1 おかしな女子とまじめな男子
「見てみて、これ!幼馴染が妖精の活躍のおかげで、無事に結ばれるっていうお話だよ、面白いから、未来もぜひ――――――――」
「・・・お前さ、もう今年で、中学生になったんだぜ?」
未来がこの言葉をこれで何回言ったか分からない。
「えー。中学1年生はダメで、小学6年生はいいの?」
「そーいう問題じゃねーだろ。大体俺男だし、こんな恋物語よまねーし・・・しかも、妖精が出てくるってところが非現実的すぎる!未和、もっと、大人になろうぜ?な?」
「・・・未来がそう言うなら・・・」
ぷぅっとほっぺを膨らませて、未和はそう言った。
未和・・・フルネームは、山本未和。
顔もかわいいし、性格もなんともメルヘン・ファンタジーで、男子に超人気。だけどそのことには、本人は全く気付いていない。
未和はどこか不思議な雰囲気の子だ。
超モテる割には、マンガや小説の恋バナにしか興味がないみたい。男子の気持ちにもぜんっぜん気づいてないし、そして、妖精とか魔女とか、めちゃくちゃ信じている。
「・・・ったく。もう中1になったってのに・・・」
「未来はなんで信じないの?」
未来と呼ばれた男の子は、「そりゃ、この目で見たことがねぇしな」と答えた。
未来、フルネーム、国村未来。
顔も、運動神経も、頭も、中の上の下、って言ったところ。未和とは幼馴染でずっと一緒だけれど、未和にはまるで興味がない。
未来は未和とは正反対で、ファンタジーなことを一切信じない。
「この目で見たことがないってだけで、信じないの?だったら、○○県にあるあの遊園地、未来行ったことないでしょ?信じないの?」
「あれは、行ったことがなくても、信じるだろ。大体、行ったことがないからって信じない奴なんか絶対いねーよ!」
「じゃあ、メルヘンランドは信じてくれる!?妖精に人魚、お化け、魔女、それから――――――」
「あーもう!お前と話してると、力が抜けんだよ」
未来はため息をついた。
「・・・大体、お前のことを好きなやつのことが全くわかんねー・・・なんでこんな、ファンタジーの世界に入り込みすぎてるやつを好きになんのか。お前病気かよ」
「へ?未和のことを好きな人なんていたの?」
未和は驚いて言っている。
「いるだろ!それはもう、クラス中にごろごろいるぜ」
「ほぇ~・・・」
未和は、チラッと、未来を見つめた。
「未来は未和のこと、どう思う?」
「は!?」
いきなりの質問に、むせる未来。
「・・・そりゃ、幼馴染で、ファンタジーすぎるバカで・・・」
「うん」
「あとはぁ・・・俺よりモテやがってずるくて」
「それは、未来が悪い。未和のせいじゃないよぉー」
「うるせぇなぁ、モテ女め。あとは・・・」
「未和のこと好き?」
「・・・〇×△▽□※#¥ーーーーーー!?」
意味不明な声が出た。
「んなわけ、死んでもねーよ!」
「えー。クラスにはいっぱいいるのに・・・」
「サラッと、モテてることを自覚すんなよ」
「別にしないよ。だって未来の言ってることって、大体ウソだモーン!未和、わかってるんだよぉー?」
ぐっと近寄ってそういうと、未和はアハハと笑った。
「うるせぇやつ」
「前から知ってたでしょ!」
「まあ」
もーっ・・・・そんな声に包まれて、その日はそれぞれの家へ帰っていった。