6 もう一回だけ、天使になります
「・・・」
今未和は、天使の姿でメルヘンワールドを飛び回っていた。
『ここの世界のことを忘れるの』
『・・・私のことも、代表のことも、クラゲもヒトデも、忘れちゃう』
『こっちも未和のことを忘れちゃうの』
『・・・それでもいい?』
・・・そんなことまでして、未和は、未来と結ばれるの?
未和は想像するだけで悲しくなってきた。
・・・でも、決めた。
未和は、人間になるんだって。
「でも、そのかわり・・・もう一回だけ天使になる」
そう言って、未和は空を飛んでいた。
「あれ、こんなところで何してるド?」「未和・・・なのかレ?」「そうみたいだけどミ」「こんなところで、ファ」「ためらってないでーソ」「ちょ・・・ラ」「直接聞いてみるシ!」
「ドレミファソラシドお嬢様!?」
未和が振り向くと、ドレミファソラシドお嬢様、音符の生物が、空を舞っていた。
「何してるド?」
「・・・ちょっとお散歩」
「へぇー・・・レ」
「ハートフルとさっきまで話を———————」
未和がドレミファソラシドお嬢様と話していたそのころ・・・
「待って、未来くん!」
「・・・えっと・・・」
未来が戸惑うと、その女の子はこう答えた。
「私、ハート・パワフル・ミクロ。ハートフルって呼んで!」
「ハ、ハートフル。未和、見なかった?」
ハートフルはちょっと口ごもった。
「・・・未和?見てないけど」
「そっか・・・」
落ち込んだような未来を見て、ハートフルはこう言った。
「私、魔女なんだ」
「え、魔女⁉」
「うん。・・・私、未来くんのことを、ずっと前から、魔法で恋人って出てて」
「え?」
「・・・それで、一度会ってみたくて・・・人間界でいう、運命の相手・・・みたいな」
「・・・えっ」
ちょっとだけ照れる未来。
「・・・でも、未来くん、メルヘンワールドの人のことは、すきにならないんだったよね。だから———————」
ハートフルはにやりと笑った。
「人間になれば、ハートフルに恋してくれる?」
「・・・え?」
「ね?お願い・・・」
ハートフルの目に、未来は思わずうなずいた。
「よかった。じゃあ、未来くん。一回メルヘンワールドの外へ出て。待ってて」
「わ、分かった・・・」
「・・・じゃあね、未和」
ハートフルは自分で自分に魔法をかけた。
「・・・あれ?ハートフル・・・って、誰だっけ。未和、誰と話してたんだろう・・・?」
未和は頭にハテナマークを浮かべた。