セロの張った結界の中に入っているゴロツキ達は何処からか現れたキノコドラゴンに驚いて悲鳴を上げている。
逃げたくても見えない壁に阻まれて逃げられないゴロツキ達は、見るに絶えないパニック状態となっている。
あぁ……あまりの恐怖に大の大人が失禁してる奴も居るじゃん……。
セロフィート
「 結界を広げましょう。
キノコドラゴンを生け捕りにします 」
マオ
「 うん……。
狩らないんだな 」
剣、持って来たけど使わなかったな…。
セロが広げた結界の中へ次々と入って行くキノコドラゴンは、真っ裸の人間へ目掛けて走ると大きな口を開けては、人間を一口で喰べる。
ゴロツキ達がキノコドラゴンに次々と補食されて逝く。
地面や近くの木々や草にゴロツキ達の汚ない血が飛び散っている。
ひたすらキノコドラゴンに喰べられるゴロツキ達の様子は正に地獄絵図だ。
お見せ出来ないのが悔やまれるよ…。
セロフィート
「 餌を食べている時は胞子を飛ばさないようですね 」
マオ
「 そうみたいだな 」
セロフィート
「 マオ、結界の中へ入ってキノコドラゴンを攻撃して来てください 」
マオ
「 はぁ?!
オレぇ!? 」
セロフィート
「 マオしか居ないでしょう。
その剣は飾りです? 」
マオ
「 飾りじゃないけど…… 」
セロフィート
「 マオ、お願いします。
──攻撃するキノコドラゴンは1体だけにしてください。
攻撃は出来るだけ軽くしてください。
胞子を飛ばす所を見たいので間違っても殺さないように 」
マオ
「 分かったよ…… 」
注文の多いセロの為に、オレは素直に結界へ向かって歩く。
鞘から愛剣を引き抜いたオレは、愛剣を構えると1体のキノコドラゴンへ狙いを定めて斬り掛かった!
いや、違うな。
キノコドラゴンの背中へ愛剣を突き刺したんだ。
愛剣を突き刺した事で、痛がったのかキノコドラゴンは鳴き声を上げる。
背中の茸から大量の胞子が飛ばされた。
1体のキノコドラゴンが背中の茸から胞子を飛ばすと、他のキノコドラゴンも背中の茸から胞子を飛ばし始めた。
大量の胞子が結界の中に広がる。
胞子は結界の外には出ていかない。
結界の中に充満した胞子を真っ裸のゴロツキ達が吸い込んでいる。
身体にも胞子が容赦なく付着していく。
セロフィート
「 凄い量の胞子ですね 」
マオ
「 そだな…… 」
セロ……何時の間に結界の中へ入って来たんだよ。
セロフィート
「 これで人間がキノコンへ変貌する瞬間が見れますね 」
マオ
「 そだな…… 」
結界の中では既に餌の──もといゴロツキ達の身体に変化が現れていた!!
キノコドラゴンが飛ばした大量の胞子を体内に吸い込んだり、全身に付着させた身体が次第にブクブクと膨れ上がっていく。
まるで体内で沸騰でも起きてるみたいだ。
ブクブク,ボコボコと肌が異常なぐらい膨れ上がって、元が人間だと思えないぐらいの惨状を迎えた後は収縮して身体がキノコ怪物に変わっていた。
人間がキノコンへ変貌する瞬間をオレはガッツリと目撃してしまった。
結構エグい変貌の仕方だった……。
セロフィート
「 マオ、見ました?
人間がキノコンへ変貌する瞬間を! 」
マオ
「 お、おぅ……。
ガッツリ見ちゃったよ…。
人間の身体ってあんな風に膨れたりするんだな?
不気味だったな… 」
セロフィート
「 実に興味深い現象です。
もっとじっくり観察したいです。
キノコドラゴンとキノコンをワタシの実験室へ転移させます 」
マオ
「 全部か? 」
セロフィート
「 勿論です。
〈 テフの源みなもと 〉で構こう成せいしても腐ふ敗はいしない肉にく体たいしか用よう意い出で来きません。
生いきているキノコドラゴンもキノコンも貴き重ちょうな実じっ験けん体たいです。
繁はん殖しょくもさせたいですし 」
マオ
「 繁はん殖しょくって……。
マジで言いってるのかよ… 」
セロフィート
「 勿もち論ろんです。
繁はん殖しょくが成せい功こうすれば実じっ験けん体たいに不ふ自じ由ゆうしなくなります 」
マオ
「 それはそうだろうけど……。
今こん回かいは本ほん格かく的てきだな? 」
セロフィート
「 キノコドラゴンの背せ中なかに生はえている茸キノコを人じん畜ちく無む害がいな食しょく用よう茸キノコに出で来きれば、天てん候こう,気き候こう,季き節せつに左さ右ゆうされずに様さま々ざまな種しゅ類るいの茸キノコを大たい量りょうに栽さい培ばい出で来きるようになります。
知ち性せいの芽め生ばえたキノコンを調ちょう教きょうし、躾しつければ使し用よう人にんとして利り用よう出で来きるかも知しれません 」
マオ
「 セロ……。
別べつにキノコドラゴンとキノコンを悪あく用ようしようとしてる訳わけじゃないんだな? 」
セロフィート
「 はい?
マオは悪あく用ようしてほしいです? 」
マオ
「 そんな訳わけないだろ!
平へい和わ的てき利り用ようするつもりでいるならオレは止とめないよ 」
セロフィート
「 マオは茸キノコが好すきでしょう。
茸キノコ料りょう理りを毎まい日にち食たべれる日ひが来くるのを楽たのしみにしていてください 」
マオ
「 セロ……オレの為ために??
セロぉ~~~♥️ 」
オレは嬉うれしくてセロの腰こしに抱だき付ついた。
茸キノコ好ずきのオレの為ためにセロはキノコドラゴンを捕つかまえてくれたんだな!
セロは結けっ界かいの中なかに居いるキノコドラゴンとキノコンを転てん移いさせる為ための魔ま法ほうマジカル陣じんサークルを発はつ動どうさせた。
結けっ界かいの中なかは一いっ瞬しゅんで空カラっぽになっていた。
セロフィート
「 マオ、ワタシ達たちも帰かえりましょう 」
マオ
「 そ…そうだな 」
“ 狩かり ” って言いう程ほどの狩かりなんてしてないけど──、セロと一いっ緒しょにブックカフェへ帰かえる事ことになった。