独占反罪・・・思い込みの正義は不要・・・
向上に梱包テープを引き締める乾いた音が響く。
その音を切り裂くように声がささる。
「辰子さん、それちがってるじゃないの!」
胸を張る山極 艶子。まるで、監督責任者のつもりで発言してきた。
「規格通りじゃなきゃ、出荷時・荷下ろし・納品先に迷惑がかかるのは知ってるでしょ、手順書確認してる?」
場が氷結する。
だが、手元辰子はすぐに悟った。一昨日、手順は変更されていた。加藤 渚が全員に周知し、辰子も確認済み。完全な艶子一人の思い込みだった。
「・・・すみません」
辰子は小さく頭を下げ、艶子は満足な表情を見せ、誇らしげに言う。
「不良品を出さずにすんだわね、私のおかげね・・・」
それを肯定する人物など一人もいない。視線は冷ややかだ。
方敷 由美は肩をすくめ、六花 和子はため息を呑み、岩田 ちなみは無言で作業に戻る。
かつて服部 香織は艶子に反論したことが、あった。
しかし、艶子は絶対に折れず、香織は疲れ果て、退職を選んだ。みんなに慕われていたのに・・・・・
以来誰も逆らうことなく、ただ、沈黙しか方法がない。
辰子は胸の奥でひっそりと笑った。
謝ることで心は透き通る。謝れる人間の方が勝っている。
勝つ価値が高いのだ。
『グランド勝利』
誇らしげに胸を張る艶子の正義は、誰も必要としていない。
誰も認めてない。飾りの正義だ。不要の正義。
時には罪となり、当事者や周囲の心を侵害するのである。香織は、その一人だ。
この物語は、日常の些細な場面に潜む「正義の独占」を描きました。
人は誰しも、正しいと思うことがあります。しかし、その正しさを独り占めし、他者の声を傾けず、排除して、思いがけない罪が生まれることがあるのです。
表向きは秩序やルールを守っていると主張する行為に見えてもその裏では、当事者とその周囲の心を侵害する、これこそが「独占反罪」
謝ることで得られる勝利は壮大。弱さではなく、強さの象徴です。
一方で正義を振りかざし独占することの危うさを、是非留めてほしいと思います。
「思い込みの正義」についても立ち止まり、考えるきっかけになれば、幸いです。
最後まで拝読ありがとうございます。感謝申し上げ奉ります。
じゅラン 椿