第3話
「まずい!」
「このままだと、 入学式に遅刻にする!」
俺がこんなに慌てることになったのはあの出来事が原因だ。
それは一時間半ほど前に遡る…………。
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『ジリリ、ジリリ……』
俺は目覚ましの鳴る音を聞いて薄っすらと重たい眉を開いていく。俺は、片目だけ開けて目覚ましを止めた。
(まだほとんど寝れていないのに……。何でこんなに早くから目覚まし鳴らすように設定したんだ?まだ六時半じゃないか。今日もまた何もない日なのになんでこんなに早く起きないといけないんだ……。)
俺は余り働いていない頭でそんなことを考えていた。昨日、深夜に目覚めてしまったせいであまりよく眠ることができていないのだ。それにしても本当にあの夢は何だったのだろうか?でも、今はそれどころではない。少しでも気を抜けば、すぐに寝てしまいそうだ。
(はぁ……。八時ぐらいまで寝ておくか…………。)
結局、俺はなぜ早くに目覚ましを鳴らすようにしてしまったのか思い出せないまま再び布団にくるまって眠りにつくのであった。
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俺はこんな初歩的なミスをしてしまったのだ。頭が余り働いていなかったとはいえ、あれほど楽しみにしていた大事な大事な入学式を忘れてしまうなんて………。
誰かに言っていたら笑われていた所だろう。幸か不幸か、誰にも言っていない。敢えて言うならば、リビングのソファに座ってるクマのぬいぐるみには話してしまったのだが…………。
「って、そんな事よりも急がないと本当にまずい!」
「入学式そうそう遅刻になる!」
俺は急いで身支度を済ませていく。洗面所で歯を磨いている時、ネクタイが曲がっていることに気が付いたが、そんなことを気にしている余裕もない。
今までで一番早く準備を済ませるという偉業(?)をなしとげつつ、準備を済ませて俺は玄関へと走っていく。
しかし、世の中はそんなに甘くはなかったのだ。外に出ようとした瞬間、お腹が鳴ってしまったのだ。でも、ご飯を食べる時間はもうない。だから俺は台所まで戻り、パンを一切れ銜えて玄関に向かって走り出す。
そして俺は勢いよくドアを開けて外に出る。
「行ってきます!」
俺は自宅にそんな一言を残して学校に向け、全力で走り出すのであった。
階段を走り降りている途中で俺は気がついてしまった。
「鍵閉めてない〜〜〜〜!」
そう、自宅の鍵を閉めるのを忘れていたことを。まだ、部屋を出てすぐだったのは、不幸中の幸いだろう。一人暮らしに慣れていなかったがために起きた悲しい事件だ……。
(これ本当に大丈夫かなぁ…………。)
俺は、これからのことに心配を抱きつつ、学校への道を走って行くのであった。