第1話(新)
俺――神崎裕太は自宅のリビングでクマのぬいぐるみに話しかけると言う奇行を行っている真っ最中である。
「はぁ……。なぁ、学校早く始まらないかなぁ。」
「んっ? 元気出せって? 学校始まるまで、話し相手になってやるからだって? いやぁ~、本当にありがとな。お前がいなかったら、寂しくて仕方なかったぜ。」
いつもこんな風には話しかけている。周りから見たら明らかに頭のおかしい人だ。俺にだってその自覚はある。でも、寂しく寂しくて落ち着かない。だから、こんなことをしてしまう。
一人ですることも尽きてしまいボーっとしていた俺の視界の端にふと、窓の外の風景が写った。もう日が傾いてきている。もう少しで山の陰に隠れてしまうだろう。つまり…………。
勢いよく振り返る。そう、時計を見るために。予想通り、もう5時すぎになっていた。もうすぐで、日が完全に落ちてしまう。日の入りまでには買い物は済ませ、帰宅しておきたいと考えていた。そのためには、今すぐ出かけねばならない。
「やべっ!」
冷蔵庫の中身や持ち物の確認をしていく。
(よし、これで準備万端。)
そして、急いで買い物に行くための準備を終えた。基本的にいつも自炊をしているが最近はもうそれが億劫になってきている。
(はぁ…、考えても無駄だな…………。)
この状況は俺自身が一人暮らしを自分自身で望んだ結果なのだ。割り切るしかない。そう考えながら、玄関に向かった。
「今日の晩御飯は何にしよう?」
そう呟きながら部屋のドアを押した。しかし、いくらドアを押しても開く気配はない。
(鍵は開けているのに何故だ?)
そんな疑問が脳裏によぎった。だが、鍵が閉まっていないと言うことは開かないなんてことはあり得ない。そして、再度試した。今回は勢いを着けて思いっきり押したのだ。
「きゃぁ……。」
ドアは開いた。今回は多少の抵抗はあったものの、すんなりと開いてくれた。しかし、…………。
ふと、その時のことを思い返したみた。そうするとその時のことを鮮明に覚えていた。茶系の綺麗なセミロングの髪が視界の端に写っていたことを。そして、とても懐かしい声が聞こえたことも。
声が聞こえてきたドアの向こうを見る。目の前の光景を見た俺は驚きのあまり思わず目を見開いてしまった。だって…………。
そこに居たのは…………。
幼馴染の宮間優香であったからだ…………。
1話2話は一人称で書いてみたものを(新)として掲載しました。




