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#2
「だって、あなた交際してる人もいないでしょ?どうするのよそんなので…」
日織は少しだけ口を濁して見せる。
それに、ぎこちない動きをして、祥子さんは気づいた。
「…あれ、もしかして…できたの?彼氏」
日織は上目づかいに頷いた。祥子さんは満面の笑みで笑った。
「やったじゃないの!誰?どんな人?会社の人?」
「うん…2つ上で…」
海の音が気持ちいい。
日織は、昨夜の祥子さんとの会話を思い浮かべながら、砂浜を蹴った。
ぱしゃっ
靴が海辺を蹴った。―― 潮風。
結婚。
まだちょっと早いかもしれないけれど。
「舞姉ちゃん、おじさん、恋人できたよ」
日織は太陽の登った、澄んだ海を見渡して言った。
この水が、この風が。
―― あの人たちへと繋がっている。
私を、祥子さんまで渡してくれた、繋げてくれた、あの人たち。
今は一体、どこで何をしているのだろうか。
私を、どれだけ憎んで、愛してくれた。
―― 想いを、馳せる。
「明日は、社会科見学なんだから、早く寝なさい」
舞が言ったのが聞こえて、日織はリビングのテレビの前から立ちあがる。
「はーい」