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最後まで読んでほしい話です

初めまして、無無(むむ)と申します。

小説初投稿です。


拙い文かもしれませんが、よろしくお願い致します。



騒がしい音が遠くから聞こえる。と思った瞬間

「起きろ!!」

部屋のドアが開く音、高い声、剥がされる布団。

「相変わらずだらしないわね!!ほら早く起きなさいよ!!」

「う……わ、わかったよ…」

「ったく、幼馴染じゃなかったらこんなことしてないんだからね!」

時間的にはまだ余裕があると思っていたのだが…。しかし起こしに来てくれたのだからと体を起こし、欠伸をしながら体を伸ばして目を覚ます。

彼女は河野愛衣(こうのあい)。一応家は近所で、幼馴染である…のか?

下から母親の声が聞こえる。

飛翔(つばさ)〜!早くご飯食べちゃいなさいよ〜!愛衣ちゃんに迷惑かけちゃだめだからね〜!」

「はーい……」

母には聞こえないだろうが、とりあえず返事をする。ベッドの近くにある机の上に置いたメガネをかけると、視界がハッキリした。

「私は先に行ってるから早く来なさいよね」

「わかった…」

今日は彼女と一緒に登校するのかな、早く用意を終わらせようとぼんやり考えた。


「遅い!」

準備を終わらせて外に出ると、玄関のすぐ前に彼女が居た。

「ごめんね…ちょっと手間取って…」

「全く…!早くしなさいよね!」

彼女に強引に腕を引かれ、僕は学校へ向かった。



学校へ着いた時間はいつもより早かった。僕と彼女はクラスが違うので、教室の前で分かれたが、彼女は何故か不満げだった。

その時ちょうど担任が来て、日誌を渡された。「おはよう山吹くん、今日は早いのね」

「おはようございます。まあ、色々あって…」

「そうだ、今日日直だったわよね。はい、日誌よろしくね」

「はい」

教室に入りながら日誌を開いて確認すると、自分と一緒に日直を担当するのは山梨真宙(やまなしまひろ)…クラスの委員長だとわかった。

「まあ、日誌書いて黒板消すだけだし」

日誌を閉じて時計を見る。本当に今日は来るのが早かった。少し悩んでから、僕は図書室へ行くことに決めた。


もちろん図書室にも誰もいなそうだった。寂しいと言うより、ここは静かな方がいいので心地が良い。時間潰しも兼ねてゆっくりと本を眺めようと奥に行った。


そこには何故か人がいた。

その人は脚立を使って上の方の本を取ろうとしていたが、身長のせいで届かないようだった。

「あの〜…」

「ひゃっ!?えっ、あっ…!」

誰でも人が来ないと思っていたときに声を掛けられたら驚くだろう。それは彼女も例外ではなかった。彼女は酷く驚いてバランスを崩した。そのせいで乗っていた脚立から落ちそうになる。

「危ない!」

僕は慌てて彼女を支えようとした…が、どうやら上手くいかず、落下した彼女の下敷きになってしまった。

「いたた…」

「っ…あっ!ご、ごめんなさいっ……」

彼女は直ぐにどき、寝転がってしまった僕の近くに座って頭を下げる。

「ほんとにごめんなさい…あの、お怪我は…」

自分の体のどこも痛めていないことを確認し、上半身を起こして僕も座る。

「幸い僕は大丈夫。君こそ大丈夫だった?」

「はい、私は平気でした…ありがとうございます」

彼女に怪我もないことを確認し、僕は立ち上がって尋ねる。

「えっと、取りたかった本ってどれ?」



「本当にありがとうございました…本まで取ってくださって…何かお礼を…」

「いやいや、気にしなくていいよ。元はと言えば驚かせた僕が悪いんだし」

「そんな…そんな訳にはいきません…。あの、私瀬名千歳(せなちとせ)といいます。すみません、このお礼はいつかしますので…」

彼女は本を抱えて足早に去っていく。お礼なんかいいのに…彼女は育ちがいいんだろうか。

時計を見ると思ったより時間が経っていた。もう少しで朝のホームルームが始まる時間だ。僕は教室へ戻った。


今日は日直の仕事が多かった。先生の手伝いやら、配布物やら、色々することが多く忙しかった。いつもはめんどくさい黒板を消すことが一番楽かもしれない。

黒板を消していると、隣で一緒に仕事をしている委員長の姿が目に入った。どうやら黒板の上のほうに届かないらしい。

「ちょっと上いい?僕消すよ」

声をかけると、委員長は一歩後ろに下がる。僕は彼女が届かなかった上の方を消す。

「ありがとう、山吹くん」

「気にしないでいいよ」

消し終わると、また別のところを消し始める。

「…山吹くんって、今度の体育祭何やるか決めた?」

「え?…うーん、まだだけど」

「そうなんだ…」

話しかけられるなんて珍しいなと思って委員長の顔をチラリとみたら、どことなく赤いような気がした。……風邪でも引いてるのかな?



