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海の街  作者: トキン
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 ‘‘思わなければ思わないものだ。’’ ‘‘慣れれば考えないものだ。’’

 齢17にして私は少々ひねくれた思考を手に入れた。

  今日の空模様は晴れ。

 なぜこんな考え方をするようになったか、きっかけは忘れてしまった。ただ、漫然と生きる日々に嫌気が差したとかそんなとこだろう。

  雲一つないわけではないけど、気持ちのいい天気。

 何も考えない人生が嫌だった。確固とした己を持たず風景に溶けるような日常が嫌だった。

  眩しくはない空の青さが心地いい。

 問題に直面したときに、思考は有効な手段だ。百回のうち七回くらいはいい手立てを教えてくれる。残りの九十三回だか九十四回だかは現実から目をそらさせてくれる。

  今日の時間割は何だっただろうか。

 有り体に言えば凡人でいたくなかっただけの思春期の私は、簡単に思考の海におぼれた。

  忘れ物はないか。

 それっぽい言葉で彩られた、それっぽい理屈。自己満足にはいい塩梅の出来だった。

  夕方からは部活。

 ‘‘思わなければ思わないものだ。’’ ‘‘慣れれば考えないものだ。’’

 形骸化した習わし、特に考えず守るルール、声を合わせた抗議。なんとなくで行われることに疑問を持ったことが始まりだった、かもしれない。

  監督の機嫌、今日はどうだろう。

 自分の性格に合っていたのか。この考え方はかなりしっくりきた。

  なんだかめんどくさい。

 目につくもの、友達との会話、日常の香り。

  ああ、今日が早く終わらないかな。

 ふと考えだしたら不思議でたまらないこと、どう考えてもおかしいもの。散見されるそれらは、私を特別な誰かにするのにとてもいいアクセサリーだった。

  そういえば、そろそろ何か予定があった気がする。

 後から考えると、不思議でもなく道理に合ったことも多かった。でもそんなことは関係なかった。

  気のせいかな。

 ひとときの浸りができたらそれでいい。

  学校が見えてきた。

 そんな自分のことさえも、慣れれば考えないものだから。


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