後悔が先に立つ人は、未来が見えたりするのだろうか。
色々と考えたすえ、結局読み込む事にした。学校に隠れて携帯してるスマホを取り出し、QRコードを読み込んだ。
「あ、重い」
「ネット?」
「うん」
この公園、通り悪いな。最近っていうか前々からここら辺はあんまし通り良くなかったんだよね。
「そう?私はそんなだけど」
「俺もだ」
「え~?会社どこ?」
「えっと、ああ、そっか」
「?」
「俺ら衛星通信なんだっけ」
「衛星通信ってネット繋がんの?」
「まあ、お役人ですから」
なにそれズル。役人ズル。パンピーにもよこせや。
「国家権力ズルい」
「良いだろ。便利だぜ。んでもって協力してくれたら君も使える様になるよ」
ぐぎぎぎ。
「ところでそろそろ繋がった?」
「あ、はい」
サングラスがぎょっと覗き込んできた。ちょっと怖い。
「あ、はい」
画面を見ると、アンケートフォームに繋がっていた。
「怪しい」
「まあ、そういう反応になるよね」
スクロールすると、名前・メール・電話番号・能力についての入力欄があった。たったこれだけのクセに、個人情報をスッパ抜く気しかない。
「これをどう信じろと?」
「まあ、ね」
「うん」
これを作った人は、怪しいと分からなかったのか?正気か?
「これ本気?」
「うん、まあそういう反応だよね」
「だからせめてQRコードはやめましょうって言ったんですよ」
いやQRコードでなくても…
「まあとりあえず入力して。悪いようにはしないから」
「え、クズ彼氏かなんか?」
いくらなんでもこれはちょっとセリフがアウトじゃない?
「そっすよ先輩。今のは何でも…」
「あ?」
「すいません…」
肉食獣を前にした草食動物の構図が浮かんだ。これが自然の摂理かと、その縮図が見えた。
「あの、入れましたけど」
「ん、ああ」
細谷の胸ぐらを掴んで、今にも殴りかかろうとしていた先輩なる人の姿があった。
「あの、今更なんですけど、何て呼べばいいですか?」
「ん、ああ、野上だよ」
「あの、野上さん、一応入力終わりました」
「うん、ありがと。送信しといて」
「はい」
つーかなんでこんな怪しいモン信じてんだか。自分が怖いわ。
「じゃ、行こうか」
「ん?どこに?」
「どこって、ウチ」
「家?」
「いや、ウチらの拠点。捜三課の」
細谷を掴み上げたまま、野上は答えた。
怪し過ぎるよ。
公園から徒歩三分程の位置にある車に乗った。そこから車で二十分程走った所に、そのオフィスビルが目的地だった。ちなみに運転者は細谷。後部席から野上と共に座った。正直あまり乗車中の記憶はない。右隣の人間から、本来は放たれる事があり得ない様な気迫が出ていたからだ。人間ってこんな事出来るんだなと、本当に思う。
「着いたよ。ここが俺らの職場、捜査三課の拠点。能力庁M**県支部署捜査第三課M**県分署、通称捜三M室」
その大層な名前からは想像出来ない程、このビルは普通だった。閑散としている街中、という程人通りが少ないワケでもない細道の中にあるこのビルは、立て看板も付いていなかった。まずここに政府の施設があるとは考えないだろう。フィクションかよ。やっぱり売り飛ばされる?僕。だったら短い人生だったな…。もう少し楽しみたかったな…。
「何考えているか分からないけど、ここは君が考えている程じゃないから」
また読まれた。こう何回もやられると、もう気味が悪いを通り越してすごいとしか出てこない。
「まあ怪しいのは分かるけど、とりあえず行こうか」
二人に連れられ、中に入る。
「あ、来客用のIDね、これ。一応出入りする人は管理してるから」
ケース入りのIDカードを渡された。
「ここね、かざしてね」
認証盤を指された。
「ここタッチすれば良いから」
野上がピッとかざして手本を見せた。
「エラー鳴る時はもっかいかざせば良いから」
「あ、はい」
IDカードをかざして中に入った。ちょっとボロい外見とは裏腹に、中は意外とキレイだった。入口の警備員の一人に一礼して、中へと進む。
「一応中にはウチ以外の部署もあるから、そこだけは気を付けといて」
「何を?」
「いや、まあ、よくある派閥争い?的なやつ」
「あ、そういうのどこでもあるんだ」
そーいうめんどくさいの、大人になっても同じなんだな。大人になりたくねー。
「まあ波風立たせずに済むならそれに越したことはないんだよね」
「まあ来たら来たで潰せば良いだけだ」
「いやそれでこの前班長から釘刺されたでしょ?先輩」
「あ?」
「あ、すみません…」
なんかこのやり取りも見慣れて来たな…。かわいそうだけど。すんごい他人事だけど。
「まあとりあえず、大人しくしてれば大抵はなんとかなるから」
「はあ…」
一向に自信が生まれないし、むしろ不安になってきた。本当にこんな所に来て良かったのかと今更不安になってきた。自分の行動に嫌気が、というより後悔の方が強い。なんでこんなことになったんだろうと、今更自分の行動がとんでもない間違いに思えてきた。
「さあ、着いたよ」
細谷に言われて気付くと、『捜査第三課M**県分署』と書かれた看板のある部屋の前に来ていた。
「ようこそ、我らが捜三M室へ」




