死神が忍び寄る 番外編その4、5、6
以前14年間バーを経営していた。
常連になったお客さんの中には
とんでもないエピソードを持つひとが
何人かいた。
中には不死身??なひとも。
そしてスイミングコーチ時代には
これまたもうこれは映画か小説か?
と思える信じがたい出来事が、、、。
「不死身??」シリーズ最終回。
こんなワケわからん連載やけど
興味を持って読んでくれてるひとが
いるようですごくうれしいです。
番外編その4
当時30歳くらいだった塗装業のMさんと
Yさんは店の常連で、
いろんな興味深い話を聴かせてくれた。
二人はよくマンションの現場の
高いところに板を渡した上で
壁の塗装作業をしていた。
部外者としてはちょっと考えられないけど
なんと「命綱なし」。
ええっ? 風が強かったりで
もしバランスを崩したら、、、?
最初は当然ながらすごく怖いけど、
順応というのはオソロシイもので
毎日そこで仕事をしていると自分が今
そんな危険な場所にいるということを
ほとんど意識しなくなってくるらしい。
地上30mで幅わずか数10センチの足場の上を
両手にペンキ缶を持って走って移動したり。
いちいち下に降りるのが面倒くさくなって、
しまいには弁当もそこで食べて
驚くことには食べたあとそのまま
昼寝もしていたというのだ。
ある時Mさんは足場で移動していて
バランスを崩してしまった。
とっさに両手に持ったペンキ缶を放り出して
足場の板にしがみついてぶら下がって
無事だった。
這い上がって下を見ると駐車している車が
ペンキまみれになっていた。
二人の話をハラハラしながら聴いていた俺は
どうしても気になることを訊いてみた。
「あのお〜、
落ちたひとっていないんですか?」
「いますよ。
あのオッチャンの時は
もう爆笑やったよなっ!」
Mさんが愉快そうにYさんに言った。
(ば、爆笑???)
オッチャンが落ちた!!!
慌てて下を覗くと、ちょ〜〜〜ど
運よくそこにあったセメントに
混ぜるための砂の山に足から
スッポリ首まで真っ直ぐに突き刺さって
オッチャンはまったく無傷だった。
「花壇にオッチャンが咲いてるみたいで
ほんまにケッサクでしたよ〜。」
「マンガみたいやったよなあ。
ワハハハハ!!!」
(こ、怖すぎて俺は笑えない、、、。)
「ボクも落ちましたよ。」
ヨシケイさんがサラッと言った。
「ええ〜〜〜っ!!!」
番外編その5
「うわっっ! しまったあ!!!」
9階の足場の板から転落。
各階に同じ足場が設置されている。
Yさんは8階の板にしがみつこうとしたが
バイーーーン!と両腕をはじかれる。
7階でも同じく。
6階、5階、4階、、、。
すごい衝撃でどうしても板を
掴むことができない。
ヤバいヤバいヤバいーーーっ!!!
3階の板で跳ね返されて建物の中に
転がり込む。
ゴロゴロゴローーーっ!
「打撲でもう全身がアザだらけで
めっちゃ痛くて3日間くらい
動けませんでしたわ〜。」
番外編その6
高校の体育科、保健科の講師を辞めて
スイミングコーチになるとすぐに
驚く話を聞いた。
あの日航機墜落事故でこの会社の社長は
亡くなっていたのだった。
それだけでもショックなことなのに
この話はこれだけでは終わらない。
社長と一緒にこの飛行機に乗るはずだった
部長はなんと急用ができて次の便に変更して
助かったのだ。
エネルギーに溢れる部長を見ていると
不思議と
(このひとならありうる話やなあ。)
と感じるのだった。
正社員として2年勤めて退社した俺は
初の海外旅行としてひとりで1ヶ月近く
アメリカ周遊をして、
帰国後カルチャーショックを受けて
アメリカンバーを新装開業。
数年後に店に飲みに来た後輩から
信じられない事実を知らされた。
あの日航機墜落事故を回避した部長は
マンション5階の自宅の窓を身を乗り出して
拭いていて転落して、
両脚を骨折したものの助かった。
そして回復したあと、
まさかもう一度同じ窓を拭いていて再び転落。
今度はついに亡くなったのだった。
衝撃、、、。
何回もほんのちょっと違っていたら
もしかしたら死んでたかもしれない経験を持つ
自分としては、運命という不思議について
時折想いを巡らせてしまうのです。
アナタは背後に死神の視線を感じたことは
ありませんか??
さて、「不死身??」なオハナシの数々、
お楽しみいただけましたでしょうか?
次回からは「マニアックなレオ」シリーズを
連載していきますよ〜。
「マニアック」とは奇異か?
それとも個性か?