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RE:BORN~日本列島再改造計画~  作者: ふゆはる


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13/29

第13話/工事開始

 神戸市の街中には、工事予定地の周辺に警備フェンスと案内板が設置され、工事開始の知らせが街全体に伝わっていた。山崎慎司は朝早く現場に到着し、川口舞や松岡健、宮本彩らとともに最終チェックを行う。


「本日の作業開始前の安全確認は完璧に済ませましたか?」山崎が声をかける。

「はい。資材搬入経路の確認、通行止め案内、工事車両の誘導まで全てシミュレーション済みです」と松岡健。

「景観と歴史建造物の保護は最優先。どの作業でも絶対に損傷を出さないよう指示してください」と川口舞。

「防災面のシミュレーションも済ませています。避難ルート、土砂崩れや地盤沈下の危険箇所は全て事前にマッピング済みです」と宮本彩。


 だが、工事開始と同時に、街の反応はすぐに表面化した。商店街の美咲は工事音に眉をひそめ、地元住民の田中祐樹や高齢者の中村誠も不安を口にする。


「また工事ですか…。駐車場も道路も狭くなるし、商売に影響が出ますよ」と美咲。

「安全面はちゃんと考えられているんだろうな…。でも、騒音や埃はどうしようもない」と田中。

「文化財の建物はどうなるんですか?再建や移設の話は進んでいますか?」と藤川悠子が問いかける。


 一方、建設会社の小林航やゼネコン技術主任の木村亮介は、工事の効率と予算管理に神経をとがらせる。


「今回の工程は遅れが許されない。資材の搬入スケジュール、作業員の配置は秒単位で調整する必要がある」と木村。

「市民の声を考慮しつつも、予定通り進めるしかない。何より安全第一だ」と小林。


 さらに不動産デベロッパーの中西優子や金融機関担当の佐藤健一は、再開発の経済的な波及効果を巡って会議を重ねる。


「この再開発で商業施設や住宅の価値は大幅に上がります。早期に完成させることが投資家への信頼にも繋がります」と中西。

「しかし、予算オーバーや反対派の訴訟で遅れれば、金融面でのリスクが大きくなる」と佐藤。


 反対派も黙ってはいなかった。黒田達也や安藤直樹、川上麻衣らは現場近くで抗議活動を続け、建設の開始を遅らせる戦略を立てる。


「工事の安全性だけじゃない。街の景観、歴史、環境も守らせる。市民の声を無視させるわけにはいかない」と黒田。

「今日の工事開始は許せない。記録をメディアに流し、全国に注目させよう」と川上。


 現場では、学生の山下光や市民相談窓口担当の宮崎晴香も情報整理に追われる。


「SNSでは工事開始直後の騒音や通行規制について投稿が急増しています。市民への説明も迅速に行わないと誤解が広がります」と宮崎。

「学生の間でもデモの呼びかけや情報共有が始まっている。早めに正確な情報を出すしかない」と山下。


 国会では、再改造化計画担当大臣の田島和樹や内閣官房副長官・木下啓太が進捗報告をまとめ、反対派議員の松尾正典や藤原智子に説明を重ねる。


「工事は計画通り安全に進んでおります。市民の意見も最大限反映しています」と田島大臣。

「それでも地域住民の不安は消えない」と藤原議員。

「反対意見も尊重していますが、老朽化インフラの更新は喫緊の課題です。防災面での遅れは取り返しがつきません」と木下副長官。


 神戸市長・田辺昭夫は現場との連絡を取りつつ、国会での説明にも関与し、街の安全と計画進行の両立に追われる。副市長・大島良平も現場視察と住民対応を繰り返す。


 こうして再改造計画は、工事開始前の緻密な折衝、現場管理、市民対応、国会との調整、そしてメディア対応の多層的な構造の中で進行する。街の景観や安全を守りながら、神戸は新たな都市像へ向かって動き出した。