お昼、担任に呼び出されて書類の整理や色々仕事をした。ご飯をろくに食べられなかったので、午後の授業の休み時間に急いで食べた。

そして友人と話す暇もなく、あっという間に放課後になった。僕は思い出したように日誌を開いて書き始める。

今日の天気、日直、時間割、その他諸々…。

「ごめんね任せちゃって…書けそう?」

少しずつ人がいなくなっていく教室、そして前から委員長の声。

「あ、うん。まあなんとか」

僕の頭の中は早く帰りたいという気持ちでいっぱいだった。…けれど、委員長は何か言いたいように目線をキョロキョロとしだした。

「どうかしたの?」

「えっ!?……えっと、その…」

人がほとんど居なくなった教室、彼女は僕に言った。

「今度の体育祭で、一緒に運営委員にならない…?」

突然の提案に僕は迷った。そんな仕事を引き受けようとも、推薦?されるとも思わなかった。

「え、何で僕?体育祭ならもっと適任者がいると思うけど…」

「や、山吹くんは気が利くし、個人的に一番信頼出来る人だと思ってるの…だ、だから私と…」

彼女が何か言い終わる前に、廊下から高い声が聞こえた。

「飛翔!帰るわよ!!」

目線がそちらへ向く。

「あ、あなたは隣のクラスの河野さん?」

河野は委員長を睨んでるようだった。そして威圧感を持って教室に入ってきた。それから僕の方に来たかと思うと…彼女は僕の腕を掴んで自分に引き寄せた。

「飛翔!ほら行くわよ!」

「ちょっと!山吹さんは日直の仕事中です!」

「どうせ終わったでしょ?残りはアンタがやればいいじゃない!」

「まだ終わってません。勝手に決めないでください!それに腕を…!」

自分の周りで2人の女子が喧嘩まがいのことをするとは…こんな光景初めてだった。

驚きと同時に疲れたという感情が心を埋めつくした。頭に高い声が響いて騒がしいと思った瞬間、ピコン、と通知音。

『待ってる』

その一言で我に返った。

「ごめん僕もう帰るね!委員長後はお願い!」

掴まれた腕を振り払い、後ろも見ずに駆け出した。




早く会いたい。

海音(あまと)!」

昇降口まで走り、そこで待っていると約束した“彼”に駆け寄る。

「はぁっ…はっ…お、お待たせ…ごめん」

肩で息をすると、彼…海音はおかしい、というように、それでいて愛おしそうに笑った。

「そんな待ってねぇって」

「ほんと…?はぁっ…よかった…」

「必死すぎるだろ(笑)」

だって会いたかったから、とは勇気が出ずに言えなかった。実際、今日は忙しくてなかなか会話が出来なかったのだ。

「ま、帰るか」

「うん…ねぇ、今日はゆっくり帰ろうよ」

「いいけど…そういえば今日忙しそうだったもんな」

「ちょっと色んな人に絡まれてね…はぁ、それにこれからも忙しくなりそうな気がする」

海音の隣が一番安心する。何でも話せて、何でも聞いてくれる…。

「しばらく朝は一緒に行けない感じ?」

「そうかも…」

夕方の冷えた風が背中に当たる。今日の事を思い出し、憂鬱になった。海音とも暫く一緒には過ごせないのかな、とも寂しく思った。

「……じゃ、帰りは俺と帰ってくれるって約束してよ」

目の前の傾いた夕日が眩しく照らす。悪戯っぽく笑う彼の顔を。

「…………もー!すぐそういうこと言う!」

「ウケる(笑)飛翔の顔真っ赤じゃん」

「海音だって赤いじゃないか…」

「こっ、れは夕焼けのせいだし」

「じゃあ僕だって夕焼けのせいだから」

こうやって海音と笑い合う時間が一番楽しいと何度思ったことか。

「で?約束してくれんの?」

「するに決まってるよ。指切りでもする?」

海音は足を止めた。

「海音?」

「……ん」

そして、右手の小指を出した。

「しねーの?」

「……する」

僕も右手の小指を出した。

指切りげんまんと小さい頃よく歌った歌を小さな声で歌う。顔が赤いのは夕焼けのせいだと何度も自分に言い聞かせながら。

「来なかったらずっと待ってるからな」

「うん、早く会いに行くね」

僕達は歩き始めた。繋いだ小指から伝わる熱を感じながら。




最後まで見てくださってありがとうございます。


最後まで読んで「そっちか!(歓喜)」と思っていただけたら嬉しいです。

逆に「なんでだよ!(怒り)」ってなった方は、自分でキャラ作って主人公と親友を邪魔しない程度にヒロインと結ばれるハッピーエンドを作っていただけたら幸いです。


ありがとうございました。

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