第13話 ソフィアとエリー
遅くなりました
「ふぅ、くったくった」
魔法の実験を行い新しい魔法を作り出した後、俺達は食堂へと行き昼間と同じように大量の夕食を食べた
「まさか、これからずっとこの量を食べるようになるわけじゃ無いよな?」
「さぁ?…それよりもお母さん達から貰ったレーザーアーマーはどうだった?」
「明日の出発までには間に合わせるそうだ」
そう、俺の両親から貰ったレーザーアーマーは初日で背中と右腕が裂けてしまった
しかし不幸中の幸いで意外にも男の子の母親はこの村の中で1番の裁縫の腕が有るらしく、何とか直せるそうなので頼んであるのだ
「そっか、なら飯も食べ終わったし部屋に戻ろっか」
「そうだな」
そして俺達は自分の部屋へと戻った
しかし寝るにはまだ早く、時間もあるので俺はソフィアに以前から気になっていたことを聞くことにした
「ねぇ、ソフィアとさお母さん達ってどんな関係なの?何か結構親しげな感じだったけど…」
「ん?あぁ、そういえば言ってなかったな…。丁度時間もあることだし聞かせてやる」
ソフィアは話を頭の中で纏めると話し出した
「あれは丁度10年前…オリヴァーの両親が結婚する少し前、まだ王都に居たときの話だ………
◇ ◇
「はぁ…人が多すぎだ。これだから王都は好きになれん」
私はソフィア
今は依頼で王都に来ているが、もう依頼もこなしたので明日にはここを発つつもりでいる
私は人混みの多さに辟易しながら歩いていると屋台の店主に声をかけられる
「よぉ、そこの嬢ちゃん!キンキンに冷えたジュースは要らねぇか!?今なら少しまけとくぞ?」
その売り文句はわたしの足を止める威力を持っていた
「いくらだ」
「普通は銅貨3枚だが2枚にまけといてやる」
「では、1つ頼む」
「まいど!」
私は銅貨2枚を払い商品を受け取る
「そうだ、嬢ちゃん伊吹亭にはもう行ったか?」
「伊吹亭?」
「なんだ、名前すら聞いたことないのか?結構有名だぞ?」
「すまない、初めて聞く」
そういえば…と、王都周辺の情報を集めるのを忘れていた
いつもはパーティーメンバーの1人がするのだが、久しぶりのソロ活動だったもんだからすっかり頭から抜けていた
『ソフィアは結構抜けてるところが有るんだから、私が居ないってのを頭にいれてちゃんと情報を集めなさいよ?情報収集ってのは、その情報を知ってるか知らないかで生死が別れることだってあるんだから』
と出発前に言われていた気がする
その時は抜けてなどいないと思っていたのだがあいつの言う通りになってしまった
「伊吹亭ってのはなここ最近出来た店で、まぁ少し値段が高いがそれでも出される料理の旨さを考えると安いって訳で連日賑わってんだよ」
「ほぉ。それはいいことを聞いた。王都を出る前に寄るのもいいかもしれんな」
「あぁ、そうした方が良いと俺は思うぜ。まぁ、嬢ちゃんには関係ないが、その店の奥さんがこれまたベッピンでな!それを目当てに無理して通ってるバカ共も居るんだよ」
俺もその中の1人だがなと言ってガハハハハと豪快に笑う店主
「程々にな。世話になった」
そうして私は踵を返すが…
「おぉい!嬢ちゃん!場所は分かるのかよ!?」
ソフィアは先程とは逆向きに踵を返す
「すまない…教えてはくれないだろうか?」
「ガハハハハ!この道を真っ直ぐ行ったところだ!気を付けてな!」
「…わかった」
そして私は王都での最後の夕食を伊吹亭でとることに決めて伊吹亭に向けて歩き始めた
暫く歩いていると料理のいい匂いと共に伊吹亭と書かれた看板が見えてきた
「これは、すごいな…」
中を覗き込んでみると普通は3人で座るであろう長椅子に4人が座り、中には料理だけをテーブルにのせ立って食べてる者もいる程混雑していた
その中で1つのテーブルに成りの良い人物と使用人や護衛と思われる者達が座っている場所が2ヶ所程あった
あれは貴族だと思うが一般庶民の中に紛れて食事をするとは物好きも居たものだ…
「いらっしゃいませ!御1人様ですか?」
私が店の前で佇んでいると店員らしき女が話しかけてきた
「そうだ」
「あちらの席になりますがよろしいでしょうか?」
女は2組の貴族の内1組の方の近くの席を勧めてきた
何か騒動に巻き込まれる可能性があるが店側は一切責任を持たないぞと暗に告げているのだろう
