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女騎士のヘドロ①


豪華に装飾された

広くて長い廊下を進む。


目的地は、あるじが眠っている寝室だ。


その部屋へ向かっている途中

廊下の窓のカーテンを1つ、1つ開けている

ある人物が、私の視界を捉えた。


「あら、デルハルトさん、おはようございます」


無垢で慈愛に満ちた

眩しい微笑みを浮かべながら

彼女は私に向かって、声を掛けてきた。


「おはよう、コレット」


「今日も素晴らしい朝ですわね」


「あぁ、そうだな」


今やこの世界で、一番良いものは

太陽が照り付ける、良く晴れた天気だけだろう。


本当、今のこの世界は生きにくい…。


「今朝もカズヤ様のお部屋へ?」


「あぁ、何故か身の回りの世話役を、この私が任されているからな」


「デルハルトさんは、元女性の騎士でしたよね?

 やはり、着替えなどをしている時

 無防備な状態になりますから

 もしもの時に備えて…かもしれませんね」


「馬鹿を言え

 あいつの能力は、コレットも知っているだろう?

 裸の状態で、モンスターの生息地に行ったとしても

 傷1つ負わないだろう」


そうだ。

あいつの能力を鑑みれば

護衛なんて必要ない。

むしろ足手まといになってしまう恐れの方が大きい。


コレットは、元聖女だと聞いている。

聖女は頭脳明晰でないと、務まらないハズだが…。


「誰しもうっかり…という事はありますから」


「まぁ、それもそうだな」


それじゃ、とコレットに声を掛けて

私は寝室へ向けて少し足を速めた。


コレットと少し立ち話をしてしまい

いつも彼を起こしている時間に、遅れそうだ。




ふぅ…。

寝室の扉の前で私は

心の中だけで一息ついた。


これからまた1日、猫を被る生活が始まるからだ。

この生活を送るようになってから自然と

気合を入れる為の、ルーティンとなってしまった。


さて、それでは行くとするか。


「主殿~! おっはようございますぅ~!

 今日も素晴らしい朝がやってきましたよ!

 早く起きてください~!」


布団が少しだけ動いた。

主が寝狩りでも打ったのだろう。


私は窓に近づいて

閉まっているカーテンを開ける。


「うぅ…眩しい…」


なんとも間抜けな情けない声色で

声の主はそう呟いた。


こんな奴が、私の過ごしてきた

大好きだった世界を、崩壊に追いやったのだというのは

非常に信じがたい事である。


それにしても

見るからに私よりは年上だろうこいつは

なぜ、人に起こされないと目を覚まさないのだろうか。


年齢に関しては

聞いたことはあるけど、なんやかんやで誤魔化されてしまい

未だに知らない。


何か言えない事情でもあるのだろうか。


「ほら! 早く起きてください!

 エマニエルが作ってくれた朝ごはんを食べるのを

 主が来るまで、みんな待っているんですから!」


「この世界には会社なんてないんだし

 もう少しゆっくり寝かせてくれても良いのに…」


またこいつは訳の分からない事を

ほざいている…。


度々、こいつの口から発せられる"カイシャ"

とは何なのだろうか?

聞きたいけど、聞けない…。

聞いたところできっと


『え? 知らないの? なんで?』


と馬鹿にしてくるに決まっている。


あの時もそうだった。


こいつがこの世界にやってきた日

強力な魔法を放ち

モンスターを一撃で駆逐した。


しかもその魔法は

まったく属性の違うものを掛け合わせた物で

今まで見たこともない攻撃魔法だった。


その一部始終を目にした賢者達が

こぞって彼に質問をした。


しかし彼は小馬鹿にするかの如く

こう一言、口にした。


『え? ただの下級魔法である

 ファイアーボールと、アクアウォールの2つを

 混ぜ合わせるイメージで、放っただけですよ?

 あ、もしかして簡単すぎる魔法で、引かれちゃいました…?』


たとえ下級魔法だったとしても

2つを掛け合わせて、同時に放つ事など

不可能…、いや違う。

この世界にいる者の中で、そんな人はこれまでいなかった。


それほど凄い魔法なのにも関わらず

"簡単だし、誰でもできる事ですよね?"

といった空気感で、他の賢者達を下に見る発言をした。


何故わざわざ怒りを買うような

言い回しをするのだろうか。


やはり、それだけ力の差を見せつけたいのだろうか。


いや、それならば

実際に魔法を、放っている姿を見せた時点で

完結しているのではないのだろうか。


この男の考えていることは

未だ、未知数な事ばかりだ。


ただ1つハッキリしている事は

この男の性格は


根っから腐りきっている


って事だ。


「でも本当、この世界はよく晴れるね

 それに、日本にいた頃は違って

 湿気も少なくて、爽やかだよね」


こいつの言っている言葉の意味を

完全に理解する事は既に諦めた。


「そうですね、天気がいいと

 気持ちまで前向きになれますね!」


こう適度に持ち上げる

返答をしておけば、彼は気分を良くする。


そうすれば

私に対する態度も変わってくる。


この世界では今や

この男がトップに立つ存在。

持ち上げるやり取りをするのが

最善なのだ。


そしていつか

兄さまをはじめとした

自分の家族達を助けるのだ…。


この男が現れるまで

普通に過ごせていた

幸せな暮らしを、取り戻す為に。


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