待ち時間の使い方
「じゃあ金曜にまた連絡するから」
別れ際にそう言われたのが五日前。この五日間がとても長く感じた。普段から何事も頓着が無い僕だけど、今度ばかりは心が躍った。こんな純粋な気持ちになれたのは、それこそ何年振りだろうか。この歳になり始めると、変な思考が混じってしまって、邪な気持ちが増えてしまっている。だからこそ、こんな気持ちになれたこの機会を、とことん楽しみたいと思っていた。そして金曜、昨日だ。
「明日の十時ぐらいにまた同じトコ来てね」
そうメッセージが届いた。ちなみに午後六時過ぎ。こんな時間に興奮するのは疲れるが、とても嬉しかった。メッセージを貰って、改めてあの日が夢で無いと実感出来た。それだけでも嬉しいのに。そんなだから今日は早く起きてしまった。六時前に目が覚めた。普段は七時ぐらいまで寝てるから、こうなるのは珍しかった。遠足当日の子供か、と一人ツッコミするぐらいには興奮していた。
そんな興奮をどうにか隠しながらと思いつつ一切隠せず、多分ずっとにんまりしていた。空が変な目で見たので気が付いた。まあそんなこんなで十時、の三十分前。公園のあのベンチに僕は鎮座している。まあ、自分でも分かってる。早すぎだろ。もちろん分かってる。だけど待てなかった。いや待つんだけど。ごめん、僕馬鹿なの。ガキなの。頭悪いの。スマホでちらちら時間を気にして、そわそわして、ぼーっと青い空を見上げて、そしてまた時間を気にする。こんなループを何回も何十回も繰り返した。待ち遠しい。本当に待ち遠しい。
「うわ、もういる」
後日知った事だが、その声は!と犬と思う程の反応をして振り返ったらしい。
「よっ」
「こんにちは」
「早いな、まだ十五分前だぞ?」
「いや~、興奮しちゃって」
「はは、元気だな。俺は休日出勤で元気が無いよ」
「それは、お疲れ様です」
おもむろに落胆する感じが、ちょっとじわじわくる。
「まあいいや、さっさと行こうか」
「はい!」
五日振りの、捜三M室。そこは前とほとんど変わっていなくて、不思議とホッとする空間のままだった。ただ人が前より少なくて、その感じが少し薄い。まあ土曜だし、いないのが普通か。
「まあ当然早く着いたけど、これから会議室で君らに説明会だから、先にトイレ行っといで」
「分かりました」
という流れが十分前。会議まで二十分前。会議室で五分。暇だ。
「早過ぎたね」
「うん」
「何する?」
「何しましょうね」
自分は社会人がこういった会議とかでは、かなり早くに準備とかをするものだと思っていた。だが、実際はそんな事は無かったみたいだ。大人も意外とだらしないんだな。
「まあいつもはこんなんじゃないんだけどね」
「何が?」
「集まり」
「人の?」
「人の」
「そうなんだ」
「そうなの」
「いつもは?」
「どうだったかな。十分前ぐらい?を過ぎたら大体来る」
「あ、最低限は守るんだ」
「まあ最低限はね。守らない人もいるけど」
遅刻とかは普通にあるんだ。大人も子供も同じなんだな。
「まあそこまでヒドイ人はそんなにだから」
「そこもなんだ」
「そこも?」
「いやウチのクラスにもそういう人何人かいるから」
「ああ…」




