8 人間界、そしてメルヘンワールド
次の日。
放課後になり、今日は部活もない。未和はメルヘンワールドへ向かうことにした。
「未来、今日は部活、ないよね!じゃあ、メルヘンワールドへ、一緒に―――――――」
「未和、俺今日は、佐藤と約束あるから。一人で行ってろ」
・・・なんでそんなに冷たいの?
時和ちゃんとの約束のほうがそんなに大事なの?
未和はため息をついて、一人、メルヘンワールドへと向かった。
「佐藤」
「あっ、未来くん!あの・・・」
時和がそう言いかけると、未来は慌てて止めた。
「俺、ハートフルが、人間になって、くれるの、うれしかったんだ」
「え?」
「・・・未和じゃなくて、ハートフルじゃなきゃ、恋ができない」
「・・・どういうこと?」
「・・・ハートフルのほうが恋できるってことだよ」
「え、どういう・・・」
「でもね、一つだけ、未和と恋できる可能性があるんだ」
「未来くんは未和のことが好きなんだ」
ハートフルの質問を無視して未来はハートフルに尋ねた。
「未和はどうして、メルヘンワールドの存在を知ってたんだ?」
「・・・それは・・・」
「例のプロジェクト・・・ってなんだ?」
「・・・」
「教えてくれよ!ハートフル」
未来が叫ぶので、ハートフルは言った。
「未和は天使だよ」
「・・・え?」
「未和は天使。メルヘンワールドの代表、レアっていたでしょ。その代表の、娘が未和のお母さんなの。・・・メルヘンワールドは信じている人が減ると、無くなって消えてしまう。だからレアが、未和に、「人間に信じさせてきて」って、プロジェクトを始めたの」
未来は目を丸くした。
「それで選ばれた第一号が、未来だったってわけ」
「・・・でもメルヘンワールドの人って、『ハート・パワフル・ミクロ』とか、『クラゲ』とか『ヒトデ』とか、こう・・・変わった名前のはずだろ?なんで未和は『山本未和』なんだよ・・・」
「それは、私が魔法で変えたの」
「・・・ほんとか?」
未来は意外に、そんな返事をしてきた。
「ほんとなんだな?」
「え・・・うん・・・」
「じゃあ、今すぐ未和に会いに―――――――――」
走り出そうとした未来を見て。
ハートフルは、杖を振った。
「未和ーーーーー!!!」
「え?なんで?きかない・・・」
ハートフルは思い出した。
自分は自分で、人間になったこと。
「・・・魔法、魔法さえあれば、未来くんを奪えた!!!」
ハートフルの叫びが響いていた。
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