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海沿いの会社。中小企業ではあるものの、日織の勤める会社は今のところ右肩上がり。
この地域は海が近くて、子供の頃から潮風が吹くと、自転車がよく錆びついた。だけど、小さな頃からこの潮風を嗅いで育ったから、日織はあえて、そんな風を浴びながら自転車でツーリングするのが学生時代、お気に入りだった。
そうして、この日も海沿いを歩く。
ざーっ…
ざーっ……
ここは海沿いとはいうものの、よく耳にするような辺鄙な雰囲気の街ではない。むしろ逆で、小学校高学年の頃にできた高速道路で、人が行き来する。何より、工業から大きな変化を経て作られたテーマパークや、商業施設で、見違えるように客足が伸び、ここまで発展した。だから、この不景気の中、高校を卒業したくらいでこの会社に就職できたのだろう。
「え、結婚?」
日織は‟祥子さん‟に目を丸くして聞き返した。
日織が座る夕食のテーブルに、‟育ての親”、祥子さんは座って言った。
「そうよ、あなたもう27じゃないの、そろそろ本気で考えないと、後悔するわよ」
「また?」
‟また‟。
そう言うのは、お見合いを3回すっぽかし、1回だけ会ってお見合いした経験から出た言葉。
「勘弁してよ、もう…」
箸を置いて、頭を掻く日織。
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