電球が割れた時を思い出した。
本当に、たった一人の人間から発せられる何かから感じるなんて、それこそフィクションだろう。そうでなければ、この状況は信じられない。そう感じる程、恐怖がまた増えていく。もし自分が小動物であるならば、今すぐにでも逃げ出していただろう。この恐怖は、生存本能に大きく訴えてくる類のものだ。こんな恐怖は、いつだかに観たホラー映画振りだ。今のはあの時の何倍もあるが。
「ちょっと班長、自分達は慣れてますけど初見の子は怖いんだからやめて下さいよ」
「・・・ああ?」
班長と呼ばれた男は、のけ反って椅子に座っていた。ドスが効きすぎる声と共にこちらを睨むその姿は、より一層恐怖を増すだけだった。
「・・・ああ」
一呼吸置いて班長と呼ばれた男は立ち上がり、軽く体を動かし、およそストレッチで鳴るハズの無い音を体から鳴らした。ある程度動かすと、のそのそと部屋を出て行った。あくびをしながら。
「悪いね、班長は大体不機嫌なんだよ」
後から聞いた事だが、この時の僕はあまりの状況にあっけらかんとしていたらしい。こんな表現をした事がないよと、細谷さんに笑われながら言われた。
「特に寝起きはね」
「え?」
アレ寝てたのか?寝てた人間があんなもの放つのか?本当にそいつ人間か?山で獣に育てられた野生児の間違いじゃないのか?
「まあ今日は特に機嫌悪そうだったし、ごめんね」
「はあ」
本当に大丈夫か、この組織。
「あー、悪かったな、怖がらせて」
右手で頭を撫でられた。すごい変な気分になる。
「自己紹介だ。俺はここで馬鹿共をまとめてる、加賀美だ。よろしく。まあ、呼び方は任せる」
「あ、落水透です。よろしくお願いします」
左手を差し出され、握手をした。
「まあそんな緊張せず、楽にしてくれ」
加賀美は握手をすると、さっさと椅子に座ってしまった。
改めて観察してみる。少しボサボサの髪、目元も耳も出している、髪質の割にはきっちりした髪型だ。目つきはとても悪い。そしてクマもやばい程濃い。目に見えて寝不足なんだろう。無精ひげと言うのだろうか、放っておいているのかひげが伸びている。恰好はスーツ、ただし上着は無い。程々にしわがある。ネクタイはせず、首元は開けている。腕時計はしていない。チェーンがズボンの右ポケットに伸びている。懐中時計なのか?シャツの胸ポケットに、煙草の箱とライターが見える。喫煙者らしい。さっきの握手で分かったが、指輪はしていなかったから、未婚っぽい。あと握手が異様に強い。握力が高いのかな。年齢は、三十代かな。予想だけど。
「細谷、その子が今度の?」
「はい、リストの中から」
「そうか」
加賀美は片手間に机上のノートパソコンを見ながら話した。
「事情説明は?」
「まだです。後日まとめてと考えています」
「そうか」
加賀美はこちらを見ない。僕が思うのもなんだが、かなり失礼な人だな。寝ていたクセに自分は多忙アピールなのか、なんか気に食わない。
「じゃあまあ、日程が決まったら連絡。あとその子はお前等に任せる」
「はい。では失礼します」




