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呪いの館で人形に変えられました。その姿で館を永遠にさまようがいいと言われたので快適な豪邸生活を目指そうと思います  作者: 鈴木空論
第2部 第6章 決着

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第77話 騒動の後

「んん……」


 目を覚ましたセシルが徐にまぶたを上げると、見覚えのある部屋の中だった。

 呪いの館の執務室のソファ。

 セシルが魔力を回復させるための専用の寝床だ。


 のっそりと上半身を起こし、セシルは室内を見回した。

 特に代わり映えしないいつも通りの室内。

 しかしセシルは違和感を覚えた。

 何だろう。急いで確かめないといけない事があるような気がするのだが……。


 ぼんやりと考えていると、壁からにゅっと何かが突き出して来た。

 半透明な白い顔。

 ポルターガイスト三兄弟の末っ子、イストだった。


「なんだイストか。おはよう」

「………」


 イストは普段の騒々しさは影を潜め、ただじっとセシルを見つめていた。

 ポカンと口を開け、その目には驚きがありありと浮かんでいる。

 まるでお化けにでも出くわしたかのような顔だった。

 セシルは首を傾げた。


「どうかしたのか? というか前にも言っただろ。用があるなら壁抜けせずに扉から入って来いって――」

「わーっ!!」


 イストは唐突に大声を上げた。

 それから顔を引っ込め、ワーワーと叫び声を上げながら廊下を遠ざかっていく。

 セシルは呆気に取られた。


「……なんなんだ、一体」


 すると間もなくバタバタと複数の足音が近付いてきた。

 そして何やら慌てた様子の話し声も聞こえる。


「セシルが起きたって本当なの?」

「本当だよ! わたし見たもん! おはようって言った!」

「とにかく部屋へ急ぐぞ!」


 間もなく執務室の扉が勢いよく開いた。

 やって来たのはポルターガイスト三兄弟と紐使いのウェンドリン、それに小人のリンゲン。

 あとは何故かオルレアの上司のサミーもいる。

 どの顔も真剣な表情をしているのでセシルは目を点にした。


「どうしたんだ皆、そんな血相変えて」

「どうしたもこうしたもあるか、この馬鹿もんが!」


 リンゲンが高く飛び上がり、げんこつでセシルの頭を叩いた。

 身体は小さいままだが力はあるし硬いので見た目よりかなり痛い。


「い、いきなり何するんだ!」

「ふん。痛いと感じられるだけ幸運だと思え」

「何の話だよ」


 セシルが頭を擦りながら抗議するとウェンドリンが言った。


「あなた、あれから三日も眠り続けていたのよ」

「え、そうなの?」

「そうよ。マリアンデールが言うには燻製肉を一度に食べ過ぎた反動だろうという話だったけど……何があったか、ちゃんと思い出せる?」


 ウェンドリンは不安そうにセシルの顔を覗き込む。

 何か後遺症でも残っているんじゃないか、と心配しているようだった。


 だがセシルの方はウェンドリンの言葉で一気に目が覚めていた。

 同時に脳味噌が凄い勢いでを始め、眠りにつく前の記憶を呼び起こす。


 教会を抜け出す間際にケテルに遭遇し、地獄の穴を開けられたこと。

 『この世ならざる者』となった『ケテル』を倒すために燻製肉を一気食いしてマリアンデールを複製召喚したこと。


 そして――『魂の交換』が発動したこと。


「教会はどうなったんだ!? ティッ……オルレアさんは? あの人は大丈夫なのか!?」


 セシルはバネのように立ち上がり、必死に尋ねた。

 オルレアはセシルと一緒に地獄の穴に落ちたのだ。

 謎肉が対応してくれたのまでは覚えているが、意識が戻ったか確認する前にセシルは眠ってしまった。

 そしてここにはサミーはいるのにオルレアの姿はない。


 まさか……。

 最悪の事態がセシルの脳裏を過ぎる。

 だが、その時三兄弟の真ん中のタガーがポツリと言った。


「……あのお姉ちゃんなら寝てる」

「そうなのか?」

「うん。爺ちゃんが見てくれてるよ」


 三兄弟の一番上のポールが答える。

 ウェンドリンが言った。


「その辺は話すよりも自分で見て貰った方が早いでしょうね。その様子なら問題なく動けそうだし、これから会いに行きましょうか」



 ※ ※ ※



 ウェンドリンの案内で訪れたのは客室だった。

 セシルがオルレアと入れ替わった際にセシルが寝泊まりしていた部屋だ。


「これは皆さんお揃いで。……おや、セシルさんもいらっしゃいましたか。良かった、お目覚めになられたのですね」

「ごめんなさいねアルベルトさん、大勢で押し掛けて。オルレアさんは?」

「特にお変わりありませんよ」


 オルレアはベッドで静かに眠っていた。

 起きる気配は無さそうだったが、前に見た時よりは表情も柔らかく血色も良い。


「アルベルトさんが看病してくれてたのか」

「そんな大袈裟なものではありませんよ」


 アルベルトはニコリとほほ笑む。

 館の執事の服から生み出された怪異なのでこういった世話をする事には慣れているのだろう。

 ウェンドリンが言った。


「三日前、礼拝堂でセシルが眠って間もなくの事だったんだけど、マリアンデールがやって来てオルレアさんの状態を診てくれたの。とりあえず命に別状はないらしいわ」

「本当に?」

「ええ。マリアンデールも不思議がっていたんだけど、どういう訳かオルレアさん、瘴気に耐性を持っていたみたいでね。衰弱は酷かったけれど逆に言えば問題はそれだけだから、体力が回復すれば意識も戻るだろうと言っていたわ」

「瘴気に耐性って……人間なのに何で?」


 セシルは怪訝な顔をした。

 まさか自分が原因だなどとは露ほども思わない。

 ウェンドリンたちも理由は知らないので首を横に振る。


「それについてはオルレアさんが目覚めてから本人に聞いてみるしかないわね」

「そうなのか……でも無事でよかった」


 セシルはホッと息を付いた。

 だがふと思い出したように周囲を見回す。


「そういえばマリアンデールさんは?」

「あの子なら別の部屋で寝てるわ。というかベッドにぐるぐる巻きにして動けなくしてある」

「どうしてそんな事を」


 するとリンゲンが腕組みしながら鼻を鳴らした。


「どうしても糞も無いわい。疲労でまともに歩けなくなるほど動き回った癖に別の仕事に行こうとしたからな。捕まえて無理やり休ませとるんだ」

「……前にもあったわよね、こんな事」


 ウェンドリンが頬に手を当てて溜息を付き、アルベルトが苦笑いする。

 セシルは尋ねた。


「オレが眠った後も何かあったのか?」

「ええ。それが――」


 ウェンドリンは答えようとした。

 しかしそこへリンゲンが口を挟んだ。


「まあ待て。いつまでも病人の横でうるさくするのは宜しくなかろう。場所を変えたほうが良いんじゃないか?」

「確かにそうね」


 それじゃ続きは他の場所でしましょうか。

 オルレアのことは引き続きアルベルトにお願いし、一同は客室を後にした。

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