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【ショートショート】白髪

作者: nasuo.sino

鏡の無い世界に行きたい。

最近、そんなことを思うようになった。

朝起きて、白髪を見つけてしまうことに

虚しさを感じる。


顔のハリも無くなっていき、

ニキビが治りづらくなっている。

どれだけ可愛い髪形やメイクが出来ても、

最後に現実の顔と向き合うことになる。


彼此十年の付き合いになるが、

彼の口から「結婚」の言葉は出てこない。

特に不満があるわけでもなく、

むしろ怖いくらい安定していて、

関係も悪くない。

一つ、足りないことがあるとすれば

「結婚」だ。


結婚すれば、必ず幸せが

用意されてるわけでは無いことは

分かっている。

友達のストーリーで

結婚式の様子を見ると、

羨ましい気持ちと焦りが混同してくる。


私から結婚をせがむと

めんどくさい女と思われてしまいそうで、

言葉にできない。

だからと言って、別れようとは思わない。

十年の月日をを無駄にはしたくない。


彼はいつも通り、

私の誕生日を祝ってくれる。

それは、いつしか義務的に

感じてしまっている。

彼はそんなことを思っていない

かもしれないが、

私が彼を祝う時はそう感じてしまう。


誕生日プレゼントを考えるのも

一苦労だ。

元から彼は、物欲がないタイプの人間。

付き合い初めは、会話の中で探ったり、

それでも見つからなければ、

私が身につけて欲しいアクセサリーなどを

プレゼントした。


今は、考える事が退屈になってしまい、

ギフトカード渡したり、

酷い時は、現金をそのまま渡している。

それでも彼は、毎年丁寧に旅行のプランまで

考えてくれる。


私はそんな彼に対して、

後ろめたさや申し訳なさを

感じることもなくなってしまった。


今年で頭の数字が繰り上がる。

彼はこれに何の違和感も

感じていないのだろう。

薄暗い部屋で朧げに

バースデーケーキが輝く。


今年は幸せが寂しさに負けてしまった。

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