今夜の夕食はセロが作ってくれる事になった。
セロお手製の茸尽くし夕食だ。
どんな茸料理を食べれるのか楽しみだよ♥
──*──*──*── 夕食時
マオ
「{ …………セロ、あの人は誰? }」
セロフィート
「 ブックカフェ開店初のお客です 」
マオ
「{ 客!?
マジで??
何時来たの? }」
セロフィート
「 マオが茸狩りへ出掛けてからです 」
マオ
「{ そうなんだ…。
教えてくれたら良かったのに… }」
セロフィート
「 個室を借りられてます。
夕食になれば会えますし 」
マオ
「 まぁ、そうだよな…。
{ で──、あの人は何してる人なんだ? }」
セロフィート
「 王国騎士団員のようです 」
マオ
「 王国騎士団員!?
{ 何で王国騎士団員の人が山奥のブックカフェなんかに来てるんだ?? }」
セロフィート
「 本好きなのでしょう? 」
マオ
「{ ≪ ケイラーム ≫にも本ほん屋やならあるだろ?
態わざ々わざ山やま奥おくのブックカフェに来くる必ひつ要ようないじゃん?
王おう国こく騎き士し団だん員いんならた・ん・ま・り・給きゅう料りょうも貰もらってる筈はずだし? }」
セロフィート
「 気きになるなら本ほん人にんに聞きいてみては? 」
マオ
「 そ、そうだな……。
{ だけどさ、王おう国こく騎き士し団だん員いんなら実じっ験けんのモルモットに使つかう訳わけにはいかないよ }」
セロフィート
「{ 此こブック処こカフェへ辿たどり着つく迄までの痕こん跡せきを消けしてしまえば、彼かれが行ゆく方え知しれずになってもマオとワタシが怪あやしまれる事ことはないです }」
マオ
「{ セロ……本ほん当とにあの人ひとお客きゃくの痕こん跡せきを消けしたりするなよ? }」
セロフィート
「 ………………はいはい 」
マオ
「 セロぉーーーー!! 」
こりゃ駄ダ目メかも知しれない。
セロの『 いけない実じっ験けん 』の実じっモル験けんモ台だいットにされるかも知しれない王おう国こく騎き士し団だん員いんの人ひとは、何なにも知しらずにセロの作つくった茸キノコフルコースを舌した鼓つづみを打うちながら食たべている。
幸しあわせそうな顔かおを恐きょう怖ふと絶ぜつ望ぼうに歪ゆがませたくない。
知しらぬが佛ほとけのままブックカフェを去さらせてあげたいって思おもうのは悪わるい事ことじゃないよな??
オレは間ま違ちがってないよな??
セロフィート
「 マオ、彼かれが料りょう理りを食たべ終おえたら食しょっ器きを下さげてください。
デザートを運はこびます 」
マオ
「 お、おぅ……。
因ちなみにさ、デザートは何なんなんだ? 」
セロフィート
「 勿もち論ろん、茸キノコを使つかったスイーツです。
ムース状じょうにして── 」
セロからデザートの話はなしを聞きいている間あいだに王おう国こく騎き士し団だん員いんの人ひとは料りょう理りを食たべ終おえたみたいだ。
オレは丸まるトレ盆ぼんンチを持もつとテーブルへ向むかって歩あるく。
空カラになった食しょっ器きを丸まるトレ盆ぼんンチの上うえへ重かさねたら、テーブルの上うえを清せい潔けつな布ふ巾きんで軽かるく拭ふく。
オレが厨ちゅう房ぼうへ戻もどるとセロが紅こう茶ちゃとデザートを丸まるトレ盆ぼんンチの上うえに乗のせるとテーブルへ運はこんで行いった。
オレが運はこんでも良いいのに……。
──*──*──*── 夕食後
夕ゆうディ食しょくナーを終おえた王おう国こく騎き士し団だん員いんの人ひとは、オレが思おもっていたよりも気きさくな人ひとで話はなし易やすい人ひとでもあった。
王おう国こく騎き士し団だん員いんってのは、本ほんなんて読よまなくて、融ゆう通ずうも利きかなそうで肉にく体たい美びを自じ慢まんするような頭あたまデッカチの脳のう筋きん野や郎ろうばっかりだと思おもっていたけど、王おう国こく騎き士し団だん員いんの全ぜん員いんが脳のう筋きん馬バ鹿カばかりではないみたいだ。
自じ分ぶん勝かっ手てな偏へん見けんを持もったまま、相あい手てを色いろ眼め鏡がねで見みて勝かっ手てに相あい手ての事ことを決きめ付つけるのは良よくないし、褒ほめられた事ことじゃないよな。
