡たり、壊れた家屋、隆起したコンクリート、舞い上がった土埃は時を戻したかのように元の姿へと戻って行った。


「そろそろ行こうか」


どこに行くのかはわからないが、とりあえずついて行こう。

これまで向かえたことのない、明日を迎えるために。

俺はおばちゃんの家を少し見つめてから、ダモクレスの後ろについて歩いた。

曇天の空の間から無数の光の柱が俺らを照らしていた。










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