冒険者ギルド
遅れてすいまそん
次の日、私は昨日届いた手紙を元に冒険者ギルドへ向かう事にした。
前日、街をブラブラした時に必要な物は大体買っておいたため、そろそろくたびれてきた服を洗濯してもらう事にした。(※10M)
元々来ていた服から、買った服に着替える。ジーンズの様なものと、麻で出来ているワンピースを来て、背中に剣を背負う。
腰には麻袋を2つ付けた。一つはお金を入れて、もう一つは戦利品を入れる用だ。
といってもお金は武器や消耗品を買ったらほぼ無くなってしまって、200銀貨と少ししかない。
パンツがカボチャパンツしか無かったのでお尻あたりがモコモコするのがちょっと難点かな。ワカメちゃんかっての。
リク君は何か用があるらしく、今日は別行動だ。
昨日買った街の地図と、ぶらぶら回った時の記憶を頼りにギルドを探す。
お城の前や、東西南北の門の周りを探してもなかなか見つからない。もうすぐお昼かな?という辺りでようやく見つかった。意外と街のど真ん中にあるんだね。
木製の開けたらチリンと鈴の鳴る扉を開けると、ガヤガヤと騒がしい雰囲気が迎えてくれた。
少し汗の据えた匂いがする。
やっぱり比率は男の方が多い。女は居ない訳じゃないけれど、ほとんどムッキムキのゴツいアマゾネスタイプだ。
時々私と同じような人も居るけど、恐らく転生者だろう。しかしザッと見ると転生者は10人も居ない。
マルネス王国が亜人の国だからだろうか。ヒューマンの国ならもうちょっと多いのかもしれないけれど。
入って右手の方にあるカウンターの方へ行く。カウンターにいるのは…
中年のおっちゃん。三人中一人。
綺麗なお姉さん。五人中四人。
イケメンの男。五人中四人。
どうする?
というかイケメンとお姉さんについてる奴等必死過ぎでしょ。すっごい汗かいてるし。相手ドン引いてるよー……。
あ、おっちゃんと目が合った。よし。あそこにしよう。
私が行ったところに立っていたおっちゃんは人の良さそうなゆるい顔をしていて、ちょっと頭髪が後退している、今の役所とかにいそうな感じだ。
「あのー、手紙が届いたので、来たんですけどー」
「あぁ、新しい転生者の方かね?じゃあこっちにどうぞ?」
人の良さそうな笑みを浮かべ、カウンターの横の方を開けて中の方へ入れてくれる。
30人くらいの人数がそれぞれ書類に対してにらめっこしている真横を通って一番奥の部屋に行く。
中は普通の応接室の様な、部屋の真ん中にソファがテーブルを挟んで向かい合ってるカタチだ。
横の棚には色んな調度品も置いてあった。しかし、私はそんなものも気にならない程目の前の人を凝視していた。
むっきむきやん。めっちゃむっきむきやんか。
頭はもう完全に全て白髪。だいぶ薄くなっている。目は閉じているが頬に斬られたような傷があり、歴戦の勇者の様な雰囲気をかもし出している。
ソファがたわむ位の体重で、座っているのに162cmある私の身長とほぼ同じくらいだ。
全身の筋肉ははち切れんばかりに膨らみ、二の腕なんて私の腰くらいありそう。
立ち上がると恐らく天井にぶつかるであろうその巨体はそこそこおおきいソファの中に狭そうに鎮座している。
とりあえず千里眼でステータスを見てみる。
アンドリュー・ルクス(82歳)
攻撃:999
防御:999
回避:13
~~これ以上はご覧になることは出来ません~~
「え、えっと……」
「この方はギルドマスター。«傾国の四賢者»の一人、アンドリュー・ルクスさんだよ。アンドリューさん。起きてるんでしょう?新しい転生者がきましたよ?」
「む?バレておったか。はっはっは」
ツッコミ所が多すぎるし!なんだその若干心揺さぶる厨二ネームは。っていうか起きてたんかい。
ギルドマスター……アンドリューさんが目を開きこちらを見据える。
切れ長の青い目に見詰められ、少し怯えが先行する。こちとら平和な日本で暮らしていたんだ。怖いわ。
しかし即座に怯えた表情を消し、愛想笑いを張り付ける。上手く笑えているか解らないけれど、舐められるのはシャクだ。
「ほう?初対面の儂の前で笑えるとは。転生者にしては根性はあるようじゃな」
「そりゃどうも」
ニヤリと笑うアンドリューさんに釣られ私も本心からの笑いを返す。
「充分過ぎるくらいの素質は有るようじゃな。転生者は腰抜けが多いからのう」
「そうなんですかね」
まぁ確かにいきなり平和な世界から転生してこんなに威圧感出されたらビビるわな。
「まぁ、転生者に恒例的に送られる言葉じゃ。軽く聞いてくれ」
少し前傾になり、更に威圧するようにこちらを睨んでくる。アンドリューさんからまさに重力が発生しているかのように押されるが足を軽く叩いて振り払う。
「ギルドを、裏切るなよ。その場合、どんな所にいようと、どうしようと、お前を地獄へ叩き落とす。いいな」
「……おぉ、こわいこわい。しませんよー」
流石にちょっと怯んでしまった。しかし、なんとなくこれくらいのことを言わないといけないような気がしたんだ。
「ガハハハハ!!合格だ!おい、ミルト、登録してやれ。将来有望だぞ」
「はい。分かりました」
おっちゃんってミルトって名前だったんだね。
ミルトさんに連れられて部屋からでる。ドアを閉める時に「頑張れよ」ってアンドリューさんに声を掛けられたから軽く手を振っておく。
「あなた、凄いですね」
「ミオです。そうなんですか?」
「アンドリューさんの前で笑う人なんて初めて見ましたよ。大体の人は泣き出したり、……酷い人は洩らしたりするんですよ?」
おぉぅ、それは……。まぁ確かにすっごい怖かったのは怖かったが。
「では、これがギルドカードとなります。ランクF-からのスタートですね。ランクが一つ上がる毎に試験があるのでそのつもりで」
カウンターに戻った後ギルドカードを渡された。名前とランクと証明写真が書かれている。なんか運転免許みたいな感じ。
というかいつの間に写真とか撮ったんだ。
その後も色々とギルドについて聞いた。ランクはS+からF-まで。そのランクの依頼を五つ受ける事で+になり、次のランクの試験を受けられる、と。Bにもなると個人指名依頼もあるらしい。
「これは身分証代わりになります。亡くさないようにね」
「はぁ、わかりました」
とりあえず掲示板に貼ってある依頼を見て、てきとーなのを取ってくる。
『ライム3匹の討伐 期限なし 適性ランクF相当 報酬200M』
ライム……?果物の形をした魔物なのかな?
とりあえずおっちゃんの所へ持っていく。
「あ、ライムかい?初心者ならちょうどいい相手だしね」
そういいカウンターの下からぶっとい本を出してライムの書いてあるページを見せてくれる。
これは……なんていうか……ドラゴンなクエストに出てくるスライム……あぁ、そういうことね……。黄色くしただけとは手抜きだなぁ……。
まぁとにもかくにも依頼は受けた訳だし、異世界初戦闘、やりますかっ!




