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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

左うでの夢

 とあるネット番組。カメラに向かって、眼鏡の似合う、バランスの取れた美貌の女性レポーターがマイクを口元にあて、激しく叫んでいる。

「後先顧みぬ発言がこの所続いて話題になっている、『高等遊民最後の牙城党』幹部が総結集している最後の牙城ビルの前からの中継です! たった今、午前○○時、党の代表であるイヤッハーイ・オマエラダケ・ク・サーイ総帥による

『○○の奴らは全員生まれて来たのが間違いなんだ』

という発言が成された事が明らかになりました!!」


 閉塞した経済状況下真っ只中での出来事である。その発言内容に当てはまる人々、親類縁者一族郎党、その政党のやり方に苦いものを大なり小なり抱いていた数々の勢力へそれは瞬く間、まさに光速ネット配信によって知れ渡り、彼らは連合軍として一斉蜂起、最後の牙城ビルにいた発言者である総帥を含めた全員が惨殺され、ネットで晒し上げされたのを皮切りに、人類は新たな泥沼の紛争時代へと自ら飛び込んで行った。




 そこから遠く離れたある場所で。

 歴史記述担当の高官である少女は、自分の担当ページの項目を見て、その無残さに顔をしかめ、屈辱に頬を染めながら、言った。

「これは……恥ずかしいよ」

 隣で作業をしていた、同じ姿の少女―彼女らはこの星の最後の情報処理端末であった―が、同僚の発言内容と項目をスキャンしてから訊ねた。

「それは、言い出しっぺの意見の内容とその思考がクズ過ぎて?」

「そう」

「まあ、そうよね」

「もう少し前にこの仕事が来ていればなぁ。上官とかさぁ、右腕レベルの人がいたから任せられたのにね」

「ホントにね。あたしらは言うなれば左腕レベルだからねぇ」




 他にも重要かつ膨大な量の記述すべき項目があるのだ。その惑星の最後の文明の爪跡を残し、最期に自壊を果たすのみである担当としては、それにかかりきりになる訳にはいかなかった。

 即断即決が許可されている少女端末の申請は受理され、こうして、発言以降10世紀以上もしこりを残し続けた大規模紛争の原因追及はうやむやにされて終わった。

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