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呪いの館で人形に変えられました。その姿で館を永遠にさまようがいいと言われたので快適な豪邸生活を目指そうと思います  作者: 鈴木空論
第5章 決戦、ニセ領主

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第33話 作業前の事前確認

 マリアンデールが杖をくるりと回して言った。


「さて、それじゃ用意はいいかしら」


 地下の広間。

 封印の扉を取り囲むようにして、マリアンデールと怪異たちが並び立っていた。

 ただし怪異は全員ではなく、アルベルト、リンゲン、ウェンドリンの三人だけ。


 他の怪異はロレッタの部屋で待機している。

 ポルターガイストの三兄弟は万が一の際にロレッタを守るための保険。

 セシルと謎肉についてはそもそも戦闘向きではない、とマリアンデールが判断したためだった。


「私たちはいつ始めてもらっても問題ないけれど……マリアンデール、あなたは大丈夫なの?」


 ウェンドリンが心配そうに言った。

 マリアンデールは怪訝な顔をする。


「私?」

「確かに、随分お疲れのように見えますね」

「ちゃんと寝てるのか?」


 アルベルトとリンゲンも似たようなことを言う。

 三人が思わずそんな言葉を掛けたくなるほどマリアンデールは前回会った時よりもさらに酷い有様になっていた。

 全体的にやつれているし、目元には酷い隈が出来てしまっている。

 ただ本人はそこまでの自覚は無かったらしい。一瞬きまりが悪いそうな顔をした後、ごまかすように苦笑いした。


「ええと……私そんな酷い顔してる?」

「ああ、かなりな」

「はっきり言うわねえ。……まあ確かにここ数日まともに眠れてないから、きついと言えばきついんだけど」

「なら一度休んでからの方がいいんじゃない?


 ウェンドリンが言うが、マリアンデールは軽く手を振ってそれを拒否した。


「平気平気。連日の徹夜なんて今まで何度も経験してるし、さっき話した通り私の役目は呪文の詠唱だけだからね。その程度の体力は十分あるわよ」

「本当に?」

「ええ。休養についてはこの目の前の厄介事が片付いたら存分に取らせてもらうつもりだしね。そのためにもまずはさっさと取り掛からないと」


 マリアンデールは冗談めかして言ったが、その声にはどこか焦りが感じられた。

 アルベルトが尋ねる。


「何か急がなくてはならない理由があるのですか?」

「そういう訳ではないんだけど……ただ、どうも気持ちが悪くてね」

「気持ちが悪い?」

「なんとなくだけど嫌な予感がするの」


 それは別に魔女としての能力とかではなく、単なる勘だった。

 だが今までの経験上、自分のこういう予感は嫌なことに限って大抵当たってしまう。

 だからこそマリアンデールは寝る間も惜しんで他の現場の用事を大急ぎで片付けてきたのである。


 それに、今回の封印の損耗の件は考えれば考えるほど不可解な点が多い。

 自身の勘を差し引いても、放っておいたらさらに何か良くないことが起こりそうな気がしてならないのだ。


 リンゲンが腕組みをしながら聞いた。


「不可解な点とはなんだ?」

「まずは封印を破壊しようとしている犯人について」


 状況から考えて……と言っても材料が足りないので殆どただの推測になるが、封印を壊そうとしていているのは恐らく例のベレンの姿の個体だろう。

 だがそもそも、何故あの個体は封印の仕様を知っているのか。


 過去に会った時の印象では、ベレンを喰ったことであの個体は多少の知能は獲得しているようだった。

 だが、封印に関する知識はベレンから得た物では無いはずだ。

 ベレンはこの封印の仕様はおろか、魔術の基礎知識すら持っていなかったはずなのだから。

 それならあの個体は一体どこで魔術の知識を得たのか?


「………」


 これについては三人も似たような疑問を抱いていたらしい。

 マリアンデールは続けた。


「そしてそれ以上に不可解なのは、封印の耐久性が限界に近いのを犯人がわざわざこちらに知らせるような真似をしてきたこと」

「……なに?」

「どういう事?」


 リンゲンとウェンドリンが不審そうに眉を寄せる。

 だがアルベルトだけは納得したようだった。


「やはりあれはそういうことだったのですか」

「あ、やっぱりアルベルトは気付いてたのね」

「そうですね。ずっとこの扉の見張りを任されていましたので」

「ごめんなさい、説明してもらっていい?」


 ウェンドリンが尋ねた。

 マリアンデールは杖で封印の扉を指した。


「この封印って魔術を組み上げて作り上げた言わば幻みたいなものだから、ダメージを与えても普通は破片なんて残らないのよ。術式を崩さずに分離させれば破片という形で残すことが出来るけれど、普通に攻撃するよりも余程手間が掛かってしまうの」

「耐久が限界に近付いたから破片が舞ったという訳ではなかったのか」

「そうね。だから本当ならこちらが全く気付かないうちに封印を完全に破壊することだって出来たはずなの」

「なるほど。すると壊れる間際になってからわざと証拠となる破片を残したのか。確かに意味がわからんな。こちらに対策を取られるだけで何も向こうのメリットが感じられん」


 リンゲンが唸った。

 マリアンデールは肩をすくめた。


「単にこちらの不安や焦りを煽るため、みたいな理由であれば別に構わないのだけどね。ちょっとそこまで楽観視するつもりにはなれなくて。何か狙いがあるような気がして気味が悪いの。だからこちらも出来る限り早く手を打っておきたくて」

「だから急いでいたのね」


 ウェンドリンが言った。

 マリアンデールは申し訳なさそうに眉尻を下げた。


「悪いわね、土壇場になってからこんな事を話したりして。本当はもっと前に言うべきだったんだけど、バタバタしてたせいで機会がなかったものだから」


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