セロフィート
「 ヒストリスさん、明日の明朝から調査隊員の捜索を始めましょう。
日が暮れると出没する怪物のランクとレベルが上がります。
夜間の捜索は命取りになりますし、ミイラ取りがミイラになり兼ねません 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 ……そう…だな…………承知した…。
貴方の判断に従おう… 」
マオ
「 怪物さえ出現しなければ夜間も余裕で捜索も出来るのにな…… 」
セロフィート
「 何事も早々順調には行きませんよ、マオ。
──ところでヒストリスさんは『 国境付近の調査をしに来られた 』と言われてましたけど、出没する怪物の種族調査ですか? 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 いや、違うな……。
…………3ヵ月程前から騒ぎになっている奇妙な事件に関する調査で山へ来たんだ…… 」
マオ
「 奇妙な事件??
それって≪ 王都 ≫で起きてるの? 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 始めはそう思っていたんだが……どうやらそうではないらしい。
≪ 王都 ≫以外でも発生している事件だと調査の末に判明したんだ。
今や王国中で発生している重大事件に発展していてね、問題視されているんだ… 」
セロフィート
「 それは人為的に起こされている事件ですか? 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 人為的か…………いや、違うと思うな…。
キノコ怪物大量発生事件が人為的に起こされている事態とは思えない…… 」
マオ
「 キノコ怪物大量発生事件!?
キノコ怪物って……気色悪い色をした二足歩行するキノコ怪物?? 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 君──、キノコ怪物を知ってるのか!? 」
マオ
「 えと……ヒストリスさんの言ってるキノコ怪物と同じかは分からないけど……、森の中でキノコ怪物を見たよ…… 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 この森にも出るのか!? 」
マオ
「 ま……まぁね…。
出るって言うか…… 」
ヒストリスさんはキノコドラゴンの存在は知らないのかな?
オレが森の中で見たキノコ怪物はキノコドラゴンの飛ばした胞子を吸い込んだ人間が変貌しちゃたキノコ怪物だ。
元人間だって事を教えても良いのかな……。
マオ
「 セロ……どうしたらいいかな? 」
セロフィート
「 はい?
マオが森の中で見たキノコ怪物の事を正直に話して良いのではないです? 」
マオ
「 だけどさ、セロ── 」
セロフィート
「 仕方無いですね。
照れ屋さんなマオの代わりにワタシが話しましょう 」
マオ
「 セロ!?
本気なのかよ? 」
セロフィート
「 ヒストリスさんも知りたそうな顔してますし、話して差し上げましょう 」
マオ
「 ………………セロに任せるよ… 」
セロフィート
「 はい♪
任されました 」
セロはオレに微笑んでくれる。
セロがヒストリスさんへキノコ怪物の事をどう話すのか分からないけど、今はオレだけのセロを信じるしかない。
セロフィート
「 マオが森へ入ったのは茸狩りをする為でしたね 」
マオ
「 う、うん…… 」
セロフィート
「 森の中で≪ ケイラーム ≫の傭よう兵へいギルドに所しょ属ぞくしている傭よう兵へい達たちと会あいましたね 」
マオ
「 う、うん…… 」
確たしかに傭よう兵へい達たちとは会あったのは事じ実じつだけど、本ほん当とはキノコドラゴンを倒たおした後あとでキノコ怪かい物ぶつモンスターを倒たおそうとした時ときだ。
セロには傭よう兵へい達たちと会あった順じゅん番ばんを変かえて話はなしてある。
もし、これがセロにバレたら──って思おもうとゾッとするな……。
どうか、最さい後ご迄まで順じゅん番ばんを変かえた事ことがセロにバレないでほしい。
セロフィート
「 マオが傭よう兵へい達たちから聞きいた情じょう報ほうを先さきに話はなしときましょうか。
キノコ怪かい物ぶつモンスターの事ことは取とり敢あえず、“ キノコン ” と呼よぶ事ことにしましょう。
キノコンが飛とばした胞ほう子しを生せい物ぶつが吸すい込こんだり、体からだに付ふ着ちゃくすると、生せい物ぶつの体からだから茸キノコが生はえます。
胞ほう子しを飛とばし終おえた茸キノコは地じ面めんへ落おち、地ち中ちゅうに根ねを張はります。
その時とき、生せい物ぶつは地じ面めんへ根ねを張はった茸キノコの肥ひ料りょうとなります。
そうでしたね、マオ 」
マオ
「 うん。
確たしかに傭よう兵へい達たちからは、そう聞きいたよ 」
セロフィート
「 地じ面めんから生えた茸キノコを生せい物ぶつが食たべると、キノコンになる──でしたか? 」
マオ
「 キノコンじゃないよ。
キノコドラゴンに変へん貌ぼうする──って言いってたよ 」
セロフィート
「 それなら茸キノコを食たべた人にん間げんがキノコンへ変へん貌ぼうした線せんは、今いまの所ところありませんね 」
マオ
「 そうだな。
一寸ちょっと安あん心しんしたよ…… 」
セロフィート
「 ヒストリスさん、≪ 王おう都と ≫で大たい量りょう発はっ生せいしたキノコンに対たいしては、どの様ような処しょ置ちをされてますか? 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 キノコンなら──、倒たおした後あとは魔ま法ほうマジックで穴あなを掘ほった場ば所しょへ運はこんだ後あとに再さい生せいしないよう炎ほのおを放はなち消けし炭ずみにしているが? 」
マオ
「 え゛っ!?