 工事が始まってから数週間が経過し、神戸の街は日常の喧騒と建設現場の騒音が入り混じった異質な空気に包まれていた。重機のエンジン音、資材を搬入するトラックのクラクション、作業員たちの指示声が街に響き渡る。山崎慎司は現場監督として安全確保と工期の両立に気を配りながら、常に各関係者との連絡を欠かさなかった。


「振動の影響、昨日より大きくなっています。特に古い建物の多い地域は再確認を」松岡健が測定データを示しながら報告する。


 川口舞は景観や建物保護の観点から追加の指示を出す。

「重機の位置をずらして、振動を少しでも抑えてください。外壁や窓ガラスの被害は絶対に出せません」


 だが、現場周辺の住民たちの不満は日増しに強まっていた。美咲が率いる商店街の有志が現場前に集まり、抗議の声を上げる。


「毎朝この騒音ですよ!お客さんも来ない、商売にならない!」美咲の声には切実さがにじむ。

「工期が長すぎるんです。もう半年経っても、店の売上は激減しています」田中祐樹も加わる。


 高齢者代表の中村誠は、生活の影響を訴える。

「体に響く振動で眠れません。健康を害するのではないかと心配です」


 住民の声は反対派組織にも伝わり、黒田達也や安藤直樹、川上麻衣たちはメディアやSNSを通じて問題を全国的に拡散しようと動く。


「現場の被害を映像で記録して、全国に知らせるんだ。国や市の対応を圧迫する」川上麻衣が指示する。


 一方で工事関係者も懸命に対応する。小林航は建設会社の営業部長として、住民対応に追われる。

「工期は予定通りです。けれど、住民の理解も必要だ。誤解や不満が大きくなる前に説明会を開くしかない」


 木村亮介や中西優子、佐藤健一も、住民と建設業者の板挟みになりながら、慎重に情報を整理する。


「データや図面を提示して、工事の安全性と地域保護の対策をしっかり示さないと。説明不足でトラブルが起きれば投資も影響を受けます」中西優子が指摘する。


 学生の山下光や住民相談窓口担当の宮崎晴香はSNS上の情報拡散に対応しながら、住民からの問い合わせに追われる。

「SNSでは、工事による騒音や振動の投稿が増えています。デマや誤解も含まれているので、正確な情報を出す必要があります」宮崎が端末を操作しながら報告。

「大学生の間でもデモの呼びかけが広がっています。説明会や情報発信のタイミングが重要です」山下光も付け加える。


 国会では田島和樹大臣と木下啓太副長官が進捗状況を報告し、野党議員の松尾正典や藤原智子に説明を続ける。

「工事は安全に進めています。住民の意見も集約して、可能な限り対応しています」田島大臣。

「それでも住民の不安は消えません。なぜ説明会や住民参加の機会をもっと増やさないのですか?」藤原議員。

「遅れれば都市インフラの老朽化による災害リスクが増大します。安全と生活を天秤にかけるのは辛いですが、命に関わる問題です」木下副長官。


 神戸市長の田辺昭夫も、現場と市民、国の板挟みとなりながら街の安全と計画の進行を両立させるため奔走する。副市長・大島良平も、現場視察や住民相談、反対派との折衝に忙殺される。


 テレビや新聞、ウェブメディアでは報道の過熱が続く。森田香織や斉藤隆、小泉翔は、現場の騒音や住民の不満、工事進行の様子を連日報道する。各報道は、街の混乱をより大きく見せる傾向にあり、工事関係者たちはさらなる住民との対話や安全確認に追われる。


 ある日の現場では、住民代表と技術者たちが直接対話する場面もあった。

「ここに重機を置くと、古い建物が揺れるのでは?」藤川悠子(NPO代表)が地図を広げて指摘する。

「振動を測定し、重機の配置を変更しました。影響は最小限に抑えています」と山崎慎司が応答。

「でも、これだけの規模です。どうしても影響が出ますよね?」藤川。

「その場合は補償や追加対策も検討します。全てデータに基づいて行います」と山崎。


 工事進行と住民対応、政治家・官僚の監督、反対派の活動、メディアの過熱報道――複雑に絡み合う現実の中で、神戸の街は新しい都市としての再構築の道を歩み始めた。だが、その道の先には、工期延長や予算の増加、住民のさらなる反発など、予測できない困難が待ち受けていた。


