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悲劇  作者: ねるこ
3/4

馬鹿と噂

結局、私は学校を早退しました。

保健室に行き、顔色が悪いと先生は私を家に帰してくれました。

学校からそこまで距離がない位置にある私の家です。一人で歩いて帰ることになりました。



帰り道、洗濯物を干し終えでもしたのでしょうか、あちこちで3・4人の主婦たちが輪をつくって話し込んでいます。私のことを見るとその騒々しく耳障りな声達は一転し、落ち葉と地面がかすれるような小さな声になりました。

不幸なことに私の耳は意地悪で、その会話は驚くほどはっきりと聞こえてきました。

「ねえ、あの子・・・」

「そうよ、農薬だかなんだかを使った野菜を近所へ回したって」

「下痢騒ぎが起きてるんでしょ?」

「あら、私食中毒って聞いたわ」

「誰か亡くなってるって私聞いたんだけど・・・」

「やだ本当に?」

「こわいわねえ」


農薬?何よそれ知らないわ

食中毒?死人が出てる?話がどんどん大きくなってるじゃない

会話の主たちの方を睨むと、意地汚い鴉がゴミ捨て場から去るように速足で帰っていきました。

おばさんたちが行った後も、私はその場に立ち尽くしていました。視界がぼやけてきたな、と思ったら右頬になにかが垂れました。なんだか私は、「お母さんの所へ早くいかなきゃ」と思いました。

両耳を手で塞ぎながら速足で家へと向かいました。


いつもの帰り道。いつもの家。いつもの玄関。

大丈夫、きっと家の中もいつも通り。今日のことは皆が何か勘違いをしていただけ。

開けました。地獄がありました。

まだ午前中だというのに部屋は暗く、まるで泥棒が入ったかのように荒らされ、なにやら鼻を覆いたくなる異臭まで漂ってきました。暗く辺りが見えない中で足を進めると、足の裏に痛みを感じました。食器の破片のようでした。驚いて右足を一歩前に大きく出すと、例えばプラスチックの様な「人工的な物」ではないものを踏みました。ぐにゃ、とした足裏にまとわりつく嫌な感じ。人です。もっと詳しく言えば私のお母さんです。

「お母さん!ねえ大丈夫」

返事はありません。

ねえとお母さんの腕を掴むと生温かいおそらくこれは血でしょう、私の手のひらにべったり付きました。

先ほどの異臭が強くなりました。手前に見えた、お母さんが吐いた大量の吐瀉物が原因かと思われました。

この時に流した涙が、私の最後の涙でした。

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