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検地

 領内の中央集権化、並びに支配構造を一新させるにあたり、吉清にはどうしてもやらなくてはならないことがあった。


「よし、検地をするぞ」


「おお、いよいよですか!」


 清久が興奮した様子で立ち上がった。


 史実では、領民の支持を得られていない状態で厳しい検地を実施したことも、葛西大崎一揆の発生の原因とされている。


 また、肥後一国を任された佐々成政も、在地の国人を無視して検地をした結果、一揆を招くこととなった。


 それもあって、一揆の発生を恐れてなかなか検地に踏み切れずにいたのだ。


 しかし、今回の奥州再仕置軍の威容を国衆たちが実感しており、刀狩りも終えた。


 さらに、葛西大崎の乱の鎮圧、一迫(いちはさま)騒動をもって、木村家の石高が領地の3分の2にまで達した。


 家中での発言力、武力共に十分高まったとして、機は熟したと判断することにしたのだ。


 さっそく国衆たちを集め、彼らに布告をした。


「これより領内全土に検地を実施する。今、正しい石高を申告すれば、そのままの所領を安堵する。逆に、所領をごまかし、過少に申告をすれば、その分の所領を減らすものとする」


「ははっ!」


 国衆の申告を元に、検地が始まった。


 検地の中心を担うのは、豊臣政権下で奉行としての経験を積んだ吉清。その下で経験を積んだ清久。

 そして、既に直轄地での検地を実施した、小田原衆である。


「いいか。土地は正確に。重複したり、間違えぬよう測るのだぞ。……そして、隠してある田畑を見つけ次第、容赦なく検地を実施せよ」


「「「ははっ!」」」


 検地を始めて数日が経過すると、だいたいどれくらい表高と離れているのか、その実態が掴めてきた。


 今のペースで石高の数値が正され、隠し田畑が見つかると計算して、領内全土の検地が終わる頃にはだいたい3万石程度増える計算になる。


 仮に、すべての国衆が手を取り、吉清に反旗を翻したとして、石高ベースの戦力比は20万石対13万石。


 余裕で勝てるとは言わないが……厳しい戦いになっていたかもしれない。


 一人背筋を寒くする吉清に、小幡信貞が話があるとやってきた。


「知り合いに才ある者がおるのですが、今は野に埋もれております。殿さえよろしければ当家に仕官させたいと思っておりますが」


「わかった。会ってみよう」


 数日後。木村領に、一人の武将がやってきた。


 まずは吉清が頭を下げた。


「儂が木村吉清である」


「それがし、梶原景宗と申します」


 梶原景宗。北条の水軍を率いた将である。小田原に向かった際、吉清も声をかけようとしたが、北条氏直に従って高野山に行ったのだ。


 氏直の死後、仕える家を探していたところを、信貞のつてで当家に仕えようと思ったらしい。


「それがしは北条家で水軍の将をしておりました。もし、木村様に水軍を率いるつもりがございましたら、必ずやお力に……」


「よし、召し抱えよう」


 即決する吉清に面食らいつつ、梶原景宗が遠慮がちに尋ねた。


「……碌はいかほど頂けるのでしょう」


「2000石でどうだろうか」


「そんなに……」


 目を丸くする景宗に、紹介した当人である信貞の声が裏返った。


「と、殿!? それがしより碌が高いではありませぬか!?」


 当然である。地上で軍を率いるだけなら代わりはいくらでもいるが、水軍を率いれる者となると数が限られる。


 さらに、この2000石は、梶原景宗が丸々自由に使える金ではない。


 そこから直属の家臣を雇い、水軍を組織していくための金でもあるのだ。


「これからよろしく頼むぞ」


「はっ、ありがたき幸せ。これより、殿と呼ばせて頂きます」


 梶原景宗が頭を下げ、臣下の礼をとる。


 これより、梶原景宗の手によって石巻水軍が作られることになるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] こうして陸軍と海軍の対立は始まったのである。
[一言] 恨みは恐ろしいからね。 小幡信貞のフォローはちゃんとしないとね。
[一言] 信貞なんかドンマイ
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