表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/225

石巻 大坂

 吉清の命令で奥州に入ると、清久は石巻の港を見渡した。


 町では木村時代にはなかった豊臣の家紋をよく見かける。


 清久がううむと首を傾げた。


「父上から軍を興せと言われたが、石巻は当家の領地ではない、豊臣家の直轄地──太閤蔵入地だ。勝手に徴兵して軍を興してもよいものか……」


「そのような心配は、戦に勝ってからしてくだされ。戦に負けては、そのような心配をするどころではなくなりますゆえ」


「……それもそうだな」


 四釜隆秀の後押しで徴兵を始めると、1万もの軍を集めることに成功した。


 今は木村領ではなくなったとはいえ、木村家が10年近く統治していた土地である。


 太閤蔵入地となってからも木村家の者が代官を務めており、木村時代と支配構造が変わっていなかったことが幸いした。


 集めた軍を寺池城に移動させると、北から最上や伊達に睨みを効かせた。


 そうして伊達の動きを封じつつ、吉清の口添えで旧領に返り咲いた大崎義隆や、北奥州の大名たちにも参陣を呼びかけるのだった。






 一方、大坂を拠点に、宗明は畿内で兵を集めていた。


 北庄から連れてきた者たち。大老から命じられ、城の改築や寺社の普請を行なっていた者たち。


 元々、浪人や食い扶持に困った者たちが大部分を占めていたこともあり、宗明が参陣を命じたところ、3万人近くの兵が集まった。


「戦と聞いて逃亡した者も少なくないと聞いていたが、これほど集まるとは……」


「ひとえに、殿の人徳の賜物にごさいますな」


 真田信尹がうんうんと頷く。


 徳川からの嫌がらせで申しつけられた普請であったが、金を惜しまず民を雇い続けた甲斐があるというものである。


 大坂城に兵を集める宗明の元に、続々と反徳川を掲げる者たちが集まってきた。


「此度は徳川を潰す、千載一遇の好機だ。我ら奉行は、木村殿に協力を惜しまん」


「おお、石田殿!」


「現状、徳川とまともにやり合えるのは木村殿を置いて他におるまい」


「微力ながら、我らも力を貸すぞ」


「大谷殿に立花殿まで……!」


 木村方につくと言ってくれる大名が多いことに宗明が胸を熱くさせていると、長束正家が辺りを見渡した。


「そういえば、細川殿は来ておられぬのか?」


 細川忠興の領地は丹波にあり、大坂まで数日の距離にある。


 他の者ほどではないにせよ、いち早く参陣するものと思っていたのだが……。


「それが……細川殿は石田殿と共に戦うことを嫌がり、毛利の抑えをすると言って山陰に向かいました!」


「なに!?」


 あまりに身勝手な行動に、その場に居た誰もが呆れ返った。


 細川といえば、木村陣営に参加することをいち早く表明した大名である。


 その細川がこの場に来ないとは……。


 木村方に参陣する大名たちが動揺を見せる中、宗明は一人腹を押えていた。


(ああ、胃が痛い……)


 吉清から大坂という重要拠点を任され、宗明は内心胸を踊らせていた。


 大坂を任せるということは、吉清がそれだけ自分に期待してくれていること。そして、武功を稼ぐまたとない機会である。


 だが、大名たちをまとめるというのが、これほど大変なことだったとは、思いもしなかった。


 軍を集めた宗明は、早くも気が滅入り初めていた。


 これは大変なところを任されてしまったかもしれない、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 石田・長束の奉行としての活躍に期待。 あとは太閤から 「百万の軍勢を任せたい」 と言われたという大谷吉継の差配を見てみたいです。 ですが、どう考えても木村の指…
[一言] 兼続と如水の動きが気になってしゃーないwww
[良い点] 今度こそ合戦になりそうで良いですね! [一言] 伊達はさっぱり絡んでこなくなりましたがどうなってるんでしょうな、個人的には実際の石高が明かされたときの伊達の反応はすごく気になってました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