きっと、晴れるよ
「海…………」
「ごめんね。連れてくるのが遅くなって。仕事が忙しくてさ」
「謝らないでください。とっても嬉しいです。ありがとうございます」
「あのさ、君に渡したいものがあるんだ」
「なんですか?」
「これを受け取ってほしいんだ」
「指輪?」
「僕は、キミのことが好きだから……」
「本当にいいんですか? こんな高価な物を貰って……。返却出来ませんよ?」
「ほらっ! 手を出して」
「……キラキラして、夢みたい」
「これからは、いつも一緒だからね。もっともっと二人で幸せになろうね」
「いつも一緒……。アナタと……。私もそれを望んてた気がします。ずっと……ずっと…前から……………ぁ……」
「どうした?」
「海が…呼んでる………行かなくちゃ……」
「ダメだっ!! 行くな」
「そろそろ、起きる時間……。寝坊は良くないですよ? さぁ、目を覚ましてください。……そして起きたら、私の分まで幸せになってください」
「行かないで………僕には、キミが必要なんだよ……。何でもするから………だから…行かないでくれ……頼む……」
「あの船旅で私達が出会わなければ……。事故が起きなければ……。私が泳げれば……。こんなに今、アナタを苦しめることもなかった。運命って、ほんと残酷ですよね……」
「僕も行くから! 連れていってくれ!!」
「ごめんなさい……。連れて行きたくても無理なんです。アナタは私と違って海に呼ばれていないから。さぁ、目を覚まして……。病室で、お友達も待ってます。アナタの手を握るご両親も早く安心させてください」
「僕には無理だ…………キミがいない世界では…生きていけない………」
「我が儘言わないでください。絶対に幸せになるって約束して。お願い…….」
「…………」
「お願いです。私の最後の願い……」
「分かった……」
「心配しないで。私とは、ずっと海で繋がっていますから」
「うん……」
ねぇ、雄介さん。
何?
『明日は、晴れますか?』
『きっと、晴れるよ。明日でこの船旅は終わりですけど……。夏海さんと僕の付き合いはずっと』
『はい。ずっと続きますよ。これからも。だから、心配しないで』