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泣き虫ヴァンパイアと狼女な彼女  作者: トキノトキオ
■第三章 ヴァンパイア殺人事件
9/14

(1)闇に潜みし者達1


「ねえねえ、チカ先輩~コレしってまふ~?」

「アヤメちゃん!モノを食べながら喋らない!」


 ある日の夕方、仕事終わりの休憩室でもうひとりのバイトである如月彩芽が週刊誌をめくりながら声をかけた。片手にはスナックバーを握りしめている。彩芽はチカと同じ学校の一級下の一年生だ。


「だいたいそんなくだらない雑誌に興味なんかないわよ」

「そーですかー面白いですのにーヴァンパイア殺人事件とか」


「ヴァンパイア殺人事件!?」


 そのとき、ロッカーに制服をしまい帰ろうとしていたイヴァンと、チカはともに声を上げた。


「イヴァン、アンタもそんな話しに興味があるの?」

「い、いやあ、ヴァ、ヴァンパイアだなんて、何だろうと思って」

「ふ?ん、なんか怪しいわねえ?『ヴァンパイア』って言葉に反応しすぎじゃない?息してんの?大丈夫?」


 もちろん、イヴァンは『ヴァンパイア』という言葉を聞いたことに驚いていた。しかし、今、息もできないほどに心臓が高鳴るのはいつかの記憶のせいだ。


「チ、チカちゃん……キミ、以前、髪染めてた?もっとこう明るいというか色をぬいた様な……」

「な、何を言ってんのよ!そんなコトするワケないじゃない」


 チカは嘘はつけない性格らしく、鈍いイヴァンにもチカが何か知ってることが分かった。


「それって千夏さんなんじゃ……」

「アヤメ!だまりなさい!」

「はうぅ~」


 アヤメが口を挟んだがチカに睨まれた。


「千夏……そうだ、そうだそうだそうだ!千夏って言ってた!チカちゃんが……千夏……そうなの?そうなんだね!」

「なに勝手に盛り上がってるのよ。違うって言ってるでしょ。千夏は千夏、私は私」

「そ、そうなんだ。で、でも……知ってるんだね!」

「知らないわよ!てか、知ってるわよ!つーかアンタも知っでるんでしょ?」

「い、いや……」

「…………ホント?本気?ナメてるの?おちょくってるの?」


「チカせんぱーい、ホントに知らないみたいでふよ~」

「そう……なの……」


 少しホッとしたような、残念そうな表情をしたチカに代わってアヤメが『フェンリル団』とそのリーダー千夏について説明しはじめた。


「……だから、『フェンリル団』は正義の味方で、女子の憧れで、その中でも千夏さんときたらスーパースターさながらの超アイドル的存在で知らない人は誰もいないくらいの有名人なのよ!」


 アヤメはまるで自分のことのように嬉々として話した。だが、イヴァンが知りたかったのは『フェンリル団』ではなく『千夏』のことだった。


「容姿は?そんなんならさぞかし美人さん何だろう?」

「あったりきしゃりきのコンチクショーめ!てんやんでいべらぼーめ!ってくらいの美貌の持ち主よ!」

「ちょ、ちょっと、それほどでもないでしょ?」

「なに照れてんですか!それほどのものでしょう!」

「あーこの子、『フェンリル団』のファンだから……」


 チカは顔から火がでんばかりにはにかんでいた。


「それで?誰かに似ていたりしないのかい?」

「誰かに?んーと、えーと、えーと………あっ!チカ先輩よ!チカ先輩の髪をプリーチして目をちょっと吊り上げて少し色っぽくした感じよ」

「なるほどね……ありがとうアヤメちゃん」


 そう言うとイヴァンはあらためてチカを見た。チカはとっさに目をそらしてしまった。


「そ、そ、そう言えばアヤメちゃん。ヴァンパイアがどうしたのよ」

「あっ!そーだそーだ、そーでしたし。これでふこれでふ」


 アヤメが広げた週刊誌には、ともすると怪しげな見出しが踊っていた。しかし、チカもイヴァンも夢中になって記事を読んだ。


『ヴァンパイア殺人事件』

 最近、美しい少女ばかりを狙った殺人事件が起きている。ときに路上で、ときに廃屋で、発見される死体には奇妙な共通点があった。ひとつは手に何かのアルファベットが書かれた紙切れを持っていること。もうひとつは、どの死体のクビにも二つの穴があった。そのことから「ヴァンパイア殺人事件」と呼ばれようになった。


「ヴァンパイアだって?」


 またしてもチカとイヴァンは同時に叫んだ。


「なんだかおふたりは仲良しさんなんすなあ~」


 アヤメがぼんやりと言うとチカの耳が真っ赤になった。


「バ、バカなこと言わないの!そんなことより行くわよ!コレは調べなくっちゃ」

「あい~っすぅ」

「あっ ちょっと待って、危ないことしない方がいいよ」


 イヴァンの言葉もむなしく、ふたりはすぐに出ていってしまった。



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