⭕ 迷子のキノコン 1
──*──*──*── ブックカフェ
マオ
「 ただいま~~! 」
オレは元気良く両扉の玄関を開けて、ブックカフェの中へ入った。
セロフィート
「 マオ、そんなに大きな声を出してはヒストリスさんが起きてしまいます 」
マオ
「 あっ、そうだったな。
うっかりしてたよ!
あはは……………………は?? 」
セロフィート
「 マオ、どうしました? 」
マオ
「 セロ──、キノコンだ!!
キノコンが居る!! 」
セロフィート
「 はあ?
何を言いますか。
キノコンはキノコドラゴンと共に地下の実験室へ転移させてます。
実験室からは出られません 」
マオ
「 だけど!
キノコンが居るんだよ!
どっから入って来たんだ?
戸締まりはちゃんとしたんだろ? 」
セロフィート
「 結界を張ってますし、外部から侵入は出来ません 」
マオ
「 じゃあ、何で──。
何処から入って来たって言うんだよ? 」
セロフィート
「 ………………。
もしかして、ヒストリスさんではないです? 」
マオ
「 はぁ?
ヒストリスさん?
何でヒストリスさんがキノコンになるんだよ?
ヒストリスさんは個室で眠ってる筈だろ? 」
ブックカフェの中へ入ると居る筈のないキノコンが居た。
セロは「 ヒストリスさんじゃないか 」って言うけど、そんな馬鹿な話があって堪るかよ!!
オレは階段を駆け上がって2階へ上がった。
──*──*──*── 2階・廊下
ヒストリスさんに貸し出している個室の前に着くと────。
マオ
「 ──!!
ドアが開いてる!?
ヒストリスさんっ!! 」
オレは焦ってドアを開けると個室へ踏み込んだ。
マオ
「 ヒストリスさんっ!!
居ないの?! 」
個室へ入って室内を見回して見るけど、ヒストリスさんの姿はない。
窓は閉まっていて、鍵が掛かっているから密室だ。
ドアが半開きしてたから密室とは言わないかもだけど、ブックカフェには個室で眠っていたヒストリスさんしか居なかった訳だし、外部からの侵入も出来ないようになっているなら密室みたいなもんだ。
ベッドへ目を向けるとバスローブがベッドの上に置かれている。
ヒストリスさんは昨晩、入浴を済ませてから眠ったのかも知れないな。
室内からは荒らされた痕跡も無ければ、形跡も見当たらない。
逆に荒らされた痕跡や形跡があったら大事になるだろう。
何せ外部からの侵入が出来ないようにって、セロにしか解除不可能な強力な結界が張られているにも関わらず、“ 荒らされていた ” って事になったら、セロが何を仕出かすか分からない。
マオ
「 ──これ?
ヒストリスさんが手首に付けてたアミュレットじゃんか……。
何でベッドの下に落ちてるんだよ?
ヒストリスさんの姿もないし…… 」
オレはヒストリスさんのアミュレットを握ったまま個室を出る事にした。
室内の現状維持をする為にドアを確りと閉めたのを確かめて、階段を駆け下りた。
──*──*──*── 1階・ブックカフェ
マオ
「 ──セロ、個室にはヒストリスさんの姿はなかったよ。
ベッドの下にヒストリスさんが手首に付けてたアミュレットは見付けたんだけど…… 」
そう言ってオレは、アミュレットをセロに見せる。
セロフィート
「 このアミュレットはヒストリスさんが≪ 王都 ≫を出る前に婚約者から無事を祈って贈られたアミュレットだそうです 」
マオ
「 えっ、そうなのか?
大事なアミュレットじゃんか!
そんな大切なアミュレットを落とすなんて…… 」
セロフィート
「 調査隊の任務を終えて≪ 王都 ≫へ戻ったら、婚約者と結婚すると嬉しそうに話してました 」
マオ
「 マジで!?
ヒストリスさん……婚約者が居るだけじゃなくて、結婚間近だったのかよ…。
ヒストリスさん……何処に行っちゃったんだよ… 」
キノコン
「 エリ?
エリ~エリエリ?
エリエリ~~~エリ? 」
マオ
「 ………………コイツ……何か伝えようとしてる?? 」
セロフィート
「 アミュレットが気になるみたいです。
マオ、アミュレットを貸してください 」
マオ
「 良いけど…… 」
オレは素直にヒストリスさんのアミュレットをセロヘ手渡す。
オレからアミュレットを受け取ったセロは、キノコンの前にヒストリスさんのアミュレットを垂らすと、キノコンの前でユラユラと揺らしている。
マオ
「 セロぉ~~~、キノコンは猫じゃないんだからさぁ…… 」
セロフィート
「 マオ、キノコンがアミュレットに反応してます。
アミュレットを物欲しそうに見てます 」
マオ
「 キラキラしてて綺麗だからじゃないか?
キノコンが光り物が好きかは知らないけどさ… 」
セロフィート
「 ………………。
もしかしたら、ヒストリスさんはブックカフェへ辿り着く迄にキノコドラゴンの胞子を吸い込んだか、身体に付着させていたのかも知れません 」
マオ
「 えぇっ?!
だけどさ……仮にそうだとしてもだよ、幾ら何でもキノコンに変貌するのが遅過ぎやしないか? 」
セロフィート
「 胞子の摂取量に依って時間が異なるのかも知れません。
それにヒストリスさんは昼食と夕食にはワタシの作った薬膳料理を食べています。
それが原因となりキノコンへ変貌する時間が遅れた可能性もあります 」
マオ
「 そんな……。
じゃあ……多かれ少なかれキノコドラゴンの飛ばした胞子が体内へ入ったりしら、キノコン化は防げないって言うのか? 」
セロフィート
「 それに関しては実験して検証するしかないです。
何はともあれ、貴重なサンプルを入手出来ました。
ヒストリスさんをキノコンにする手間が省けましたね、マオ♪ 」
マオ
「 何言ってんだよ!
このキノコンがヒストリスさんだって未だ決まった訳じゃないだろ!!
調べてもないのに憶測で決め付けるなよ! 」
セロフィート
「 マオ……。
あれを見てもそんな事を言えます? 」
セロが指を差した方向を見てみると、キノコンがアミュレットをジッ──と見詰めていた。