「あぁ、かまわん」
「では、こちらに」
私は女店員の後を付いていき席へと着く
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「この店でオススメの料理を頼む」
「分かりました。少々お待ちください」
そして、女は去っていく
私は初めて来た店では何時もこのように注文をする
それによりその店がどんな店なのか、そして料理に自信があるかどうかが分かる
まず、1番高い料理が出てきたらその店は商売のことしか考えおらず、そのような店には旨いと思える料理は無い
しかし、本当に1番のオススメが1番高い料理の時もあるが、本当に旨い店ならば注文の時に確認をとる
どんなに料理が上手くても、このような事が出来なければその店は直ぐに潰れるのだ
そして、本当に旨い店はその店の料理人が1番得意とする料理が出てくる
まぁ、中には得意とする料理でもそこまで旨いと感じることが出来ないような店もあるがそこは要修行といった所だ
暫くするとさっきの女店員が料理を持ってきた
「具沢山シチューとパンになります」
具沢山シチューはその名の通り具が大量に入っていた
それも野菜だけとかではなくきちんと肉のかたまりもゴロゴロ入っていた
『きさま!儂の言うことが聞けんと言うのか!』
でっぶりとした貴族の男が噂の美人妻に怒鳴りちらすが、ソフィアは食事に集中していて全く聞こえていない
私はまず野菜から口に運ぶ。その野菜は長時間煮込まれたからなのかとても甘かった
『ちょっとあなた、いくら貴族だからといってそれは横暴よ!』
その貴族の醜態を止められるのは同じ貴族だけという正義感からもう1組の貴族の女が仲裁に入る
次に食べたのはゴロッと大きめに切られた肉だ
その肉は口の中でホロリとくずれ、同時に肉汁を吹き出させる
『ほぅ、お前も中々良い体をしているじゃないか。私の女にしてやる。お前もこいつと一緒に儂のもとへ来い!儂がお前達を飼ってやる!』
男は貴族の女の体を欲望に濁った目で見て言い放つ
その肉のパンを食べては居られないような衝動に駈られパンを食べやすい大きさに千切り口に放り込む
パッシィーン!
『貴方!最低よ!言って良いことと悪いことの区別もつかないの!?』
貴族の男のあまりの言動に耐えきれずに貴族の女は貴族の男の頬を叩き、叩かれた貴族の男の頬は手のひら形に赤くなていた
パンによって口の中の水分を持っていかれたため私はシチューのスープをすくい飲み込む
そのスープはとてもまろやかであり味に深みがある
かといってしつこくはなく口の中がさっぱりとする
『きさまぁぁああ!』
男は叩かれたことに激昂し顔を叩かれ赤くなった場所と同じ位真っ赤にしながら腰に着けていた剣を振り上げる
激昂してても多少は理性が残っていたのか剣は鞘から抜かれず鞘ごと持ち上げていた
久しぶりに当りの店だ
これ程のシチューとなると数える程しか思い浮かばない
私は少し行儀が悪いがパンをシチューに浸けて食べるかどうかを迷っていた
『あら?口で駄目なら暴力だなんて単純なのね、貴方』
貴族の女は挑発的な目で貴族の男を見る
後ろにはいつの間にか護衛と思わしき人物が立っていた
うーん
行儀は悪いがあの食べ方が1番旨いのもまた事実
『ふざけおってぇえ!これでもくらえ!』
そして貴族の男は剣を降り降ろす
しかしあの体では威力は出るがスピードは出ない
また、貴族の女の方も多少武術の心得があるのか危なげなく回避するのだが………
うん
何時もうるさいあいつも居ないし、ここでマナーがなんだと言われることもないだろう
というわけでパンを片手に持ちいざシチューに浸そうとした矢先………テーブルの上から食べ物が消えた
綺麗さっぱりと、だ
詳しくは何か筒のようなものが飛んできてそれが食べ物を巻き込みながら飛んでいったのである
そう、貴族の男の剣の鞘だ
剣を降り下ろした拍子に飛んでいってしまったのだ
これには唖然とするしかないだろう
そして、貴族の男も流石に抜き身の剣を持ったままだというのは不味いと思ったのだろう言い争いを止め鞘を取りに来る
「チッ!汚いな。おい!そこの女、このシチューはお前が食べていたものだろう!俺の鞘がお前の食べかけの汚いなシチューで汚れたんだ、責任をもって綺麗にしろ!」
ぶぅっちぃん!!!!
