ある日の大学生の会話
特に意味があるようなお話ではありません。
会話中心。
なんとなく書き上げてしまったので投稿。
暑い中、大して冷房も効いていない研究室で男2人レポートを書いている。
とは、これ如何に。
そんなときに隣の男は、ばたんと机に倒れこみ、不可解なことを言い出した。
「人生ってさぁ。ティースプーン一杯に左右されると思わないか。」
無視。
それがいちば……
「…………だぁぁぁぁ!てめぇのせいで集中が切れたじゃねえか!」
無視して進めようとしたが、暑い中、頭が沸いたのではないかという発言を無視しきることはできなかった。
読んでいた資料で隣の男をばしばしと殴る。
所詮紙の束だ。
痛くはないだろうが、俺の気分的な問題だ。
これで気が済む……わけもないが、切れた集中は殴っても戻ってこないのだ。
とりあえずは殴るのをやめる。
こういうときは一息入れて切り替えるに限る。
コーヒーを淹れ、シュガーポットとともに、隣の馬鹿にも渡す。
こいつは砂糖をティースプーン三杯は少なくとも入れる。
いい豆なので、そこまで砂糖を入れたら味が分からなくなって、もったいないだろうと思うが、注意しても直らないことは実証済みなので好きにさせる。
コーヒーで一息入れ、仕方がないので先ほどの話の続きを促す。
でなければ一人でぐるぐるとして先に進まないのだ、こいつは。
そして、ただでさえ遅れているレポートが、さらに遅れることになりかねないのだ。
自分の平穏のため、と心の中で唱えつつ、口を開く。
「で?人生が何だって?」
男はだるそうに起き上がり、砂糖を入れ、くるくるとかき混ぜる。
こちらを一瞬ちらりと見て、再びコーヒーに目を戻す。
肘を付いて、だらだらと回し続ける。
もう溶け切ってるだろうに。
「いや、人生ってティースプーン一杯に左右されるよなぁ、と。」
「なんだそりゃ?」
「ほら、お前はコーヒーに砂糖入れないだろ?」
「あ?あぁ。そうだな。」
「俺は三杯は入れるじゃん。」
「あぁ。もったいないことにな。」
「いいじゃん。甘いほうがうまいし。お前こそブラックとかかっこつけてんじゃねえ」
「あー、はいはい。進まないからとっとと話せ。」
「なんだよ。ったく。……えっと、そうそう。俺もお前も、別にこだわりがあるわけでもないけど、好みでそうしてるわけで、お互い交換しても飲めないことはないじゃん?」
「まぁ、我慢すりゃあ飲めんな。自分から飲みたいとは思わんが。」
「な?でもさ、時々それは無理って思うときはあるわけで。無理ってなるのって人生だなって。」
「は?」
「いや、だからー。たとえばお前がぜってぇ甘いもん飲みたくないって時があるとするじゃん。」
「まぁ、あるわな。そもそも甘いもん好きじゃねえし。」
「そんなときに俺が砂糖入ったコーヒー渡すとするじゃん。」
「あぁ。」
「で、そのときどうするかっていったら、いや、無理して飲むかもしれねぇけど、まぁ、捨てることもあると思うわけよ。」
「あー。ねぇとはいわねぇ。スプーン山盛り三杯の砂糖が入ったコーヒーとか、俺にとっては殺人コーヒーだし。」
「だろ?だから、ティースプーンで人生は決まるなぁ、と。」
「いや、お前、話飛んでるから。」
「えー。」
「えー、じゃねえよ。真剣に聞いてやってたってのに。」
「なんでわっかんないかなぁ。」
「わかんねぇよ。自分の頭ん中だけで解決すんな。」
「うーん。だからさ、用意されたコーヒーが好みじゃなかったとき、大抵は普通に飲むわけよ。好みじゃなくても、普段なら我慢できるわけ。」
「おう。」
「でも時々、我慢ならなくて捨てちゃうやつもいるってわけ。その捨てる捨てないの差はティースプーン一杯に左右されるかもねって話。」
「…………おう。」
「な?」
「……で?」
「いや、だから人生もそんなもんだよなぁって思ったわけよ。」
「……。」
「……な?」
「よくわかんねえけど、」
「わかんねえのかよ。」
「説明大して変わってねえじゃねえか。まぁ、とりあえず、ティースプーン三杯の差じゃね?とかつっこんだほうがいいか?」
「あー……。」
「……。」
「…………。」
「…………レポートやるか。」
「そだな。」
ドヤ顔で言われたが、わからない。
とりあえず、自己完結したらしく、機嫌よくパソコンに向かいだす。
それを横目に、カップを片付け、自分も再びパソコンに向き合った。
誤字脱字がございましたら、お知らせください。
「人生ってティースプーン一杯に左右されると思わないか?」
と頭の中の誰かが語りだしたので、書いてみました。
名前を出さなかったのは思いつかなかったから。