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悲劇  作者: ねるこ
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母の傷

私の家は農家で、お母さんがいつも頑張って野菜を育てています。

お父さんはいません。四年前、私が小学校に入った年にお金と女の人を連れて出ていきました。

でも私、全然平気です。つらくなんかありません。

大好きな優しいお母さんと2人で暮らせることが、幸せで仕方ありません。



     ーーお母さんは本当に優しい人で、作った野菜をご近所に配ったりなんかしていました。

     ここまでくると、お人よしなのかもしれません。

     「お母さんたら」なんていいながらも、優しい母を少しだけ自慢に思ったりなんかして。

     幸せでした。とても。ーー



今日はお母さんがカレーを作ってくれると言います。お母さんが作るカレーは大好きなので、とても楽しみに一日を過ごしていました。

「お母さんただいま。カレーは?」

「おかえり。帰ってきたばかりでしょ、手洗ってらっしゃい」

渋々と洗面所に向かいました。古臭い固形の石鹸を手に取り、中々泡立たないなとかそんなことを考えながら手を洗いました。ちょうど手を洗い終えたときに、台所からカレーのにおいが漂ってきました。

速足で台所に向かうと、お母さんがこちらを振り返りながら

「食いしん坊ね」

私はなんだか、何故かわからないけど、泣きそうになりました。

「そんなの今更でしょ」

ごまかしながら食事の席に着きました。

目の前に置かれたカレーを見つめながら、お母さんが来るのを待ちます。お母さんが向かいの席に着くと、いただきますと言ってカレーを食べます。

しかし私が頭の中に浮かべた、なんでもない日常のそれは実行できませんでした。


いただきますという前か、それかほぼ同時に、真横のガラス窓が割れました。

いえ、勝手に割れるはずがありません。誰かによって割られました。飛び散った破片がこれから食べるはずだったカレーの中に入ったとか、お母さんの左ほほが切れてるとか、目で確認をしながらも私の頭の中は真っ白でした。震える私を、お母さんは強く抱きしめてくれました。

「大丈夫、大丈夫だからね」

その声は震えていました。

3話で完結させる予定です。

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