始まりはパンジーと共に
そういえば、この家ってどうなってるんでしょう?
この家は外観こそ日本家屋だが、中身は和洋折衷(?)だ。畳の上ソファーが普通に置いてあったり、よく分からない部屋がたくさんあるし。あと、中庭は立派な日本庭園!と、思いきやガラス張りの温室だし。よく分からない部屋がたくさんある。
依頼人の浜松千尋さんは何度かこの家に来ているようで例の温室に通された。
「……でも、何で温室なんですか?」
「簡単に言うと、此処の手入れをしてもらう為だ。」
「という事は、お二人は結構前からの知合いなんですネ」
「まぁ、そんなところだ。」
こんな会話している間に浜松さんは園芸用のスコップを見つけ、せっせと手入れをしている。彼女はお嬢さんと違って背が大きく(170はあるだろう)、お嬢さんとは違った意味で落ち着きがあり、貴婦人という言葉が似合う女性だ。日焼け対策だろうか会った時からずっと黒い手袋をつけている。
「僕も手伝います」
「あら、貴方はどこの国の方?日本語がとても流暢ね。すごいわ」
「イギリスです、あ、ありがとうゴザいます」
お嬢さんが普段あまり褒めない分、なんか照れてしまう。
「そう、イギリス……。あ、それと手伝うなら私より縁を手伝ってあげてね。」
この温室には、半分に薔薇。もう半分にはパンジー(?)が植えられている。
「もしかして、あのパンジー(?)はお嬢さんが?」
「お嬢さん?ッププ、そう。其れは縁のよ。」
浜松さん曰く、薔薇など手入れの難しい花は浜松さん、パンジーなど季節の花はお嬢さんが手入れする事になっているそう。……しかし、そのパンジーはもうしわしわに萎れてもうパンジーと呼べるのか、むしろ枯れ……
〜数時間後〜
なにはともあれ、手入れは終わった。ちょうど太陽が雲で隠れ日差しはあれど、暖か過ぎない気温で作業ができた。ちなみに、あのパンジー達は大半が処分される事となった。お嬢さん、あなた、ものすごい不器用なんですね……。
「それで、要件はなんだ?さっさと言え。千尋。」
薔薇がつたった鳥籠からお嬢さんが言った。いつもに増して鋭い声だった。ああ。そもそもの目的はそうだっだった。
「これよ。」
そう言って浜松さんはバッグの中から白い紙を取り出した。
「ほう?怪文書か。」
「そんなとこ。でも普通じゃぁないの。」
どれどれ、とお嬢さんがその怪文書を受け取る。しばらくして、お嬢さんが首を右に傾ける。
「確かに、普通、私達が想像する怪文書とは違うな。ただし、此処では、だ。」
雲が風で流され、太陽が顔を覗かせる。日差しでお嬢さんの紫色の簪がきらりと光った。
「アドルフ。分かるかい?」
にやり、お嬢さんが目を細めた。
パンジーって人の顔みたいですよね〜