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泣き虫ヴァンパイアと狼女な彼女  作者: トキノトキオ
■第三章 ヴァンパイア殺人事件
10/14

(2)闇に潜みし者達2


「ジュリアーーーーーノ!」


 家に帰るとイヴァンは叫んだ。


「なんですか坊っちゃん。こんな狭い日本家屋なんだから叫ばないでも聞こえますよ」

「ジュリアーノ!お前、血を吸ったのか!殺したのか!」


 いつになくイヴァンの表情は険しく、瞳も赤く輝いているように見えた。


「ヘックシュ ヘックシュ なんでございますか?それは。ワタクシが数日寝込んでいるのをお忘れか?」

「そ、そうだな……しかし、だとしたら誰が……」

「どうしたのです?」


 イヴァンは『ヴァンパイア殺人事件』についてジュリアーノに話した。


「ふむふむ、なるほど、なるほど……」

「我々の他にヴァンパイアがいるのか?この日本に」


 分かっているのかいないのか?ジュリアーノは話を聞きながらあいまいな合いの手をいれていた。


「さあてねえ~それはわかりませんが、正規のヴァンパイアであれば本国の管理下にありますからムズカシイでしょうなあ」

「それなら、これは何なんだ!」

「正規の、と言ったじゃないですか。それに、今は本国もどうなってるのか……だから、ヴァンパイアかもしれないし、そうじゃないかもしれない……って感じでしょうかねえ」

「そ、そんな無責任な!」

「無責任と言われましても……ねえ?いいじゃないですか放っておけば、警察とやらに任せておけばいいのですよ」

「それじゃあチカちゃん達が危ないじゃないか!」

「チカちゃん?それは坊っちゃんの……獲物ということですかな」

「そ、そ、そんなんじゃないよ」

「ふうむ……でもですねえ、坊っちゃん。さっきの『ヴァンパイア殺人事件』ですか?それがほんとにヴァンパイアの手によるものなら、坊っちゃんならチカちゃんさんとやらを守ることは簡単ですよ?」

「本当か?」


 ジュリアーノはニヤリと笑い深く頷いてみせた。


「ど、どうすればいい?」

「マーキングですよ」

「マーキング?」

「ええ。彼女が坊っちゃんの所有物だと宣言するのです。純血種である坊っちゃんの宣言に逆らえるヴァンパイアはそうは居ませんよ」

「そ、そうか!なるほど!」


 イヴァンの瞳に光が差し、表情がみるみる明るくなっていった。


「それで、どーすればいい?何をすればいいんだ?」

「マーキング……所有宣言にはいくつかの段階があります。まあ、どれもこれも簡単なことですけどねえ……」

「もったいつけてないで早く言ってよ!」

「うーん……もったいつけてるワケではないのですが……坊っちゃんにはムズカシイでしょうかねえ……」

「だから!早く!こうしてるあいだにもチカちゃんは危険なんだよ!」

「そうですか……まあ、上から順に言いますと……もっとも強い宣言は、血を吸う。血を吸って隷属させる……」


 バシンッ!


「痛い、痛いですよ。室内でいきなりカミナリ出すのやめてくださいよ!何度も言いますけど、普通死にますよ?」

「そんな無理難題を言うからだろ!ほかには?ほかにもあるのだろう?」

「だから順に言いますって言ってるでしょうに。まあ、次に強力なのはあれですねえ……性的交渉……」


 バチッ


「まだです!まだ有りますから早まらないでください。最後は、まあ、おまじない程度には効果がある……キッスですかねえ。キス。口から口にブッチュゥ~っと、これなら坊っちゃんにも出来るでしょう?」


 ズッ ドーーーーン


「そ、そんなことは……できない。もう、自分が行くしか無い」


 イヴァンは慌てて出て行った。カミナリを落として……


「まったく坊っちゃんときたら何を考えてるのでしょうなあ。結局誰かの血を吸わなきゃ我々に未来は無いというのに……ま、なんとなく面白くなっては来ましたがねえ……」


 ジュリアーノはポーズを決めたが、その顔はススで真っ黒だった。



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