手品の様で、手品じゃなければ、それは魔法?
「離して」
「お、悪い悪い」
細谷は僕の腕を離した。
「んで、どうだった?」
「気持ち悪いです」
「ははは、気持ち悪いか。ははは、ちょっとショック」
「あ、ごめんなさい」
他人がおもむろにうつむくのって、なんかシュールだ。
「まあそういう反応には慣れてるから」
「そうなんすか…」
「まあこんな能力だしね。昔はいじめられてたし」
能力いじめ。この能力社会の課題の一つとして挙げられる問題の一つ。人の外観によるいじめの様に、自身で変えられないものによる、いじめ。主に能力の発動時やその効果、またはその悪用方法によって起こる。
「まあ、君が言った様に、まあ昔は変態だとか覗き魔だとか言われまくったね」
「あ…」
この時、初めて自分の言った事の重大性に気付いた。この人は、そんな事を平気で言われる中で生きてきて、こんな初対面の人間にすら言われる様な事を、ずっとどうしようもなくなっていたんだ。
「ごめんなさい…」
「いやいや、もう気にしてる事じゃあないんだ。今はその能力で稼げてるから、もう、気にしてないんだ」
嘘だ。この人は、僕を慰めるために嘘を吐いている。へらへらと笑ってはいるが、今も引きずっているんだ。この笑顔の裏で、この人は、どんな想いをしてきたのだろうか。
「あ、でさっきの続きだけどさ、この能力にも問題があってさ。なんだと思う?」
「え?」
「だから、問題。なんだと思う?」
この人は……
「残念、時間切れ~」
ビクッと軽く跳んだ。
「ははは、何跳んでんの。そんな驚く事?」
「え、あ、まあ…」
「んじゃあ、答え合わせ。正解は…」
どぅるるるるる~、とセルフ効果音を言いながら腕をグルグルしていた。
「バン、発動条件がめんどくさい事です!」
「はあ…」
「あり、反応悪いなあ。折角効果音まで入れたのに」
「あっ、ごめんなさい」
「あ、いやいや、謝ってほしくて言ったワケじゃないから」
ダメだな。この人に気を使わせてばっかりだ。
「んで、その発動条件っていうのは、『自分を認知している相手』にしか効果が無いって事です!」
「それ、発動っていうより、効果対象者じゃ…」
「あり、そうか、それもそうだな」
「で、なんなの?」
「ああ。まあ説明するとめんどいんだけど、要は探し物は探してる時が一番見付からないって事」
「え、最初からその説明で良かったんじゃない?」
「それもそうだな。うん、失敬失敬」
失敬なんて初めて聞いた…
「まあ他にもいくつかルールがあるんだけど、それはまた今度」
「今度?」
「うん、今度」
「じゃあ今からは?」
「一番大事な質問をする」
まさか、あのケースの事で…
「君には、俺達に協力してもらう」
細谷 章
能力名:「灯台の上」
効果:自身を認知出来なくなる
正確には視界内にはいるが、細谷を細谷と認識出来なくなる。また、自身が直接触れている無生物に限り、この効果の影響を受ける。ただし一定のサイズを超える物は対象外。
喋れば声は聞こえるし、物に触れられる感覚もある。
能力対象:自身の存在を認知している生物
カメラ越しなどでも同様に生物は認知不可。ただし機械のみの識別の場合は除く。
発動条件:任意で発動