頭の血管が盛大に切れる音がした
その瞬間私の体から怒気が溢れだす
「ヒィィイイイ!!!」
だれの悲鳴だろうか
いつの間にか、あれだけ騒がしかった店内が静寂に包まれている
「貴様…自分が何を仕出かしたのか分かってないようだな…」
ソフィアはその辺に落ちているゴミを見るような目で貴族の男を睨み付ける
「自分の落ち度で人様の食べ物を粗末にしただけでは飽きたらず、そのせいで自分の手荷物が汚くなったから責任をもって綺麗にしろだと?」
貴族の男は余りの恐怖にただ立っていることしか出来ない
ガシッ!
ソフィアは貴族の男の顔を片手で握り締め持ち上げる
ソフィアの細腕の何処にそんな力があるのか、体重が100キロを越えるような巨体を腕1本で持ち上げる
「ガァァ!」
男は悲鳴をあげる
男は今首1本で己の体重を支えているのだから首に掛かる負担は計り知れないだろう
「食べ物の恨みってのはな……」
私は腕を振りかぶり…
「この世で1番恐ろしいんだ!!!!」
ブゥン!
勢い良く投げ飛ばす
ベキ!ガァアン!ドゥン……
男は店の入口を突き破り、それでも勢いは止まらず向かい側にある何かの店の壁を突き破り、その後ろにある壁にめり込むようにしてようやく止まった
「……あ」
頭に血が上ってしまい、ついやり過ぎてしまった
私があの男を投げ飛ばして出来た穴の修理代は明らかに私持ちだろう
こうなったらすべきことは1つしかない
私はもう1人の方の貴族の女の元へスタスタと歩いていく
「あ、あの…私に何か用ですか?」
貴族の女はソフィアの迫力に後ずさりする
「あぁ」
私は真っ直ぐ貴族の女の目を見る
あ、そらされた
まぁ、構うものか!
「壁の修理代となるお金を貸してはくれないだろうか?」
「……へ?」
「もう、借金生活は嫌なんだぁぁぁあああああ!!!!!!!!」
そう、これが私とオリヴァーの母親となるエリー=アシュリーとの出会いだった
◇ ◇
「以上だ」
「へ、へぇ、中々凄い出会いだったんだね。ところでソフィアがぶん投げた貴族の男って、それからどうなったの?」
「あぁ、ブッ飛びモミジ赤リンゴ野郎か。やつはな…」
「ストップ!ストップ!」
何か凄い単語が出てきたぞ
「何、そのブッ飛びモミジ赤リンゴ野郎ってのはさ」
「あぁ、すまない。ついな。この呼び方は私とエリーとの間で決めた、あの貴族の男のあだ名だ」
ブッ飛びは、もちろんソフィアがぶん投げたからだろう
モミジはエリーが付けたモミジだろう
赤リンゴは顔を真っ赤にしたことから付けられたのだろう
うん、安直だけど悪意がにじみ出てる
「まぁ、ブッ飛びモミジ赤リンゴ野郎は、あれから詰め所に連れられて、同時に不正が大量に見つかったという話は聞いたが、それ以降は知らん」
「へぇ、そうだったんだ」
「もう、良い時間だから寝るぞ」
「わかった」
そうして俺達は仲良く一緒のベットで眠りに就くのだった
心にソフィアの食べ物には絶対に手を出さないと刻み込んで…
エリー「くしゅん!」
ルーカス「エリー、風邪かい?」
エリー「いいえ、誰かが噂話してるわね」
ルーカス「オリヴァー達かな?」
エリー「そうね。宿の部屋の中で私とソフィアが出会ったときの話をしているわ」
ルーカス「……断言するんだね」
ソフィア、オリヴァー「「……」」ゾクッ!!
オリヴァー「さ、寒気が…」
ソフィア「…私もした」
ソフィア「何かこう見られてるような…」
オリヴァー「も、もう、寝よう!」
ソフィア「そ、そうだな…」
余談でした