良りょう識しき人じんなら誰だれかに指し摘てきされずとも分わかっている事ことだろうけど……。
王おう国こく騎き士し団だん員いんの人ひとの名な前まえはヒストリス・サイクラーグって言いって、サイクラーグ侯こう爵しゃく家けの8男なん坊ぼうらしい。
お貴き族ぞく様さまってわけだ。
下したに弟おとうとが3人にんと妹いもうとが1人り居いるらしくて、大だい家か族ぞくなんだとか。
長ちょう男なんは家か督とくを継つぐし、次じ男なんは長ちょう男なんの保ほ険けんとしての役やく割わりがあるらしく、成せい人じん後ごも変かわらず実じっ家か暮ぐらしが出で来きるらしいんだけど、3男なん以い降こうの貴き族ぞく令れい息そくに関かんしては成せい人じん後ごは実じっ家かには居いられないそうだ。
成せい人じんとなった貴き族ぞく令れい息そくは、ほぼ強きょう制せい的てきに王おう国こく騎き士し団だんへ入にゅう団だんする事ことになり、自じ国こくを衛まもる剣けんと盾たてとして自じ身しんを捧ささげるんだってさ。
王おう国こく騎き士し団だんの訓くん練れんや任にん務むは厳きびしくて過か酷こくなものもあるけど、三さん食しょく住じゅうが国くにから保ほ証しょうされていて自じ分ぶんが頑がん張ばりさえすれば食くいっぱぐれる事こともないし、手て柄がらを立たてたりして出しゅっ世せをすれば貴き族ぞく令れい嬢じょうとの見み合あいも国くにから斡あっ旋せんしてもらえるし、結けっ婚こんして家か庭ていも持もてるそうだ。
王おう国こく騎き士し団だんは完かん全ぜん実じつ力りょく主しゅ義ぎの男おとこ世せ界かいだから、自じ分ぶんから限げん界かいを決きめ付つけず、自じ分ぶんを信しんじて、志こころざしを持もって、高たか見みを目め指ざして日ひ々びの鍛たん練れんと努ど力りょくを怠おこたらず、精しょう進じんしていれば出しゅつ世せする事ことは案あん外がい難むずかしくないらしい。
結けっ局きょくの所ところ、ライバルは赤あかの他た人にんじゃなくて、甘あまったれた性しょう根ねの弱よわい自じ分ぶん自じ身しんが最さい大だいのライバルって事ことらしい。
弱よわ腰ごしで楽ラクな方ほうへ逃にげたがる自じ分ぶんの存そん在ざいを否ひ定ていせず、真ま正しょう面めんから受うけ止とめて、きちんと存そん在ざいを認みとめて、受うけ入いれた上うえで自じ分ぶんのあ・ら・ゆ・る・弱じゃく点てんや短たん所しょも引ひっ括くるめて高たか見みを目め指ざして精しょう進じんする事ことが大だい事じらしい。
精せい神しん的てきなメンタル分ぶんも強つよくしろって事ことかな??
例たとえ世せ界かい中じゅうの人にん間げんが自じ分ぶんの敵てきになったとしても、自じ分ぶんだけは自じ分ぶん自じ身しんを裏うら切ぎらず、最さい後ご迄まで自じ分ぶん自じ身しんを信しんじ切きって、自じ分ぶんだけは自じ分ぶん自じ身しんの味み方かたで居い続つづけろ──ってやつ??
極きょく端たんで危あやうい考かんえ方かただと思おもうけど、簡かん単たんに言いえば「 最さい悪あくな時ときでもせ・め・て・自じ分ぶんぐらいは自じ分ぶんの事ことを好すきでいてあげような 」──って事ことなんだと思おもう。
自じ分ぶん自じ身しんを毛け嫌ぎらいして否ひ定てい的てきで息いきするみたいに自ぶ分ぶんを卑ひ下げしてるような自じ虐ぎゃく的てきな奴ヤツがだよ、自じ分ぶんを幸しあわせに出で来きるとは思おもえないし、他た人にんを好すきになる事ことも他た人にんを幸しあわせにする事ことも出で来きないんじゃないかと思おもうんだ。
仮かりに出で来きるとしてもだ、自じ分ぶんが好すきで他た人にんも好すきな人ひとよりも苦く労ろうする事ことが多おおいんじゃないのかな?
自じ分ぶん自じ身しんを卑ひ下げして、自じ分ぶんで自じ分ぶんの品ひん位いや価か値ちを下さげるような残ざん念ねん行こう為いを否ひ定ていする事ことも強きょう制せい的てきに止やめさせる権けん利りもないけれど、お薦すすめは出で来きない事ことだよな……。
王おう国こく騎き士し団だんって所ところは、精せい神しん修しゅう養よう的てきな事こともしてるんだ……。