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しょぼくない  作者: 何故
10/21

またってどのくらいの間隔で使うものだっけ。

「やあ」

最初から声が聞こえた。

「最初ではないよ」

最初ではないらしい。

「そこは何で考えていることが伝わるのって驚く所だろ、皆そういう反応するだろ」

はいはい、エスパーさんには頭が上がらないですよっと。

「うっわ。嫌なぐらいわざとらしいね、君は」

ひどいな、折角付き合ってやってるっていうのに。

「はいはい、こっちが悪いですねー」

そっちも嫌なぐらいわざとらしいな。

「真似しただけだよ」

そこまでか?

「そうだよ」

ウッソだぁ~。

「嘘じゃな~いよっと」

まあいいや。で、アンタ何?こんなただの真っ黒い空間で何の用?

「まずはこの空間についてじゃないの?」

はいはいそうですね。じゃあ教えて下さいな。

「ずいぶんと投げやりだね。まあいいや、教えてあげる」

わーい。

「感情少しは込めたら?」

メンドイからパス。

「あっそ。まあいいか。んで、この空間は君の夢の」

土台だろ。白紙のキャンパスみたいなもん。

「なんだ、知ってたのか。じゃあ何で訊いたのさ」

真っ黒いアンタが訊いてきたから。

「それもそうか」

じゃあ本題。アンタ、誰?

「私なんてなんだっていいでしょ」

話通じねー。

「はいはい、じゃあ『真っ黒い人』で」

・・・

「なにさ」

いや、何のひねりもねーなって。まだポチとかタマとかの方がひねりあると思うんだけど。

「ひど」

じゃあ教えてよ。ホントの名前。

「それはまだ秘密」

めんどい彼女かよ。

「よく言われる」

じゃあ治せよ。

「君の考える通り人間は愚かな生き物だから無理なの」

じゃあ仕方ないか。

「納得はや」

ツッコミなら裏拳?みたいなことしないの?

「漫才師じゃあないし、西の方出身じゃないからしない」

へー。じゃあどこ出身?

「それも秘密。っていうか何しれっと情報抜こうとしてんの」

教えてくれないから。

「ごもっとも」

だから教えて。

「もうちょい前後の脈絡しっかりしてくんない?」

無理。

「無理か~」

うん無理。

「じゃあ無理か」

というワケで帰って。

「早速すぎない!?」

んじゃ。

「っておいマジで!?」

うんマジ。

「マジのマジ?」

マジのマジのマジ。

「ウソでしょ」

噓じゃないよ。

「ガチ?」

ガチ。

「言葉も出ないや」

あっそう。じゃあね。


ここで僕は目が覚めた。あの後、何度か外を覗いたりしたが、終ぞあの人が現れはしなかった。それもそうだ。僕はそういう事をしたんだ。人間が信頼を失うのって、こういう事なんだろうな。僕だったらそうなる。でも、仕方がないだろ、そういう人間だからな、僕は。

そんな事を考えていても、時間が過ぎるだけ。ふと時計を見ると六時を過ぎていた。朝日はもう射し始めている。カーテンの隙間から、青くなり始めている外が垣間見える。

あんな人間を見ると、どうしても都合良く考えてしまう。パジャマを脱ぎながら考える。小指が冷えてあまり感覚が無くて、少しウザくなる。パジャマを能力で放る。ワイシャツを着る。冷えた袖は少し気持ちいい。ああ、あの夢で出会った人が、あの人の手先だったらと思うと、いくらか楽になる。きっと後ろ指を指しに来たんだ。自分の手を汚さずに。ズボンを履く。かじかむ足を叩く。痛みよりも寒さを感じる。咳き込む。痰が少し絡む。風邪かな。良いね、いい気味だ。セーターを着る。あってもなくてもと思うけど、あると暖かく感じる。カーテンを開ける。少し眩しくて目を細める。数回まばたきして、目を慣らす。ピュフーと下手な口笛を吹く。自分でもよく分からないメロディーを奏でる。そのまま洗面所に向かう。歯を磨く、顔を洗う。冷たい水が、自分が間抜けだと実感させる鏡の中の自分。睨むなよ。顔を拭く。少し噛む。歯ぎしりがする。歯が押し込まれた気がする。そんなワケないのに。リビングに行く。こたつに入る。暖かくない、むしろ冷たい。スイッチを入れる。ブーンとヒーターが動き出す。次第に暖かくなる。手と足先が、ほんのりと暖かくなり始める。靴下を履くのを忘れていると気付いた。嫌になって天を仰いだ。すぐに俯いた。そしてまた天を仰いだ。観念してこたつを出た。自室に向かう。タンスから靴下を取り出す。寒い床を歩いたせいでただでさえ足が冷えた。更に靴下のせいで冷えた。またリビングに向かう。またこたつに入る。さっきよりは暖かい。そのままでいたくなる。外に出たくなくなる。

ああ、自分はどうしようもない生き物なんだな。

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