──*──*──*── ブックカフェ
茸がこんもり入った籠を背負って、ブックカフェへ帰り着いたオレは、裏口へ向かうと勝手口を開けて、中へ入った。
マオ
「 ただいま~~、セロ!
茸を採って来たよ!
今日は大量だったんだ。
見てよ、籠の中!! 」
セロフィート
「 お帰りなさい、マオ。
沢山採れましたね。
早速仕分けを始めましょう 」
マオ
「 うん。
じゃあ、調理台の上にシートを敷くよ。
その上に茸を出そうか 」
セロフィート
「 お願いします 」
セロが〈 テフ 〉を構こう成せいして出だしてくれたシートを調ちょう理り台だいの上うえに敷しいたら、籠カゴを持もち上あげてシートの上うえに茸キノコを出だした。
セロが食しょく用よう茸キノコと非ひ食しょく用よう茸キノコを仕し分わけしてくれる。
セロは非ひ食しょく用よう茸キノコを次つぎ々つぎと籠カゴの中なかへ入いれて行いく。
どうらやセロのお眼め鏡がねに適かなうような食しょく用よう茸きのこは少すくないみたいだ。
頑がん張ばって採とったのに殆ほとんどが食たべられない茸キノコだなんてショックだ。
籠カゴの中なかに入いれられた茸キノコを見みる度たびに落おち込こんじゃうなぁ……。
そうだ、折せっ角かくだしキノコドラゴンの事ことを話はなしてみよう。
マオ
「 セロ──、森もりの中なかで茸キノコを採とってたらさ、≪ ケイラーム街まち ≫の傭よう兵へい達たちに会あったんだ 」
セロフィート
「 傭よう兵へいと森もりの中なかで?
何なにかありました? 」
マオ
「 それがさぁ、茸キノコを背せ中なかに生はやした怪かい物ぶつモンスターと遭そう遇ぐうしたんだよ! 」
セロフィート
「 茸キノコを生はやした怪かい物ぶつモンスター…です? 」
マオ
「 そう!
傭よう兵へい達たちは “ キノコドラゴン ” って呼よんでた。
でさ、そのキノコドラゴンに襲おそわれそうになってた人ひと達たちを助たすけようと思おもって、キノコドラゴンを苦く労ろうの末すえに倒たおしたんだけど── 」
オレは平へい気きだったけど、キノコドラゴンの飛とばした茸キノコの胞ほう子しを吸すい込こんだらしい人ひと達たちがキノコ怪かい物ぶつモンスターに姿すがたを変かえていた事ことをセロに話はなした。
セロフィート
「 胞ほう子しを吸すい込こむとキノコ怪かい物ぶつモンスターになるとは興きょう味み深ぶかいです。
面おも白しろいですね、マオ 」
マオ
「 セロなら言いうと思おもったよ! 」
セロフィート
「 マオ、キノコドラゴンは持もち帰かえって来きてくれてません? 」
マオ
「 それは……御ご免めん…。
オレもセロの為ためにキノコドラゴンを峰みね打うちして持もち帰かえろうと思おもったんだよ。
でもさ、再さい生せい能のう力りょくが高たかくて中なか々なか倒たおせないからバラバラに刻きざんじゃったんだ…。
傭よう兵へい達たちがさ、『 キノコ怪かい物ぶつモンスターと一いっ緒しょにキノコドラゴンの残ざん骸がいを持もって帰かえりたい 』って言いうからさ……渡わたしちゃったんだ。
御ご免めんな? 」
セロフィート
「 そう言いう事ことなら仕し方かた無ないです。
マオ、キノコドラゴンを生いきている状じょう態たいで捕ほ獲かくしましょう。
地ち下か室しつで飼かいたいです 」
マオ
「 飼かうの?
ペットにでもするつもりかよ? 」
セロフィート
「 違ちがいます。
実じっ験けんに使つかうに決きまってます 」
マオ
「 実じっ験けん??
キノコドラゴンで何なんの実じっ験けんをするんだ? 」
セロフィート
「 マオが話はなしてくれたでしょう?
キノコドラゴンの胞ほう子しを吸すい込こんだ人にん間げんがキノコ怪かい物ぶつモンスターへ変へん貌ぼうしたと。
直じかに見みてみたいでしょう? 」
マオ
「 えっ……それって人にん間げんにキノコドラゴンの胞ほう子しを吸すわせるつもりなのか? 」
セロフィート
「 当とう然ぜんです。
直じかに胞ほう子しを吸すわせなければ人にん間げんがキノコ怪かい物ぶつモンスターへ変へん貌ぼうする過か程ていを観かん察さつ出で来きませんし 」
マオ
「 鬼き畜ちくだな、セロ…。
実じっ験けんするにも何ど処こから人にん間げんモルモットを調ちょう達たつするつもりなんだ? 」
セロフィート
「 人にん間げんモルモットなんて何ど処こにでも居います。
例たとえば──ブックカフェへ来らい店てんしたお客きゃくとか 」
マオ
「 セロぉ!!
それは幾いくらなんでもあ・ん・ま・り・じゃないか?
折せっ角かくブックカフェへ来きてくれた客きゃくを実じっモル験けんモ台だいットに使つかうなんて!
流石さすがに酷ひどいよ 」
セロフィート
「 マオ、お客きゃくを有ゆう効こう活かつ用ようして何なにが悪わるいです? 」
マオ
「 悪わるいだろうがぁ!!
客きゃくを実じっモル験けんモ台だいットにするのは駄ダ目メだ!
却きゃっ下かぁ!! 」
セロフィート
「 マオ…… 」
マオ
「 そんな顔かおしても駄ダ目メだからな!
実じっ験けんに使つかうなら別べつの人にん間げんを使つかえよ。
捕つかまえた人にん間げんモルモットは他ほかにもた・ん・ま・り・居いるだろ? 」
セロフィート
「 はいはい…。
お客きゃくは保ほ留りゅうにしときます 」
マオ
「 セロ…… 」
全ぜん然ぜん保ほ留りゅうにする気き、無なさそうだな……。
セロフィート
「 マオ、茸キノコの仕し分わけが済すみました。
非ひ食しょく用よう茸キノコはワタシが頂いただきます 」
マオ
「 それは構かまわないけど……非ひ食しょく用よう茸キノコなんて何なにに使つかうんだよ? 」
セロフィート
「 栽さい培ばいします 」
マオ
「 栽さい培ばい??
増ふやしてどうするんだよ? 」
セロフィート
「 『 いいこと 』に使つかいます 」
マオ
「 いいことぉ?? 」
セロフィート
「 はい♪ 」
マオ
「 『 いいこと 』って何なんだよ? 」
セロフィート
「 それは……………秘ひ密みつです♪ 」
そう言いったセロは非ひ食しょく用よう茸キノコの入はいった籠カゴをパッと消けした。
多た分ぶんだけど地ち下か室しつにある実じっ験けん室しつへ転てん送そうでもさせたんだろう。
マオ
「 その間まは何なんだよ……。
気きになっちゃうだろ! 」
セロフィート
「 マオ──、今こん夜やの夕ゆうディ食しょくナーは茸キノコ尽づくしですね 」
マオ
「 ………………そだな 」
セロにスルーされたぁ!!
“ 茸キノコ尽づくし ” って言いう程ほど、食しょく用よう茸キノコは無ないけどな……。