燃もやしてるの??
それって……今いまも? 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 あ、あぁ……現げん在ざいも当とう然ぜんのように実じっ行こうされている対たい処しょ法ほうだが? 」
マオ
「 ……………………マジなんだ…… 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 それがどうかしたのか?
燃もやすと問もん題だいでもあるのか? 」
セロフィート
「 王おう国こく中じゅうで大たい量りょう発はっ生せいしているキノコンが──、森もりの中なかでマオの見みたキノコンと同どう種しゅとは限かぎりません 」
マオ
「 それは……そうなんだけどさ…… 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 一いっ体たいどうしたんだ?? 」
マオ
「 ………………セロぉ…… 」
セロフィート
「 ヒストリスさん、出で来きる限かぎり心こころを落おち着ちかせてください 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 心こころを落おち着つかせる必ひつ要ようでもあるのか? 」
セロフィート
「 冷れい静せいさを失うしなわず、心こころして聞きいてください 」
王国騎士団員:ヒストリス
「 …………分わかった。
貴方あなたが其そ処こ迄まで言いわれるのなら、私わたしも覚かく悟ごを決きめる 」
セロフィート
「 宜よろしい。
マオが森もりの中なかで見みたキノコンは──、キノコドラゴンの背せ中なかに生はえている茸キノコから飛とばされた胞ほう子しを吸すい込こんだ人にん間げんの成なれの果はてです。
“ 人にん間げん ” がキノコ怪かい物ぶつモンスターへ変へん貌ほうしたのがキノコンです。
そうでしたね、マオ 」
マオ
「 うん……間ま違ちがいないよ。
傭よう兵へい達たちに言いわれたからな。
キノコンから人にん間げんへ戻もどす方ほう法ほうが分わからないから、今いまは傭よう兵へいギルドの地ち下か室しつで保ほ護ごしてる──って言いってたよ。
キノコドラゴンも調しらべたいからって、オレが倒たおしたキノコドラゴンの死し骸がいも回かい収しゅうして行いったんだ……」
セロフィート
「 現げん在ざいも尚なお、王おう国こく中じゅうで発はっ生せいしている大たい量りょうのキノコンの正しょう体たいが、“ 人にん間げんである ” とは限かぎりません。
ですが、“ 人にん間げんである ” 可か能のう性せいも捨すてきれません。
キノコンの姿すがたへ変かわり、言こと葉ばを発はっする事ことが出て来きなくなっていても、“ 人にん間げんだった頃ころの自じ我がや記き憶おくが残のこっている ” 可か能のう性せいもあります。
反はん対たいに全まったく自じ我がや記き憶おくを失うしない、身みも心こころもキノコンになる可か能のう性せいも捨すてきれません 」
マオ
「 ヒストリスさん!
大だい丈じょう夫ぶ!?
顔かお色いろが悪わるいよ! 」
ヒストリスさんの顔かお色いろは青あお冷ざめていた。
唇くちびる迄までが真まっ青さおに染そまっている。
キノコンが “ 元もと人にん間げん ” って事ことが余よ程ほどショックで衝しょう撃げき的てきだったみたいだ。
ま…まぁね……ヒストリスさんがショックを受うけちゃう理り由ゆうなら、話はなの流ながれでオレにも分わかるよ……うん……。