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呪いの館で人形に変えられました。その姿で館を永遠にさまようがいいと言われたので快適な豪邸生活を目指そうと思います  作者: 鈴木空論
第5章 決戦、ニセ領主

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第39話 不可解な訪問者

 マリアンデールはそれから三日後に解放された。

 最初の日こそ「お願いだから仕事させて……」とこの世の終わりのような顔をしていたが、一晩ぐっすり眠ったら憑き物でも落ちたようなスッキリした顔になった。

 それからは館の中をのんびり見て回ったり怪異たちと紅茶を飲みながら談笑したりと存分に休暇を満喫し、翌日晴れやかな表情で帰って行った。


「いやー、たまには気分転換も良いものね」


 今後は定期的にお休みを取るようにしようかしら、などと言っていたのだが、しばらく経ってから別件で館に現れたマリアンデールは目に以前よりさらに酷いくまを作り、げっそりと衰えていた。

 聞けば、休みを取ろうとは思ったものの残りの仕事が気になって休めなかったのだという。


 やはり一度身に付いた習慣というのはなかなか抜けないものなのか。

 再びぐるぐる巻き状態で客室に運ばれていくマリアンデールを見送りながらセシルはそんな事を考えた。



 ※ ※ ※



 その後。


「よいしょ、と」


 中庭の花壇の一角。

 幽霊三兄弟に見守られる中、作業服に身を包んだセシルは枯れかけの植物を思い切り引き抜いた。

 大量に付いてきた土を軽く揺すって落とすと、根に混じって大きな丸いものが複数ぶら下がっている。

 芋である。


「わあ、本当に実ってる!」

「……すごい」

「お芋、お芋!」


 三人が歓声を上げる。

 セシルも籠に芋を入れて満足そうに頷いた。


「これでようやく肉以外の物も食えるようになりそうだな。……よし、じゃあこんな感じで他の苗も引き抜いてくれ」

「わかった!」


 四人はわいわいと収穫を始めた。


 偽ベレン襲撃の一件以降、館ではのんびりとした日が続いていた。

 正直なところを言えば、根本的な部分は何も解決していない。

 館の下には依然として地獄への入り口が存在しているし、ベレンの娘ロレッタは未だに不安定な状態のまま眠り続けている。


 しかし封印の扉の強化が完了し、それ以降は『この世ならざる者』が出現することはほとんどなくなった。また長年の憂慮の種だった偽ベレンとの決着も無事付けることが出来た。

 そのため怪異たちはひとまず肩の荷が降りたようで、現在は前と比べると気楽というか、各々好きなように過ごしているようだった。


 まあ、好きなように過ごしているのはセシルも同様。

 セシルは相変わらず快適な生活を目指してあれやこれやと奮闘していた。

 この間ついに燻製室が完成したし、今回はこうして肉以外の食材の確保に成功した。

 アルベルトにはあの後も定期的に稽古をつけてもらっている。

 それから、最近はウェンドリンやリンゲンなどから文字の読み書きも習い始めた。


 まだまだ作りたいこと、覚えたいものが山ほどある。

 セシルの生活は毎日が充実していたし、ゆっくりではあるが着実に変わって来ていた。


 だが、変わらないところもある。


「――ひゃうっ!?」


 苗を引き抜こうとしたセシルは突然声を上げて身を縮めた。

 不意に全身をビリっとする感覚が駆け抜けたのだ。


「あれ、またお客さんかあ」

「……まだお芋終わってないのに」

「ぶーぶー」


 三兄弟が口々に不満を漏らす。

 館の外に張られた結界が反応したのだ。

 恐らくまた人間が館へ忍び込みに来たのだろう。

 地下の仕事は減ったのだが、こちらは全然減らないどころか逆に最近増えているような気がする。


「仕方ない、芋掘りは一度止めてエントランス行くか」


 セシルは芋を籠に放り込みながら言った。

 確か今は他の怪異も全員起きていたはずだし、自分たちまでわざわざ行く必要はない気もした。

 しかし追い立てられた人間がこちらへ逃げてくることも考えられる。

 恐怖の呪いの館、という噂を流しているのに農作業の現場を見られるのはさすがに宜しくない。


「じゃあオレは部屋で着替えてから行くからお前らは先に行っててくれ」


 芋の入った籠を花壇の隅に置きながらセシルは言った。

 三兄弟はまだ不服そうだったがしぶしぶ頷いた。


「わかった」

「……さっさと追い出す」

「セシルも早く来てね!」

「ああ」


 セシルは泥を落とすと自分の部屋へ戻っていつもの赤いドレスに着替えた。

 鏡を覗き込んで軽く髪を整え、再び部屋を飛び出す。

 そして人間がいるであろうエントランスへと急いでいたが――その途中で、あれ? と思った。


 先程ビリっとしてから随分経っているのだが、人間の叫び声が聞こえてこない。

 もう館の中へ入ってきているはずだし、いつもならもう他の怪異の誰かに驚かされていてもおかしくないはずなのだが……。


 そんな事を考えているうちにセシルはエントランスに辿り着いた。

 玄関のすぐ近く二人の人間がいるのが見えた。

 そして、他の怪異たちはと言うと――何故か知らないが、全員物陰に隠れてじっと訪問者の様子を窺っているようだった。

 驚かすタイミングを見計らっている、という感じでもない。


「何してるんだ?」


 セシルは人間たちに気付かれないようこっそりと裏を回り、怪異たちに声を掛けた。

 するとウェンドリンが振り返った。


「それが、なんだかいつもと毛色が違う人たちなのよ」

「………?」


 セシルは物陰から頭を出し、今回やって来た人間たちを改めて確認した。

 それは男と女の二人組だった。

 男は小太りな中年の男。女は逆に痩せ気味な少女。

 どちらも手にランタンを持ち、不安そうに辺りの様子を窺っている。


 男と女、それに大人と子供、という組み合わせは別に珍しくはない。

 また、この館にやって来た奴は大抵最初ああいう行動を取るから、そこも別にどうでもいい。


 妙なのは二人の格好だった。


 この館へやって来るのは大抵は物盗り目的の浮浪者や冒険者だ。

 だから一目見ればすぐにわかる。

 ところが今回の二人はどうやらそういった人種ではないようだった。


 なにしろ、二人が着ているのは修道服。

 教会という施設に属する人間が着る服だ。

 教会の人間はたまに貧民街で炊き出しなどをしている。

 セシルも何度かそれの世話になったことがあるのであの服には見覚えがあった。


 これまでこの館にこういった種類の人間がやって来たことは無かった。

 一体何をしに来たのだろう。

 見たところ、金銭目的といった感じでもなさそうだが……。

 セシルは首を傾げた。




 次回より新展開、『教会編』。

以上で第一部は終了です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] とりあえず、マリアンデールの社畜脳が酷いから週休二日制!!と念を込めたサービス(おもてなし)で脱社畜になろう…… もしくは秘書というか部下を何人か雇え……疲労でポテンシャル発揮とか
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