特殊能力を持つ一般的な僕が気付いたら家族と戦う事になりそう。
まず簡単に何故兄の空が一番の脅威であり、警戒すべき相手なのかを解説しよう。普段の行動パターンの大体は知っている。基本火・木・土の日中はバイト、木以外の日は塾、もとい絵画教室に行っている。帰宅後、つまり夕方からにかけては基本自室に篭りきって絵を描いているか受験勉強をしている。ここまでなら全くもって問題が無いように思えるだろう。だが問題は能力と突発的な行動にある。兄は、自分が捜しているものの場所が分かるというとんでもない能力を持っている。現代社会において、この能力が欲しい人間が何人いることか。だが兄は自分にはこの能力をペン探しや辞書を引くことぐらいにしか使ってない。能力の対象は曰く、数ミリサイズの物から全長634メートルある東京スカイツリーの様な物の場所まで分かり、物体だけでなく電子的なデータまで広く対応してるとのこと。つまりこの世の全ての検索出来るということらしい。そう、人・ペット・失くしもの・落とし物探しにおいては無敵という事だ。この能力の力を使って探偵事務所でバイトをしている。あまりにも優秀すぎるこの能力で、バイト先を日本中、いや世界中から依頼人が殺到する(探し物限定で)世界一の探偵事務所に変えてしまった。一応芸大志望なので、就職はしないらしいが、バイトなのに副所長並みの権力を持ってるとか。しかもたまに警察からも依頼されるらしく、感謝状を何十枚と持っている。結構世間的には有名人で、我が家の建築費を半分出してるぐらいには稼いでいる。正直言って能力に関してはとんでもないから、能力そっち方面に関しては対策のしようが無い。まだ能力が、(兄曰く)対象の名前、写真などの明確な情報、"弟の明が隠している物"みたいにアバウトなものでは発動出来ないらしく、これが現状唯一の救いとなっている。だが、この能力を掛け合わせて行う突発的な行動が一番の脅威となる。兄は結構な頻度で僕の部屋に僕の所有物をデッサンさせてくれと押しかけてくる。これが本当にいつやって来るか分からない。日が昇る前に来て叩き起こされる事もあれば、寝ようとしてるときに大音声でやって来て無理やり目を覚まさせられる事もある。それぐらい突拍子も無く押しかけてくるので、予測が難しい。普段はあまり断らないから、変に断れば怪しまれてしまう。しかも質の悪いことに、能力を使う。だから無いという嘘が一切通じないのだ。故に一番に警戒をしなければいけない。兄の部屋は隣室だから数秒は誤魔化しが効く。だが故に兄の行動も早い。やはりこの三日間必要最低限以外はクローゼットを開けないようにするのが最適解だろう。もうノータッチ。うん、それが良い。一番確実だからな。まあ弱みをいくつか握ってるし、何とかなるでしょ。
朝、午前六時三十七分、僕は目が覚めた。幸運な事に昨晩兄は僕の自室に押し掛けなかった。とりあえずは安心しても良いだろう。だが今日からが鬼門となる。今日は祝日、つまり、三連休。そう、両親も兄も家にいる。発見のリスクが跳ね上がるという訳だ。しかも悪運が働いたのか、兄の進学塾での講義も無いし、バイトも明日は無い。地獄の三連休という訳だ。更にはこの三連休に我が家は一切の予定が無い。まぁあるにはあるが、買い物ぐらいしか無い。まだ自室に篭って見張れる分良いのかもしれないが、発見のリスクは普段に比べ、圧倒的に高いという訳だ。さて、どうしたものか。正直言って、超絶キツイ。幸か不幸か学校から課題が幾つか出されている。まぁでも一日もあれば終わる量でもある。それで幾分かは誤魔化せるだろうが、部屋に篭り、監視するにも理由がいる。自分はゲームをしていれば篭れる理由にはなると思う。実際それでどうにかなるとも思ってはいる。でも僕はゲームにはめっぽう集中してしまうタイプなのだ。つまりゲーム中は周りがどうしようがほとんど気付かない=監視出来ない、というわけ。読書とかも同様に集中してしまう。だから適度に監視出来て怪しまれない行為が勉強ぐらいしか無い。自主勉は正直あまりしたくない。まぁそりゃあテストが近ければやるけども、テストはつい二週間前、半月ほど前に行われた。テスト返却も終わったばかりでまともに授業も進んでいない。予習?ナンノコトデスカソレ?オイシイノ?とまあ予習は好きじゃないしやりたくもない。適度にサボって適度に頑張る。これが僕のモットーなので。でもホントに思いつかない。・・・よし、二度寝しよ。起きたら何か思いつくでしょ。
午前八時十七分、二度寝から僕は目が覚めた。とりあえずネトサすることにした。ツイ〇ターをとにかくあさる。SNSはこれぐらいしか使ってない。あとはラ〇ンぐらいか。この現代社会において機械系は強くないと色々と不便なのに、僕はそかまで機械に強くはなく、スマホのアプリも必要最低限ぐらいしか入れてない。ゲームも二個しか入れてない。おまけに新しいものにそこまで固執してないので、結局使い慣れたものとか、ブームがとっくに過ぎ去ったあとに手を付けるぐらいの現代の若者とは思えないような性格をしているので、これはこれで面倒なことである。まあ自分では満喫も充実もしてはいるとも思う。だから別にどうこうとは思ってない。直す気もさらさら無いし。とにかく起きよう。そうしなければ何も始まらないから。
この世界では特殊能力の制限はそこまで厳重化されていなく、仕事に用いる事も認可制ではありますが使用を許可されています。それを管理するのが能力庁です。この能力庁の認可なく能力を用いての経済活動及び収益が確認されれば、最低でも七年以上の懲役が課されます。あくまで経済活動などに用いらなければ、生活に用いても何ら問題はありません。そこまで驚異的な能力を持つ者が少ないのも厳重化されていない理由の一つです。それでも怪我を負わせる行為や周囲の建築物等に被害が及ばない、いわゆる常識的な範囲内であればですが。もちろん実害が出れば一般的な傷害罪・器物破損等よりも重い刑が課されます。
落水空のバイト先の探偵事務所はもちろん認可証を所有しています。個人での所有も無いわけではありませんが、認可まで長ければ一年以上、得るのに百万近くするので、採算が取れる人以外取ろうとする人はほとんどいません。認可証は企業名や対象者名が記されるので、売買はもちろん禁止ですし、仮に行ってもその認可証に効力はありません。当然偽装行為も行われてます。(発覚した場合は通常の偽造罪・印象偽造の罪以上の刑が当然課されます)なので能力庁はどこの企業・人に認可されているかを公開しています。(著作権同様に)
こういったことに関しては「特殊能力関連法」というものがあり、それに則って能力庁は活動しています。