事後処理
今回の蒲生騒動の結果、秀行は家臣らに改めて忠誠を誓わせるべく血判状を提出させた。
さらに郷安の抜けた穴を埋めるべく、人事の再編や家臣の領地替えを精力的に行なっており、当分は忙しくなりそうとのことだ。
木村家預かりとなった蒲生郷安は、その政治手腕を買われて樺太送りとなった。
奉行や代官の不足している樺太で活躍させつつ、木村家家臣とするべく新たなキャリアを積ませるつもりであった。
また、今回活躍してくれた曽根昌世の知行を3万石とし、新たに台北奉行を任せることにした。
「まもなく、再び明侵攻が始まろう。その際、台北はその最前線となる。お主は台北を発展させつつ、かの地に城を築いて欲しい」
「お任せを……。信玄公直伝の築城をお見せしましょう……」
また、曽根昌世と共に木村家にやってきた真田信尹には、京における諜報活動を任せることにした。
これから起きる秀次事件に備えて、秀次家臣の取り込みのためにやるべきことが山のようにあった。
聞けば、真田信尹は本家である真田家に情報を流すスパイの役目も果たしていたという。
木村家で召し抱えるにあたって、情報を流すのを黙認しつつ、真田家へのパイプ役として京に置いておくことにした。
数日経過して、蒲生家に残留した名古屋山三郎から報告を聞きつつ、吉清はほっと一息ついた。
「では、家中は秀行殿を中心にうまくまとまっているのだな」
「はっ、これも木村様の支援のおかげにございます」
「秀行殿に伝えてくれ。また何かあれば、遠慮なく儂を頼ってくれとな」
「はっ」
名古屋山三郎の背中を見送り、一息つこうとすると浅香庄次郎がやってきた。
「殿! 吉報にございます!」
「どうした」
「領内にて銀山が見つかったとのこと!」
「なんと!」
領内から銀を産出できるのであれば、銀札の信用も上がるというものだ。
さっそく、鉱山を開発する人員を確保するべく高山国・ルソン近海で奴隷狩りを始めるのだった。
直江兼続からの報告に、上杉景勝が動揺した。
「木村領で銀山が見つかっただと!?」
佐渡を手中に収めて以降、上杉領では金銀の産出量が上昇し、上杉家の重要な財源となっていた。
それだけに、大陸から大量の銀を流入させる木村家は目障りな存在であり、日ノ本における銀の価値を低下させる厄介な存在であった。
「この上、銀山まで出てくるとは……」
「ご安心を。すべて、この兼続にお任せください」
一ヵ月後。木村領の銀山が見つかった地にて一揆が発生するのだった。