 梅雨の季節が近づき、神戸の街は湿った空気に包まれていた。再改造計画の工事現場では、重機や資材の移動に伴う小規模な事故が徐々に報告され始めていた。


「昨日の地下工事で水漏れが発生しました。土砂が一部流出しています」松岡健が測量データと写真を示しながら報告する。


 川口舞は眉をひそめる。「このまま放置すると、周辺の古い建物や商店街に被害が出る可能性があります。早急に補強策を講じる必要があります」


 山崎慎司は現場に急行し、作業員たちに指示を飛ばす。

「土嚢と仮設排水を直ちに設置。安全柵も強化する。住民への通知も忘れずに!」


 その情報は瞬く間にメディアに伝わった。森田香織がテレビで報じる。

「神戸市で再開発工事中に水漏れ事故が発生。幸い大きな被害は報告されていませんが、住民からは不安の声が上がっています」


 ウェブメディアでも速報が流れ、SNSでは「神戸再開発危険」「安全管理に不安」のハッシュタグが拡散された。山下光ら若者たちも情報を共有し、街の緊張は増す一方だった。


 一方、国会では野党議員がこのニュースを材料に再追及を開始する。松尾正典は資料を手に、質問席から声を張り上げる。

「総理、この事故は計画の甘さを示すものではありませんか?住民の安全は確保されていますか?」

 高杉康之総理は冷静に応答する。

「小規模な事故は工事過程で避けられません。重要なのは迅速な対応と再発防止策です。現場の責任者も対応を進めています」


 藤原智子も口を開く。

「しかし、これまでにも騒音や振動被害が報告されており、住民の不安は増すばかりです。国と市はどのように信頼を取り戻すつもりですか?」

 田島和樹大臣は書類を示しながら答える。

「各地域で安全確認チームを増員し、住民との連絡窓口も24時間体制で稼働させます。被害の補償も迅速に行う予定です」


 神戸市内でも、住民と工事関係者の間で対立が激化した。美咲や藤川悠子が率いる市民団体は、現場前で抗議活動を展開。

「計画は理解しています。でも、被害が出るのは許せません!」美咲が声を上げる。

「安全対策は万全にしています。追加の補強も検討中です」山崎慎司が説明する。


 高齢者の中村誠も声を荒げる。

「私たちはこの街で長年暮らしてきたんです。工事で生活が脅かされるのは我慢できません!」


 一方で建設関係者たちは、作業員と住民の板挟みに苦慮していた。小林航は部下に指示を飛ばす。

「住民への対応と工事進行の両立だ。焦らずに、安全を最優先に」


 木村亮介や中西優子も、工事スケジュールの見直しや追加予算の手配を急ぐ。佐藤健一は金融面での調整を行い、資金不足による遅延を回避する。


 メディアは過熱報道を続け、街の雰囲気は緊張感に包まれる。斉藤隆は新聞で「神戸再開発、住民の声と工事現場の混乱」と見出しを打ち、紙面には被害の写真や住民の抗議の様子を掲載。森田香織は夜のニュースで映像を流し、国民の関心はピークに達していた。


 田辺昭夫市長と大島良平副市長は、市民の不安を和らげつつ工事を円滑に進めるため奔走。説明会の再開催や住民相談の強化を決定する。


「被害が拡大すれば計画そのものが危ぶまれます。全力で対応してください」田辺市長が強く指示する。


「了解です。安全と情報公開を最優先にします」山崎慎司が応答。


 夜、現場を巡回する山崎は重機の稼働状況や資材の安全確認を終え、街を見渡す。夜景に照らされた工事現場と住宅街が並ぶ光景は、計画の巨大さと市民生活への影響を象徴していた。


「まだ始まったばかりだ…ここから先が本当の正念場だ」山崎は独り呟く。


 この初期段階の事故と混乱により、国会での追及はさらに厳しさを増し、住民と関係者の緊張も高まった。神戸の街は、都市再改造化計画の試練を体現する舞台となっていた。


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