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大船制限令 後編

 造船の命令が下るのと同じくして、吉清の命令で領内すべての土地で検地が行われた。


 三毛作を行っていた高山国やルソンでの石高は3倍に。それまでは無石と申告していたイモや雑穀に関しても、今回は申告の対象とした。


 新たに領有に成功した海南島やミンダナオ島とその周辺の島々でも検地を行い、収穫高を確定させていく。


 荒川政光がおずおずと尋ねた。


「樺太や、植民を進めた荒須賀(アラスカ)喋里屋(シベリア)については……」


「もちろん、そちらも計上するぞ」


 続々と領地から届けられる申告をまとめ、荒川政光に音頭を取らせまとめていく。


 吉清の元で検地の結果をまとめていく家臣たちを眺め、吉清は一人感慨にふけっていた。


(葛西大崎の旧領を賜った時は検地一つにビクビクしておったものじゃが、今では容易く命じられるまでになったか……)


 やがて、木村家の石高が確定すると、吉清は高直しの申請をしに大坂城に登城するのだった。






「木村が高直しをしたいじゃと……?」


「はっ」


 木村吉清から届けられた高直しの申請書を見て、家康は目を見開いた。


「なっ……700万石じゃと!?」


 目の前が真っ暗になりながら、家康はその場にふらついた。


 足元がおぼつかなくなる家康を、側から小姓が支える。


「あ、ありえん! どうしたら石高が10倍になる!」


 震える手でその内訳を見ていく。




 北庄 10万石


 高山国(台北、台中)330万石


 ルソン 205万石


 樺太 20万石


 海南島 20万石


 ミンダナオ島及び、周辺の島々 115万石




 家康の手から力が抜け、書類が滑り落ちていく。


「こっ……これほどの国力、国持大名どころではないぞ……」


 頭が真っ白になっていくのがわかる。


 太閤検地により明らかとなった日本全体の石高は、およそ2000万石である。


 木村吉清の石高は、木村領を含めた日本全体の石高の四分の一を占めているというのか……。


「高山国を含む南の島々では三毛作を行なっているため、石高を3倍にしていると聞きましたが、これほどとは……」


 小姓も驚いた様子で目を見張った。


 700万石。それは、全盛期の織田信長に匹敵する石高であった。






 木村家の表高が700万石であると発表されると、またたく間に諸大名から注目が集まった。


 これまで最大の大名であった徳川の、優に3倍はあろうかという桁外れな石高に、誰もが誇張や虚偽を疑った。


 しかし、木村領を行き来する商人や木村領に送り込んだ忍びからの情報により裏付けがとれると、木村家は名実ともに日本一の大大名となったたのだった。


(これだけ力を誇示したのだ。風向きは、さらに当家の方に流れようぞ)


 吉清が悦に浸っていると、小姓の浅香庄次郎が駆け寄ってきた。


「殿!」


「どうした、そんなに慌てて……」


「こちらを提出し忘れております!」


 庄次郎の持ってきた紙には、南蛮貿易での利益が記されていた。


 石高には貿易での利益も計上できるため用意していたのだが、そこには「南蛮貿易での運上金、及びその他商人から支払われた諸費用、300万石」と記されている。


「……まあ、いいか。南蛮貿易で莫大な利益を挙げていると知られては、船のように規制されかねないものな……」


 南蛮貿易での収支が書かれた紙を、吉清はそっと懐にしまうのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 次は「お詫び」として外地の安い米を大量に徳川領に提供。 米価暴落で経済死w 誉め殺しならぬコメ殺し………
[気になる点] 徳川の本拠地が内陸部に移動する可能性がありますね。 川越辺りでしょうか。
[一言] 高直しによる正攻法できたか。 確かに所領から豊臣政権では税負担を求められるわけでないので軍役の恐れが今のところない木村にとっては悪くない判断なのかもしれない。 子の策だと莫大な石高の対価と…
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