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淀殿の浮気調査

 秀吉から呼びつけられた吉清は、秀吉からの命令に戦慄した。


「…………淀殿が密通していないか調べて欲しい、ということにございますか?」


「うむ」


 秀吉の話によれば、先日淀殿のところに赴いた際、淀殿の対面に膳が置かれていたという。


「……………………殿下のために用意された膳だったのでは?」


「飯は冷たく、汁物は冷めておった。……つまり、儂の来る直前まで誰かがそこにおったことを意味しておるのよ」


 その場に居た吉清としては、秀吉に事の真相を語ることはできるのだが、正直に話した日には自分の首が飛びかねない。


 また、調査を頼まれた以上、何らかの成果を挙げなくては、吉清としても立つ瀬がなくなる。


 最悪の場合、吉清が調査係を罷免され、他の者が調査に当たり、淀殿の密通の相手として吉清の名前が浮上することだ。


 そうなれば、吉清の首どころか族滅は免れない。


 そう考えれば、吉清が調査係に任命されたことは、むしろ幸運に思えた。


 吉清が調査し、秀吉に報告する以上、事実の歪曲や改ざんはいくらでもできるというものだ。


 そうなってくると、問題はどう報告すれば秀吉が納得してくれるのか。その一点にかかっていた。






 吉清は紡のところの侍女を数名選抜すると、淀殿のところへ送り込んだ。


 数週間後。報告のために一度戻すと、衝撃的なことを聞かされた。


「淀殿の元に、何人も男が通いつめている!?」


 豊臣家臣や身の回りの世話をする小姓、豊臣恩顧の大名、豊臣家と懇意にしている商人の若旦那など、多くの男が頻繁に足を運んでいることがわかった。


「まずいことになったぞ……」


 当初の計画としては、適当に淀殿の元にやってきた者に濡れ衣を着せ、秀吉に報告しようと思っていたが、こうも男が多いのでは話が変わってくる。


 その場しのぎということであれば、適当に濡れ衣を着せてしまえばいいが、吉清が処罰をした後に再び密通の話が持ち上がれば、吉清の捜査が不十分であったとされ、調査が再開されてしまう。


 そうなれば、捜査線上に吉清の名が挙がってしまうかもしれない。


 考えた末、吉清は調査の結果を秀吉に報告した。


「で、どうであったか?」


 不安と期待の混ざった様子の秀吉に、吉清は声を固くした。


「淀殿の周りには、やはり男の影がございました」


「そうか……」


「されど、密通しているかまではわかりかねますゆえ、引き続き調査を任せて頂きたく……」


「わかった。頼りにしておるぞ」


「はっ」


 秀吉の元を後にすると、ひとまず吉清は息をついた。


 何も、調査を終える必要はないのだ。


 何かと理由をつけ、調査を継続してしまえばいい。


 吉清が探偵となり調査を継続する以上は、吉清が捜査線上に浮上する可能性は限りなく低くなる。


 また、大義名分さえあれば淀殿の近くをうろついても安全であり、吉清の身の安全もひとまずは保証されたと言える。


 問題は……


「今日は調査とやらはしなくて良いのですか?」


 廊下ですれ違った淀殿に、吉清が黙って頭を下げた。


 調査という名目が出来てしまい、昔以上に淀殿に近づきやすくなってしまったことだ。


(二度と先の不覚は取らぬぞ……!)


 そう吉清は固く誓うのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 淀殿「よしんば私が世界二位だったとしたら?」 秀吉秀次木村伊達「世界一位です」
[一言] 女狐ぇーー! こうなったら義光の金の棍棒で成敗ぢゃぁーー!
[良い点] 調査してるのあっさりバレてるの笑。その上で悠然と誘ってくるとかここまで来るとなんか強キャラ感出ますな。 [気になる点] これを機会に他の通い詰めてる人らの弱みを握って良いように使ってやるぜ…
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